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キャリアのハイライトか、それとも、第2章の幕開けか -井上尚弥vsノニト・ドネア-

「激戦」。

まさにそんな試合だった。
12R、ずっとテレビに前のめりになりながら見ていた試合は、いつ以来だろう。
辰吉がシリモンコンにKO勝利を収めた試合以来かもしれない。

11月7日、WBSS決勝。井上尚弥vsノニト・ドネア。
試合前は、井上の早い回でのKO勝利を予想する声が圧倒的多数を占めていたが、実際の試合は、ボクシングというものの魅力が詰まった36分間となった。

正直、井上が負ける可能性もあった試合だと思う。
2Rでの右眼負傷。観ている側からすると傷の方にばかり目が行っていたが、実は眼窩底骨折だったという事実。9Rには、あわやというシーンもあった。
それでもそうした苦境を、冷静な現状把握能力と、そのボクシング技術とパワー、そして揺るがない心で乗り切った。
試合後には、井上自身が、右眼が二重に見えていたことへの対応として右ガードで目を隠したこと、ただしドネアに悟られないようにずっとはやらず、状況に応じてガードの有無を使い分けていたことを明かした。
対ドネア戦、最も井上が見せた能力は、こうした「危機対応能力」ではなかったか。

なお、今回の試合、試合後、ファンはもとより、現役・元ボクサー・トレーナーなど、様々な人たちが、試合への寸評を発信していた。
実際のところ、自分自身、リアルタイムでの観戦時には、「井上が負けるかもしれない」という思いを抱いての観戦ということで、見逃していた部分も結構あるのではと思った。
そこで、再度、映像を見返してみることにした。

1 R
インパクトのあるパンチの出し合い。だが、スピードは井上が勝っているか。ドネア、右、左ともガードが高い。
ポイント、井上。

2R
前半、井上攻勢。2分過ぎ、ドネア左フック、井上右眼上、出血。
ドネアの左フックのインパクトはあったが、3分を通して考えると、ポイント、井上。

3R
右眼瞼を大きく切った井上に対し、ドネア、プレッシャーをかける。井上、右ガードを高く上げて防御するが、左ジャブも出し、守り一辺倒にはならず。
ポイント、ドネア。

4R
井上、右・左のガードからののぞき見スタイル。ドネア、インパクトのあるパンチを繰り出す。
ポイント、ドネア。

5R
終盤まで互角。残り30秒、井上の右ストレートがヒット。その後も右が当たる。
ポイント、井上。

6R
井上、リズムが出てくる。コンビネーションも。
ポイント、井上。

7R
井上、前半、足を使って距離をとる。中盤以降、左ジャブがよく出るが、時折、ドネアの怖いパンチも。
ポイント、井上。

8R
井上、中途半端な位置でややガードが空いたところ、ドネアのパンチをもらう。右眼上の傷、また血が出てくる。
ポイント、ドネア

9R
井上、足元やや力が入っていない? ドネアの右ストレートが井上にヒット。井上クリンチ。ただ、ドネアも簡単に追撃してこない。
ポイント、ドネア。

10R
お互い、ヒットが少ないラウンド。井上のコンビネーションが、再び戻ってきた。終了間際、井上のいいパンチが入る。ゴング後、井上が観客を煽る。
最後の井上の攻勢は印象的だったが、3分間で考えると、ポイント、ドネア。
このラウンドまでで、自分の判定ではイーブン。

11R
井上の右フック、左ボディが当たり始める。そして井上の左ボディで、ついにドネア、ダウン。
ドネア立ち上がるが、井上、さらに追撃。しかし、ドネアの左フックが井上をとらえるシーンも。その後も井上が追撃するが、二度目のダウンは取れず。
ポイント、井上(10-8)

12R
井上、ジリジリとプレッシャーをかける。井上攻勢。ドネアも最後までパンチを狙うが、終了のゴング。
ポイント、井上。
自分の判定では、115-112で井上。

とにかく、スローで見ても、パンチを追いきれないシーンが多数のハイレベルの攻防。
また、解説の長谷川穂積が感嘆していたが、目に見えるパンチの出し合いだけでなく、フェイント、さらには目に見えないレベルのプレッシャーの掛け合いなど、かなり高度な技術戦が繰り広げられていたのだろう。
全盛期と言われる時代のドネアの飛び跳ねるような姿ではないものの、ガードを高く上げ、自身の左フックを防御力としても機能させるなど、最後まで井上の致命打を許さなかった、そして最後の瞬間まで勝利を狙い続けたドネアの姿は、一流のボクサーが本気になったときの底力をまざまざと見せつけた。

一方の井上。試合後、頭がクリアな状態で、饒舌に各マスコミの試合分析に応えるさまを見ていると、こちらも、パワー・技術だけではない、さらなるボクサーとしての可能性、そして、魅力を感じさせてくれた。
ただし、今回、これまで井上がほとんど見せなかった拮抗した試合内容となったことで、対戦に手を挙げる強豪も増えてくるだろう。
ウーバリ、ソト、そして、あのネリ…、さらにはリゴンドーの名前も挙がってきている。
これまでの怒涛のKOロードを見ていると、1階級上のナバレッティとの対戦も期待されたが、まずは、バンタムの強豪との試合が先か。
今後、1階級下の強豪たちが、階級を上げてくる可能性もある(大橋会長によると、スーパーフライ級時代、アンカハスとは対戦決定寸前まで行きながら破談になったとのことだが)。

ここ4戦の相手は、マクドネル、パヤノ、ロドリゲス、ドネア。
運営面で色々と問題も指摘されたWBSSだが、WBSSがなければ、井上がこれだけ強豪との試合を連続してできることもなかっただろう。

それでも、井上へのボクシングファンの期待は、さらに上のステージへと向いている。
果たして、トップランクとの契約を果たした井上が、今後の試合で、どういった姿を見せるのか、どういった姿を見せてくれるのか…。

今回のドネア戦の位置づけについて、「数試合分の価値」という評価をする人が数多くいるが、今後予想される、さらに一段上にいるボクサーとの対戦で、今回の試合の経験を生かすことができるか。
あれほどの素晴らしい試合を見せてくれた井上尚弥に対し、「キャリアのハイライトか」という記事タイトルの付け方は少し厳しいかもしれない。
ただ、これから待ち受ける試合は、これまでよりもさらに一つ上のレベルが求められると思われる。

心躍らせる、井上尚弥の「第2章」が見たい。

by momiageyokohama | 2019-11-14 02:27 | ボクシング | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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