人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「日本シリーズ」の面白さを堪能した2021日本シリーズ -ヤクルトvsオリックス-

6試合中5試合が1点差。残りのもう1試合も、わずか2点差。
全試合全イニング通じて、3点以上差が付いたイニングが1イニングのみ(しかも、すぐに同点3ランが飛び出す)。
日本シリーズ史上でも稀に見る接戦に次ぐ接戦を繰り広げた、2021年の日本シリーズが終わった。

昨年、一昨年のみならず、終わってみればソフトバンクの強さだけが際立つシリーズが続いてきたなか、「競り合い」という意味では、2013年(楽天vs巨人)以来、久々に勝負の行方が最後までわからないシリーズとなった。
時間が許すならば、2017年の、ソフトバンク vs DeNAの時のように、全試合レビューをしたいところだが(^^)、今回は、第1戦から第6戦それぞれの試合で印象に残ったことを1つ、その後に、シリーズ全体を通して感じたことを書いていきたい。


第1戦 中村の先制タイムリー

山本、奥川の投げ合いで、5回まで0-0で進んだこのゲーム。シリーズ最初の得点を叩き出したのは、中村悠平だった。1死一・二塁からの2球目、内角低めのストレートを見事にセンターの左前へ運ぶ。
この日の山本はフォークが抜けることが多く、決して絶好調とまではいかなかったが、それでもその力を見せつけ5回まで無失点。その状況で出た中村の先制のタイムリーは、「山本からでも点が取れる」ことを示したという意味で、ヤクルトナインに勇気を与えたのではないか。
技術的にも、ただ来た球を引っ張ったわけではなく、内角低めのボールに対し、きちんとボールとの距離をとってスイングに入りセンター前に持っていくという、技術点の高い一打。
今シーズンの打率.279という数字が決してフロックではなく、ヒットを打つ技術を身につけたうえでの数字であったことの証も見せた。


第2戦 宮城 最後の最後に喫した一打

1ヶ月ぶりの登板ということでその状態を不安視する声もあった宮城だったが、全くの杞憂だった。
6回1アウトまで、パーフェクト。
内外角に投げ分けられるストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーションは、シーズンの好調時と同じく、ほぼパーフェクトの投球だった。
ただ、ヤクルトの先発、高橋奎二も負けず劣らずのピッチングを見せ、7回まで両チーム無得点。
迎えた8回表、1アウトから、この日初めてのフォアボール。イニングも8回に入り、これまで見られなかった引っ掛けるボールも出だしたなか、2アウトから、塩見にレフト前ヒットを許し、2死一・二塁。
迎えた青木に投じた112球目。内角へのストレートがやや真ん中に入り、センター前に落とされた。7回2/3イニング1失点は、数字だけを見れば申し分の無い投球だが、結果的には、この日の試合は1点も許してはいけない試合だった。
宮城のポテンシャルを考えれば、今回の日本シリーズでの投球を「よくやった」と終わらせるのではなく、さらなる高みを目指してほしいピッチャーであることは間違いない。
2度目の登板をすることなくシリーズを終えた宮城は、第6戦を終えて、何を思っただろうか。


第3戦 石山の8回起用

第2戦は高橋が完封したことでブルペン陣を起用せずに済んだヤクルトだったが、第1戦でマクガフが1アウトもとれず逆転を喫し、清水も1イニングで30球超を費やしたことを考えると、ブルペン陣については不安を抱えたままの第3戦だった。
7回表、スアレス、田口を登板させるも、勝ち越しを許したヤクルト。その後、2死から登板した石山が、代打ジョーンズを三振に取り、ビハインドを1点にとどめる。
その裏、サンタナの2ランで逆転。果たして、8回・9回を、どういう継投で来るかと思ったところで、高津監督の決断は、石山の8回続投だった。
その石山は、安達、紅林、そして途中出場のT-岡田を三者凡退に切って取る。
9回は、マクガフがノーアウトから走者を出すも無失点に抑え、2勝1敗と1つリードするが、この日のポイントは石山の8回起用だった。
日本シリーズはペナントと違い、延長12回までとなったことも、続投の要因だったかもしれないが、石山の続投は、一つの「決断」だったと思う。
今シリーズの起用を見ていると、清水、マクガフに次ぐブルペン陣の位置づけとして、チーム2位のホールドを記録した今野ではなく、石山を選択していた高津監督。
その後の試合では失点を喫した試合もあった石山だが、「日本シリーズでの臨機応変な投手起用」が垣間見えた投手起用でもあった。


第4戦 石川の好投

第3戦まで先発投手の好投が光る試合が続いたが、ストレートの平均球速が135kmに満たない石川の投球が果たしてオリックス打線に通用するのか、不安な点もあった。
しかし実際に試合に入ると、ベース上の奥行きと、ボールが来ないことでタイミングをずらす石川のピッチングが冴えを見せる。5回までチャンスらしいチャンスを作らせず。安達をシンカーで見逃しの三球三振に取った投球などは、その投球の真骨頂とも言えた。
サンタナのファンブルで1失点を喫したものの、6回1失点(自責点はゼロ)。
思えば今季初勝利を挙げたのは6月に入ってから。好投するも勝ち星がなかなか付かず、精神的にきついところもあったと思われる2021シーズンだったが、投球内容的には「復活」を果たした感もあった石川。
その2021年最後の投球は、ヤクルトにとって極めて大きい1勝を手繰り寄せた。


