バンタム級に続いての、スーパーバンタム級4団体制覇という偉業達成に、ボクシング界のみならず、多くの人々の注目が集まった、2023年12月26日の井上尚弥vsマーロン・タパレス戦。
その興行のセミファイナルとなったのは、堤聖也(王者)vs穴口一輝(挑戦者)の、日本バンタム級タイトルマッチだった。
堤が9勝(7KO)2分け、穴口が6勝(2KO)という、無敗同士の一戦。
近年の配信でのビッグイベントは、セミファイナルも世界戦、あるいは世界前哨戦の意味合いを持つ試合がほとんどである。
そうしたなか、セミファイナルが日本タイトルマッチであることに、少し物足りなさを感じたファンもいたかもしれない。
しかし、この試合は、近年、というより、この数十年を振り返っても、随一といっていいかもしれないほどのドラマティックな一戦となった。
序盤を支配したのは、穴口。
リズムのいいボクシングで、少しずつ主導権を握っていく。
しかし、4R、堤がダウンを奪い返し、ややポイントを戻す。
それでも、5回を終わっての公開採点は、一人が同点、穴口の2ポイントリードが2人と、やや穴口優勢。
その後も、左目上の傷の開き具合が気になることもあり更にプレスを強める堤と、序盤よりは多少精度が落ちるも技術の高さをうかがわせる穴口の、見る者を惹きつける攻防が続く。
6Rは、穴口の優勢。
しかし7Rは、堤が、この試合2度目のダウンを奪う。
8Rは穴口が優勢。
が、9R、堤が、3度目のダウンを奪う。
そして、10R、両者が最後の力を振り絞ったラスト。
残り10秒で、堤が4度目のダウンを奪う。
それでも穴口が4たび立ち上がり、試合終了。
判定は、堤が、94-92、94-92、95-91で勝利。
しかし、堤がダウンを奪ったラウンド以外は、ほぼ穴口にポイント。
堤がダウンを奪ったラウンドでも穴口が優勢だったシーンもあり、最終回、穴口がポイントを獲っていれば穴口の勝利。
まさに、堤の「大逆転勝利」といえる内容で、見た者すべてに強烈な印象を残した一戦となった。
よく試合後に、解説者が「こんな激闘はなかなか見られない」ということがあるが、掛け値なしに「こんな凄い試合は見たことが無い」と言える一戦だった。
堤の勝利に賭ける執念、そして、実際に勝利を手にした、その精神力は凄まじいものがあったが、敗れた穴口も、バランスの取れたボクシングスタイル、そして実力者である堤相手に、ある意味互角以上と言ってもいい試合内容を見せたその姿に、今後の大きな可能性を感じた。
興行後、X(Twitter)でも、こう書いた。
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井上尚弥vsタパレス。
結果は井上の完勝だったが、タパレスが時折振るう右フックに怖さを感じた人も少なくなかったと思う。
しかし、今日は何と言っても、セミの堤聖也vs穴口一輝。
ボクシングの面白さを凝縮した試合。
両者のダメージは心配だが、その激闘に心から拍手を。
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ただ、Xにも書いたように、試合後の両者のダメージは気になった。
特に、コーナーに戻った際、足が痙攣し、座れない状態の穴口は非常に心配だった。
専門知識が無いことを承知で書くが、「早く、担架に乗せるなどして退場し、病院へ向かった方がいいのでは」と思った。
(ただし、試合直後の映像には、堤と健闘を称え合い、笑みを浮かべる穴口選手の姿もある)
その後、穴口選手が意識を失い、病院にて開頭手術が行われたというニュースが報じられた。
ボクシングファンの誰もが、その回復を願っていたと思うが、残念ながら、2024年2月2日に、その逝去が報じられた。
こうしたリングでの痛ましい事故が起こると、試合のストップのタイミングがクローズアップされる。
しかし、試合を目にした、ほぼ全員のボクシング関係者、そしてボクシングファンは「止めるタイミングは無かった」と感じたと思う。
それこそ止めるなら、傷口が開いたまま戦い続けていた堤の方がストップの対象となる可能性が高かったという見方もあるだろう。
それでも、今回の事態が起きたという現実に、ボクシング関係者は、向き合わなければいけないと思う。
これまでも、リング禍が起きるたびに投げかけられてきた「では、どうするか……」。
甚大なダメージが見られると思われる選手の試合直後の処置、病院への搬送体制、傍目には深刻なダメージには見えなくとも危険な兆候がある可能性の試合中の見極め、試合前の選手のコンディション管理……など。
ボクシングという競技が、「危険」に向かっていくスポーツであることは間違いなく、その意味で、上記のようなことの強化は、その目的地を考えると極めて矛盾しているのかもしれないが、それでも、こうした事態が起きてしまった事実をもとにして、今後のボクサーたちの命を守る取り組みは、してもし過ぎることはないだろう。
当然、今回のようなことは、無念を持って余りある穴口選手のジムの関係者だけでなく、すべてのボクシングジム、そしてすべてのボクサーに起き得ることだからこそ、尚更、皆で、ほんの少しでも痛ましい事態を防ぐ可能性を高めることが求められる。
ボクシングは、究極的にそれぞれの選手がその存在証明を懸けた競技だと思う。
人間同士が拳で、お互いを殴りに行く。その、ある意味何の装飾もない部分が、見る者を強く惹きつける部分でもある。
しかし、それは、極めて悲しい事態を引き起こす可能性もある、という現実もある。
その遺志を継ぐという部分とは別の意味合いで、今回のことを、ボクシング関係者は、今後のボクシング界に残していく責務があると思う。
最後に、改めて言いたい。
堤聖也 vs 穴口一輝。
素晴らしい、本当に素晴らしい一戦だった。
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