長すぎる五輪日本代表レビュー(^^)の続き
2008年 09月 05日
今度は、野手陣について。
「打てなかった-」。
このことを今回のオリンピックの敗因と考える人は多いでしょう。
チーム打率は.234(全9試合)。また、オランダ戦(6得点)、中国戦(10得点)、またタイブレークとなったアメリカ戦での得点を0点(9回までは0点だったので)と換算したとすると、7試合の平均得点は18点。平均で3点取れていないことになります。
もちろん、各国が一線級のピッチャーをぶつけてくるなかで、そう簡単に点数がとれないのはわかります。
しかし、それにしても打てなかった…。しかも、「チャンスがたくさんあったのに生かせなかった」というよりは、「チャンス自体を作れなかった」戦いぶりに、点数をとるイメージを見いだすことができなかったというのが、正直な印象です。
では、他の野手を連れていけば、こんな状況にはならなかったのか?
再び、今回選ばれなかった選手たちを見ていきたいと思います(引用した成績は9/5現在、部門順位はリーグ内での日本人順位)。
◇ ◇ ◇
<捕手>
阿部 (.270 14本 50打点)
里崎 (.253 13本 36打点)
矢野 (.278 3本 26打点)
今回選ばれた捕手は上記の3人です。
近年は打てる捕手が多くなったせいか、10数年前とは違って、捕手にも「打」が要求される風潮がありますが、そうしたなかでは、上記の3人は「打てる」キャッチャーといえるでしょう。もちろん、阿部選手、里崎選手に関しては、本来ならばもっと数字が良い選手だと思いますが、では矢野選手も含めて例年ほどではないこの3選手に変わって選ばれてもおかしくない捕手がいたのか?
各チームのレギュラーキャッチャー(五輪代表選出時までの)を挙げると、下記のようになります。
谷繁、相川、石原、福川、鶴岡(高橋信)、山崎(的山)、藤井(嶋)、細川、日高
このラインアップを見ると、今回選ばれた3人に割って入る選手は、残念ながらいなかったと言っていいでしょう。ネームバリュー的には入ってもおかしくない谷繁選手も、今年はずっと故障がちで他の捕手にマスクを譲る機会がかなり多い状態(打率も.212、本塁打0)。五輪、WBCと国際大会メンバーの経験もある相川選手も肩の故障明けもあって盗塁阻止の部分で難があり。
また、前半戦は守りも安定、打撃でも例年になく本塁打を打っている細川選手も打率.233、114三振では、好投手相手の打撃はほとんど期待ができないといえます。さらには、このなかで唯一打率を残している日高選手(.280)も、低い盗塁阻止率(.224)と、昨年までのリードを見ている限り、3番手の捕手として矢野選手の替わりに選ぶべきだったと思えるほどの信頼感はありません。
ということで、今回、この3人を選んだことは間違いではなかったとは思うのですが、阿部、里崎両選手が、ここまで打てない(打率.125と.071)とは予想しませんでしたし、星野監督も考えていなかったでしょう。
<内野手>
新井 (.311 8本 58打点) 〔打率11位〕
西岡 (.307 10本 41打点 17盗塁) 〔打率6位・盗塁7位〕
荒木 (.251 3本 24打点 28盗塁) 〔盗塁3位〕
川﨑 (.322 1本 34打点 19盗塁) 〔打率2位・盗塁5位〕
中島 (.335 19本 71打点 21盗塁) 〔打率1位・盗塁4位〕
村田 (.317 33本 82打点) 〔打率8位・本塁打1位・打点2位〕
宮本 (.320 3本 32打点 24犠打) 〔打率7位〕
今回のメンバーを、ポジション別に分けると、
(ファースト) … 新井
(セカンド) … 西岡、荒木
(ショート) … 川﨑、中島
(サード) … 村田、(宮本、中島、森野)
という形になりました。
一方、各ポジション、今回選出されなかった打率・本塁打・盗塁数上位の選手を見ていくと、下記のようになります。
(ファースト)
栗原(.331〔4位〕・17本〔6位〕)、松中(.309〔4位〕・24本〔2位〕)