第5戦 中嶋監督のスタメン起用

6番を打つ安達の不調もあり、下位打線での得点の可能性が全く感じられなかった第4戦までのオリックス。
中嶋監督が5戦目にして動く。紅林を6番に上げ、セカンドには安達に代えて太田を起用。また、モヤかT-岡田という選択となるファーストには、2戦連続で岡田をスタメンに起用した。
この決断が得点を生み出す。紅林はチャンスメイクで2得点に絡み、太田は7回に石山から勝ち越し打。T-岡田も同点打を放つなど、第4戦まで代打をのぞき打点ゼロだった5番以降の打線で3打点を挙げた(代打の2打点を含めれば5打点)。
なお、初戦・2戦目、スタメンに名を連ねたもののノーヒットに終わったラベロは、第3戦以降、ベンチ外。中嶋監督のオーダーへの苦心がうかがえたが、5番以降の打線の確立は、来季以降のオリックスの課題とも言えるだろう。


第6戦 勝負を分けた1プレー

12回表も2アウト。ヤクルトの日本一は第7戦以降に持ち越しかという空気も漂ったなか、2アウトから登板した吉田凌から、塩見がヒットで出塁。
そして、代打川端に対する2ボール1ストライクからの5球目。ワンバウンドのスライダーを伏見がはじく。2アウトながらランナー二塁。そして7球目、抜けたスライダーをレフト前に落とした川端の技術で、ヤクルトが土壇場で勝ち越し点を奪った。
このシリーズ、ヤクルトの中村、オリックスの若月・伏見の両チームのキャッチャー陣は、ことごとくワンバウンドを止めていた。そのことは、今シリーズを締まったものにした一因だったと思う。
しかし、最後の最後に、日本一の行方を大きく左右するバッテリーエラーが出た。
2死ランナー無しという場面から日本一を手繰り寄せる1点、そして日本一を逃した1点。
今シリーズを象徴する「1点」、そしてそれを生み出してしまった1プレーだった。


と、ここまで各戦ごとのポイントを見てきたが、この後は、シリーズ全体を通してのポイントを書いていきたい。


1 際立った先発投手の出来

今シリーズで最も特徴的だったのは、各先発投手の好投だろう。
のべ12人の投手が投げて、自責点3以上の投手はゼロ。
先発投手の防御率は、ヤクルトが1.17(38.1回で自責点5)。オリックスが1.67(37.2回で自責点7)。
試合の流れを大きく左右する初回失点もゼロ。
ここまで両チームの先発投手が好投したシリーズは記憶に無い。


2 見がいのあったキャッチャーのリード

先発投手が軒並み好投した今シリーズだったが、それを引き出したのは、両チームのキャッチャー陣だった。
投手陣の制球の良さもあったが、内角を効果的に使う配球、チェンジアップやカーブなど「緩」の使い方など、リードを見ていて楽しいシリーズでもあった。
中村悠平がMVPに選ばれたのは、打撃での活躍だけではなく、そのリードを評価されてのものだろう。故障が完全に癒えていなかったとはいえ、シーズン中あれだけ三振の少なかった吉田正尚(455打席で26三振)から、計6三振(28打席)を奪った。
中村がMVPインタビューの最後で見せた感極まる姿は、日本シリーズという舞台でのプレッシャーの大きさも感じさせた。
『プロ野球ニュース』で、解説の達川氏が、中村について「これまでは『ここに投げなきゃダメだ』という構えをしていたが、今は『ここに投げれば大丈夫だ』という感じで構えている」と評していた。投手が投げ切れない内角球を要求し続け痛打を浴びていた数年前から刻んだ成長が、そのまま、ヤクルトの躍進へとつながった。


3 ブルペン陣の不安と継投の難しさ

先発陣と比べて、両チームとも、万全とは言えなかったブルペン陣。
防御率は、ヤクルトが4.08(17.2回で自責点8)、オリックスが4.67(17.1回で自責点9)。
ペナントでも、優勝チームにしては、オリックスはセットアッパー、ヤクルトはストッパーに不安があった。
そうしたなか、両チームが優勝できたのは、高津・中嶋監督の、投手の「マネジメント」と「我慢」。
ただし、日本シリーズという短期決戦では、「我慢」が勝負を決めてしまう失点にもつながる。
そうしたなか、高津監督は、第3戦、1イニング内でスアレス、田口の両投手を使う継投に出るも失点。一方、中嶋監督は、第3戦でバルガス、第5戦でヒギンスを引っ張って大量失点と、両チームとも、継投の難しさを感じさせる場面があった。
第6戦も、12回表、富山が2アウトを取り、塩見を迎えたところで吉田凌に交代し、勝ち越しを許す結果に。実は富山のシーズン中の対左右別成績は、対右打者の成績の方がよかった(対右….175、対左….261)。ただし、被本塁打は、対右が2本で、対左はゼロ。そして、後を継いだ吉田凌は、対右が.108、対左が.158。短期決戦での継投の難しさを感じさせる数字でもある。


