あのドネア戦から1年。
2020年10月31日。井上尚弥が、ラスベガスのリングに、メインイベンターとしてリングに上がった。
1年前のドネア戦の
レビューでは、「キャリアのハイライトか、それとも第2章の幕開けか」と書いたが、まさに、今回の試合は「第2章のスタート」。
相手は、WBSS(World Boxing Super Series)で、エマヌエル・ロドリゲスと僅差の試合を見せた、ジェイソン・モロニー(オーストラリア)。
試合前の予想は井上の圧倒的優位だったが、ボクシングが生身の人間の戦いである以上、絶対は無い。
さらに、トップランクとの契約後、初の試合ということでのプレッシャーも当然あると思われた。
「無観客試合」ということのみならず、現地入りから試合までの過ごし方、さらに言えば、日頃の練習環境も含め、これまでに無いプロセスを経ての、初ラスベガスのゴングが鳴った。
これまで、王者やランキング上位の相手でも序盤KOを連発していた井上だったが、立ち上がりは、相手の動きと自分の動きを確かめるような戦いぶり。しかし、そのなかでも、ジャブの速さは際立った。
一方のモロニーも、一撃で相手を圧倒するようなスタイルではないものの、間合いの取り方や、足の運び、また、決して一方的に打たせる時間を作らないなど、持っているレベルの高さを感じさせ、緊張感を保った時間が続く。
それでも徐々に、モロニーの隙間に、井上がパンチをヒットさせる場面が増えてくる。上だけでなく、強烈な左ボディも何発か入ったように見えた。
ラウンドを重ねるごとに、インターバルでのモロニーの打たれた形跡も増えていく。
一方で、4Rを終わっての井上の表情が、いつもと比べて疲労が滲んでいるのが気になった。息の抜けない試合展開、また久々の試合と見えないプレッシャーという要因が、疲労のペースを早めているようにも感じた。
迎えた5R、モロニーの左ストレートをもらった後、井上がロープ際に後退する。一瞬「効いたのか?」と思ったが、その後は、井上がバリエーション豊富なパンチをモロニーに浴びせ、再びペースを取り戻していく。このラウンドで、モロニーをぐらつかせた右は、一度スイングのふりをしてタイミングを遅らせたうえで打つという、井上の技術の高さを見せつけるパンチだった。
そして6R、井上の本当に小さい回転の左フックがモロニーをとらえる。モロニー、ダウン。
スローで見ると、モロニーが左ジャブのダブルを打ってきたところに合わせたカウンターで、これにはWOWOW解説の西岡利晃も感嘆。しかも、試合後の井上のインタビューでは、モロニーのパンチの癖を研究して事前に練習していたパンチとのこと。
続く7R。ラウンドに入る前に、両足を交互に上げて、両腕でパンパンと叩くしぐさを見せた井上。
このラウンド、途中からは、ほぼ左ジャブに終始する。その井上の戦い方について解説を求められた村田諒太が「随分、右のパンチが減っちゃったな…」と言った瞬間、井上の右ストレートが炸裂した。足を折るように倒れたモロニーは立ち上がれず。
井上、7R、2分59秒KO勝ち。
最後の右ストレートは見事なカウンターだったが、スローで見ると、打つ瞬間、井上がほんの少し頭を左にずらしている。
フィニッシュも含め、「モンスター」という異名によって隠されがちな、井上の「巧」の部分を印象付けた、ラスベガス初戦となった。
試合後のインタビューでは、当然、次戦以降の対戦相手の質問も出た。
現実的には、ウーバーリとドネアの勝者。井上を盛んに挑発しているカシメロ。さらには、井上が王者であるIBFの現時点での1位ダスマリナス。そして、リゴンドーといった所が候補となってくるのだろう。
少し気になるのが、井上の今後の階級について。
試合後のインタビューで、試合中での足への違和感を口にしていた井上だが、今回の試合、さらには前回の試合でも、足が攣ったという情報もある。その原因が減量によるものかはわからないが、「どこまでバンタム級(53.52kg)で戦うか」は、今後のキャリアの上でも重要な選択になりそう。
井上自身、何年か前のインタビューで、現在の(強豪と戦い続けるような)ペースで試合を行っていくのであれば、「1年2試合ぐらいまで」と語っていた。2021年に2試合やるとして、2年後の2022年になっても井上がバンタム級に留まっている可能性は半々かもしれない。
そう考えると、前述の5人(ウーバーリ、ドネア、カシメロ、ダスマリナス、リゴンドー)のうち、井上が試合をするのは2人までとなる(カシメロあたりは、その後、お互いに階級を上げての対戦という可能性もあるが)。
となると、1つ上のスーパーバンタム級(55.34kg)の面々を見たくなるが、ナバレッテがフェザーに階級を上げたことで、心躍らせる対戦相手が一人減ってしまったのは残念。
日本選手とも対戦のあるダニエル・ローマン(元王者)、レイ・バルガス(現・休養王者)は、興行的なインパクトがあるかというと、疑問符がつくところがある。ただし、ローマンは、スーパーバンタムでの井上の実力を測るには、格好の相手と言えなくもない(なお、ローマンは、直近の試合でパヤノに判定勝利)。
現王者であるアフマダリエフ(IBF正規/ウズベキスタン)、アンジェロ・レオ(WBO/アメリカ)は知名度的にまだまだの選手と思われるし、井上が階級を上げたときに王者であるかはわからない。
現王者では、ブランドン・フィゲロアが、最も興行的には盛り上がる相手か。
なお、WBC(スーパーバンタム級)王者となったルイス・ネリと井上が絡むことはないだろうが、もし王者を保持し続けるようであれば、井上の対戦相手の決定に間接的な影響を与える可能性はある。
なお、井上と同日に行われた、ジャーポンテ・デービスとレオ・サンタクルスの一戦は、デービスが衝撃の左アッパーで劇勝。
デービスの最後の一撃のインパクトは凄かったが、この試合の価値を高めたのは、サンタクルスの存在と言えるだろう。
その意味では、今後、井上尚弥が、第2章を海外のファンにもインパクトがあるものとするためには、ただ勝ち続けるだけでなく、井上に匹敵するほどの力を持つボクサーの存在が不可欠。
現在の周辺階級を見ると、どちらかというと、1階級下のスーパーフライ級の方が魅力ある顔ぶれが揃っているようにも思う(筆頭はエストラーダか)が、転級するとしても、井上の階級アップには間に合わない可能性が高いか。
今後、ナバレッテのような新星の出現がある可能性もあるが、トップランクによるマッチメイクのタイミングを注視していく数年となるだろう。
いずれにしても、今回、「モンスター」とはまた別の異名を考えたいと思えるほどの、中身の濃いボクシングを見せてくれた井上尚弥。
そのボクシングを見て、ボクシングファンがさらにその魅力を再認識し、そしてボクシングにこれまであまり興味の無かった人たちがボクシングに心動かされる、という好循環ができれば、ボクシングファン冥利に尽きる。
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