2000本打ったから泣いたわけじゃない。
2007年 09月 06日
実はその日はたまたま仕事から帰ってテレビをつけたところ、まさに「広島大逆転」の場面で、幸運にもリアルタイムでそのシーンを見ることができました。
広島ファンのみならず、その佇まいから、他チームを応援している人の中でもファンの多い前田選手。
そのプロ野球人生が語られるときに、必ず枕詞のように使われるのが「ケガを乗り越え」という表現です。
確かに、選手としてこれからというとき(95年、プロ6年目のシーズン)に、右アキレス腱を切ってグラウンドに倒れ込んだ姿は衝撃的でした。
その後、96、97年は3割をマークするものの出場試合は100試合ちょっと。98年には、鈴木尚選手と首位打者を争い.335の打率をマークするものの、2000年には、今度は左アキレス腱を手術。その後、05年に146試合(全試合出場)、昨年も134試合と、プロ入り15年を経てようやくフルシーズン出られるようになったというそのプロ野球人生をたどると、まさに「ケガを乗り越え」という表現があてはまるのかもしれません。
その前田選手、試合後のセレモニーでのインタビューでは、珍しく涙を見せました。ただし、ニュースでダイジェストを見た方はわからなかったかもしれませんが、その涙は2000本を打てたことへの涙ではなく、「自分が怪我で出られなかったことで、ずっとチームに迷惑をかけてきた」ことへの申し訳なさと悔しさによる涙のように感じました。
思えば、まだ前田選手がアキレス腱を切る前の頃のプロ野球界。
当時のセ・リーグ外野手陣を思い出してみると、前田選手、そして当時彗星のように出てきた新庄選手が、まるで漫画のようなスーパープレーをバシバシ見せてくれていた記憶があります。「打った瞬間、絶対追いつかないだろうと思った打球を、ダイビングして地上スレスレでキャッチ」なんてプレーも幾度と無く見させてもらいました。
前田選手がアキレス腱断裂という大けがを負ったときに、まず思ったのは、「あのダイビングプレーがもう見られなくなるのか……」ということでした。
その後、打撃ではコンスタントな成績を残してきた前田選手ですが、守備・走塁に関しては、怪我をする前のプレーと同じ水準のプレーをするということはできなくなってしまったといっていいと思います。「それを補って余りある打撃」と言う人もいると思いますが、当の前田選手自身は、「走・攻・守」すべてに高い水準でのプレーをできないということに、苦しんできた13年だったのではないでしょうか(あくまで推測ですが)。
また、もちろん全ての責任が前田選手のせいというわけではありませんが、98年から9年連続Bクラス、1991年(前田選手2年目・同シーズンは129試合出場、打率.271)以来優勝から遠ざかっているというチーム状況に対する責任を大きく感じ続けてきたこの13年だったのではとも思います。
今後、前田選手が現役を続けていくなかで、広島が再び優勝争いに絡むようなチームになることができるか? 現状の戦いぶりを見ていると、正直厳しい感じがします(資金難だけが低迷の原因ではないと思うので)が、来季以降、広島がシーズン終盤、優勝(もしくはプレーオフ出場)を争うような戦いをして、そこで前田選手が打った時、2000本安打達成のときにはほとんど見せなかった「ヒットを打ったことへの喜び」を垣間見ることができるかもしれません。
さて、最後に、さっきふと名鑑を見て初めて知ったことを1つ。
天才天才と言われる前田選手ですが、これまで首位打者を獲得したことはありません。また、通算打率も .304(9月4日現在)と凄い数字ではありますが、歴代では16位。現役選手のなかでは、小笠原選手(.319)、松井稼選手(.309、NPBでの成績)、松中選手(.307)といった選手の数字の方が上回っています。
しかし、自分が持っていた名鑑に載っていた記録がこれ(↓)。
「3年連続6度目の三振セ最少(06)」
基本的にセンターから右への打球が多く(ライトへの火の出るような当たりが前田選手の代名詞だと思います)、どちらかというと引っ張り中心のようにも感じる前田選手の打撃。
そんななかでの上記の記録は、前田選手のバットマンとしての才能の一端を感じさせてくれるデータではないかと思いました。
(※04~06年の三振数は、38、43、42。2006年は全試合に出場するなど、決して打席数が少ないことでのデータではありません)
前田がスゴイのは、内角打つ際の足の使い方だと思います。内角の速球、変化球という緩急の差を足のさばきで吸収し、そこにあのバットコントロールです。今度、注目して見て下さい。
あと21日、よろしく。
なるほど、足の使い方ですね。今度注目して見てみます。
ちなみに、2000本安打達成翌日の新聞に、「ほどんど勘だけでやってきた。悩みは尽きない」(←記者が、前田選手の発言として書いたものなので、前田選手の直の発言ではないですが)という記事が載っていたのですが、もしそれが本当だとすると、やはり前田選手は「天才」なんでしょうね(^^)。