4 両チームのストロングポイント

今シリーズ、ヤクルトのチームとしてのストロングポイントを感じたのは、「2番」「6番」だった。
「バントはしないが、繋ぐことができ、かつ、ランナーも返せる」2番・青木。
「バントもでき、かつ、ヒットで後ろにつなぐこともできる」6番・中村。
この2人がいることで、2番で打線の流れを止めることがなく、かつ7番に長打を打てる打者を置けるという利点が、今季のヤクルトの強さを支えたことを改めて感じた(なお、6月までの「2番・中村」も、ある程度機能していたように思う)。
一方、オリックスのストロングポイントと言えば、何と言っても山本由伸。今シリーズで初めてじっくりそのピッチングを見たファンもいるかもしれないが、その投球は強烈な印象を残したのではないか。
そして野手で光ったのが、全試合安打を放った宗もそうだが、それに負けないインパクトを与えた2年目の紅林(シリーズ時点で、まだ19歳)。
解説の新井貴浩氏が中継で「夢の塊」と評していたが、通常のショートの定位置からはるか後ろからの送球は圧巻。打つ方では、持ち前の長打力をあまり見せることはできなかったが、フルスイングをしつつの打率.318は夢の塊の一端を感じさせた。
1年目の終盤もわずかな試合出場ながらインパクトを残したが、2年目にして、ここまでの成長曲線を描くことは予想していなかった。同じ2020年ドラフト組である宮城との1位・2位コンビは、オリックスのみならず、今後の野球界を牽引していく可能性も十分にある。


5 細かい選手の入れ替え

地味なポイントであるが、「日本シリーズだなぁ」と感じさせたのは、当日26人のベンチ入りメンバーの選定だった。
特にオリックスは、毎試合、ベンチ入りの投手を変えており、シーズン中はセットアッパー格のヒギンスも、打たれた試合の後の第2戦、第6戦はベンチ外。第5戦で、ヒギンスがピンチを迎えた場面、ここで登板させてみてはとも思った比嘉は、3連投を回避するためか、この日はベンチ外だった。
なお、第4戦からは、故障明けの山岡がベンチ入り。第5戦で6月22日以来の登板を果たした。そのほか、シリーズでの登板はなかったが、山田、海田など、試合によって、左投手のベンチ入りも細かく変えていた。
一方のヤクルトは、あまりベンチの選手の入れ替えはなかったが、代打出場した2試合で内容のあまりよくなかった内川は、その次の第4戦、第6戦ではベンチ外。シリーズのシビアさを感じさせた。


6 来季に向けて

今シーズン、2年連続最下位からの優勝を果たした、ヤクルト、オリックスの両チーム。
優勝したこともあり、「バランスのとれたいいチーム」のようにも見えるが、陣容を見てみると、来季以降、不安を感じる部分もある。

ヤクルトの課題は、若手野手の台頭。
青木が来季で40歳。山田も、来季で30歳と年齢的には若いが、長年の勤続疲労は気になるところ(盗塁数はここ3年で35→12→4と激減)。もう一つレギュラーが決まりきらないショートも、今後の課題か。なお、キャッチャーではあるが、今季ルーキーながらファームで8本塁打(打率.231)を記録した内山壮真には、大きな可能性を感じている。
投手陣に関しては、今季、規定投球回に達した投手がゼロという先発陣について、高津監督、さらには投手コーチが、どういった来季以降のビジョンを持っているかが気になるところである。

一方、オリックスの課題は、なんといってもブルペン陣。
4年ぶりとなるNPB復帰でもまだまだ第一線でやっていけることを見せた平野だが、来季で38歳。奪三振率も、20代から30歳前後の頃と比べると大きく下がっている。
セットアッパーを務めたヒギンスは退団報道(現時点では真偽のほどは不明)が出ていたが、今シーズン必ずしも毎試合安定していたとは言えなかったことを考えると、7~9回を投げる投手の再整備は必須(そうした意味では、2021年のドラフト1位・椋木の起用法は、来季の注目ポイント)。
ロメロを除くと、いま一つ、チームを引っ張るような外国人野手を獲得できていないところも、今後の課題か。
紅林、宗、宮城あたりには、大きな将来の可能性を感じるが、今季大ブレイクを果たした杉本は、来季、その真価が問われるシーズンにもなる。


以上、試合ごと、シーズン全体でのポイントを書いてきたが、久々に「日本シリーズの面白さ」を堪能させてくれた今年のシリーズ。
第6戦翌日の日曜日は、「そうかぁ、今日は日本シリーズはないんだあ」と寂しい気持ちにもなったが、改めて、今季のプロ野球シーズンの最後を締めくくるにふさわしい戦いを見せてくれた、ヤクルト、オリックス両チームに感謝したい。

by momiageyokohama | 2021-12-01 23:34 | 野球(全般) | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30