小笠原(.304・28本〔2位〕)、内川(.375〔1位〕・9本)
(セカンド)
片岡(.305〔7位〕・44盗塁〔1位〕)、田中賢(.298・10本・19盗塁〔5位〕)
本多(.295・28盗塁〔2位〕)、東出(.326〔5位〕・11盗塁)
(ショート)
井端(.284・8盗塁)、鳥谷(.284・10本)
(サード)
今江(.308〔5位〕・12本)、中村剛(.232・35本〔1位〕)
中村紀(.273・22本)
(※なお、上の成績は9月5日現在のものということで、選手によっては、五輪代表選出時期よりかなり数字がアップしている場合もあります)
まずはファースト。今回の五輪では、新井選手を不動の「四番・ファースト」として起用する形になりました。
前回のアジア予選からレギュラーを張ってきたことの流れもあっての起用になったわけですが、結果的には、大会を通して.257、7打点、1本塁打と、四番としては満足の行く成績は挙げられませんでした(もちろん腰の状態があったからともいえますが、ここではあえてそのことは考えないで話を進めたいと思います)。
じゃあ、「松中選手か小笠原選手を選んでもよかったのでは?」と言えるかというと、メンバーが選出された7月中旬のことを考えると、さすがにそれは結果論過ぎるかなと思います。
まず、小笠原選手は怪我の問題があったので、現実的に選ばれる可能性は少なかったでしょう。一方、松中選手の場合は今季好調とはいえ、逆にもし選ぶとなるとチームの幹になる可能性もあるがゆえに、チームの骨組み自体を大きく変えるということまで考えなければならず、そうした意味で選出が見送られた部分はあるのではないでしょうか(実際、すでに第一次候補の時点でも入っていませんでした)。ただし、この両選手が今後「日本代表に復帰する」という可能性はあると思います。
また、成績のうえでは代表に選ばれてもおかしくない内川、栗原の両選手(なお、両選手とも7月時点では上記よりももう少し数字は低かった)ですが、新井選手がほぼフル出場することが確実な状況、またファースト守備の不安を考えると、ファーストを2人選ぶよりは他のポジションを優先という判断は致し方ないかなと思います(内川選手は外野、栗原選手はサードも守れますが、そちらの守備も不安)。DHでの起用という方法もあり得ましたが、「村田選手もしくは阿部・里崎選手のマスクをかぶっていない方をDH起用」の可能性も考えると、DH枠も埋まっていたというのが現実です。
続いて二遊間。
こうして挙げてみると、現在のNPBは、セカンドにいい選手が多いということがわかります。片岡、田中賢、本多選手は、3人とも走・攻・守ハイレベルな力を持っており、今後代表入りする可能性が大きい選手たちだと思います。
ただ、本多選手に関しては序盤怪我で長期欠場していたということもあり、今回選ばれる可能性は少なかったといえるでしょう。一方、他の2人に関して、あえて選ぶのに迷う原因を挙げるとするならば、片岡選手…決して守備が下手な選手ではないが、シーズン序盤、結構守備でのミスが目立った、田中賢選手…巧打タイプに見えるが結構三振が多い(71三振)、左投手を苦手にしそう(これはあくまでイメージ)、といったところでしょうか。星野監督がどこまで見ていたかはわかりませんが、西岡選手がレギュラーで出ることがほぼ確定ということを考えると、ポテンシャルが高いとはいえ、この2人よりも、外野も守ることのできる荒木選手を優先したと考えられます。
また、同じく成績的には選ばれてもおかしくない東出選手ですが、そこまで広島の試合を見ていない立場からすると、まだ守備についての信頼感が足らない印象があり、そのあたりは、広島ファンの方のお墨付きがないと(^^)選べないでしょう。
一方のショートですが、こちらは意外と選手層が薄。今大会は、川﨑選手が怪我をしてしまったということもありますが、中島選手は成績的に文句がないとはいえ、続く選手が今季は怪我に泣かされている井端選手、そしてもう一つ煮え切らない感もある(^^)鳥谷選手ぐらいということで、セカンドと比べると、もう少し新しい選手が出てきてほしいところです。守備のことを考えると、今回の中島選手の選出はギャンブル的なところもあったと思うので、もう1人か2人、「この選手なら」と思える選手の出現が待たれます。
で、問題のサード。今大会、結果的に、一番その起用が疑問視されることになったのがサードを守った村田選手だったのではないでしょうか。
横浜ファンとしては、その責任を一部ながら感じずにはいられない(^^)ところですが、本塁打1位、打点も2位、そして打率も3割超という成績(しかも右に大きい当たりが打てる)は、逆にもし選ばれなかったとしたならば「何で選ばないんだ!」と叫んでしまいそうな成績です。
しかし、オリンピックでは見事なまでに打てませんでした…。それが、直前に引いた風邪の影響なのか、それとも考え込んでしまったがゆえの不振だったのか、それとももともとそれほどの実力がなかったのかは、村田選手のみが知るところですし、また本人が答えを見つけなければいけないと思いますが、今回の汚名をそそぐには、ただ一つ。次に出場する国際大会で打つことしかないでしょう。
今回の結果をふまえると、「WBCにも出た今江選手を選んでもよかったのでは」という意見もあるかもしれません。ただ、正直7月の時点では、まだ今江選手は代表に選ばれるに足る成績は残しておらず(その後、調子を上げた感がありますが)、落選は仕方なかったと思います。また、現在、外国人選手をおさえて本塁打トップに君臨している中村剛也選手も、打率.232、138三振 + 守備面を考えると、代表で起用するのは、まだためらわれるところ。ベテランかつ五輪経験者という意味では選出してもよかった中村紀選手も、怪我、起用の仕方のことを考えると、選に漏れたのは仕方がなかったと思います(ちなみに、松中選手と同じく第一次候補にも名前は挙がらず)。
なお、このサードは、今後の国際大会でも懸案のポジションになるかもしれません。
村田選手が打てば何の問題もありません(^^)が、もし前回のWBCでレギュラーを務めた岩村選手が来年のWBCに参加することになったとしても、現在のポジションはセカンド。レギュラーシーズンで守ったことのないポジションを守ることのリスクを考えると、村田・今江選手のレベルアップ、それがなされなければ好選手が多いセカンドからのコンバートという可能性もあると思います。
とここまで、書いて来ましたが、外野手まで書くには、時間が遅く(^^)。
続きは、また明日以降書きます。
豊富な情報量と冷静な分析で、とても読みごたえのあるブログですね。
野球はルールが複雑で用具にお金がかかることから、五輪で競技人口を増やそうとしてもなかなかうまく行きそうにありませんね。
星野監督が稲葉に、「行きたいのか行きたくないのか」と決断を迫ったあたりで、”優勝は当たり前と思っているのかな?”と訝ったのですが、いい選手さえ連れて行けば金メダルは自動的に転がり込んでくるはず、というような油断があったのかもしれません。それにしても星野さんは、失脚したボスザルのように、寄って集ってボコボコにされていますね。
コメントありがとうございます。
たしかに、野球はしっかりやろうとすると、場所・道具さらには指導者など、必要になる要素が多いかもしれません。
あと、野球の五輪復帰は、ヨーロッパでいかに広がるかが鍵かもしれませんね(北京五輪最終予選ではイギリスの辞退なんてこともあったみたいですし)。
今回のオリンピックは、ザックリ言ってしまえば、「選手はよくやった。星野監督もこれまでの五輪と比べてかなり用意周到に準備をした。でも力が足りなかった」ということなのかなと思っています。
どんな団体競技でも同じかもしれませんが、個々の選手のレベルアップ、そして「チーム」としての力の構築方法を、それぞれの立場の人が真剣に考えなければいけないでしょうね。



























