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熱いぜ! スーパーフェザー

和氣慎吾 vs 久我勇作の対決に燃えた7月27日。それから時を置かずして、再び、日本のボクシングファンの心を躍らせる一戦が行われた。

7月28日、アメリカ・フロリダでのWBOスーパー・フェザー級王座決定戦。
対戦したのは、同級1位のクリストファー・ディアス(プエルトリコ/23勝(15KO)無敗)と、同級2位の伊藤雅雪(23勝(12KO)1敗1分)。
伊藤は、初のアメリカでの試合。しかも、会場はほぼディアスの応援という、完全アウェーの状態。試合前の予想もディアス有利の声が多かった。
日本での実績は申し分のないものの、ときに相手を見すぎてしまい、「もう一押しがあれば…」と思う試合も多かった伊藤。期待と不安が入り混じるなか、ゴングが鳴る。

そこで、伊藤が見せたボクシングは、これまで感じていた物足りなさを一気に払拭させるものだった。
狭く設定されたリングのなか、好戦的なディアスに対して一歩も引かず、多彩なパンチを打ち込んでいく。身長など元来のサイズが伊藤の方が大きいという要素はあったものの、押し合いにおける力強さも含め、体力・テクニックとも世界を獲るに十分だと思わせるほどのボクシングを見せた。
4Rには、右ストレートでディアスをダウンさせる。その後も、前に出るスタイルは変わらず。ディアスの強烈なパンチを浴び、時折冷やっとする場面はあったが、後半になっても伊藤のペースは落ちなかった。
一方、ディアスも、右眼を腫らしながらも最後まで前進を続け、両者の果敢な打ち合いは、ボクシングというスポーツの魅力を存分に見せる試合にもなった。
正直、相手のホームともいえる環境を考えると、「判定に持ち込まれると、もしかして……」という思いもあったが、実際に下されたジャッジは、5~9ポイントリードで、三者とも伊藤の勝利という、非常に公平な判定に。
世界ランク上位に長い間いながら、世界戦のチャンスになかなか恵まれず、ついにアメリカでそのチャンスを手にした伊藤が、悲願の世界チャンピオン獲得を果たした。

判定が読み上げられたあと、相手のディアスは拍手で伊藤を称えた。さらに、試合後に現地の放送席に伊藤が呼ばれたときの実況・解説の好意的な表情が、今回の伊藤のボクシングが、現地のファンの心に十分に届くものだったことを表していたと言えるだろう。

思えば、このスーパー・フェザー級は、近年の日本ボクシング界において、実力のあるボクサーが群雄割拠している、最も面白いクラスの一つといっていい。

伊藤が快挙を達成した後、自分はTwitterで、下記のようなツイートをした。

「敵地で王座獲得の快挙を果たした、伊藤雅雪。一度は王座獲得もリスタートを余儀なくされた、尾川堅一。伊藤に勝つも尾川に連敗し階級アップの道を選んだ、内藤律樹。ロシアでの激戦後グローブを置いた、金子大樹。伊藤に負け金子に勝ったのち引退も再びリングに戻った、仲村正男。日本のスーパー・フェザーは熱い。」

上記のボクサーたちは、数年前、まさに日本ランクの上位で凌ぎを削ったボクサーたちである。
そして、タイトルと名のつく試合が増えたこと、また、東洋太平洋タイトルが、第二の日本タイトルのような状況になってしまっていることもあり、強者との対戦を避ける傾向の多い近年の日本ボクシング界のなかでは、珍しく各選手同士が、結構な確率で拳を交えているのも特徴的である。

 ○伊藤雅雪 vs ●仲村正男 (2014.7.30)
 ○内藤律樹 vs ●伊藤雅雪 (2015.2.9)
 ○仲村正男 vs ●金子大樹 (2015.8.21)
 ○尾川堅一 vs ●内藤律樹〔第1戦〕(2015.12.14)
 ○尾川堅一 vs ●内藤律樹〔第2戦〕(2016.12.3)
  (※勝敗は、いずれも判定)

さらに言えば、このスーパー・フェザーは、2010年1月の世界王座獲得から2016年4月にわたりWBA王座に君臨した内山高志。そして、「続けていたら死んでいた」とコメントした内山への世界王座挑戦失敗から再起して見事にWBC王座を獲得、海外の試合でも見るものの心を揺さぶった三浦隆司という、両世界王者がいた階級でもある(上記で挙げた5人のうち、金子が、内山高志の世界王座に挑戦し、終盤ダウンを奪う健闘を見せたものの、大差判定で敗れている)。

その後、今回の伊藤雅雪、そして残念ながら、試合後のドーピング検査により「無効試合」となってしまったものの、本当にドーピングをしていない状態で試合をしていたのであれば、尾川堅一についても、その実力が世界レベルであることを示した。

ただし、さきの伊藤、尾川と、敵地での世界戦となったように、スーパー・バンタム級以下の階級と比べると、海外の強豪の絶対数も多くなるためか、日本で世界戦を行うことが難しくなる階級でもあると言える。それは、ある意味で、世界王者になってもなかなか日本での知名度が上がらないという状況にもなり得る。
一方で、今回の伊藤のように、本場のファンの心に届く試合をすれば、日本という狭い枠にとどまらず、世界のボクシングファンに知られる存在となる可能性も秘めている。
違う階級の話にはなるが、国内では敵なし、世界主要4団体すべてでランキングトップ10に入っている、元日本スーパー・ライト級王者・岡田博喜は、先日、アメリカの王手プロモーション・トップランク社と契約(村田諒太に続き、日本人2人目)。今後は主戦場をアメリカに置き、世界タイトルを狙うとのことである。

現在のスーパー・フェザーは、さきにも挙げたように、尾川がキャリアを中断。また、内藤律樹は、階級を2階級上げ、スーパー・ライト級に転向と、ひところほどの強豪が目白押しという状態ではないかもしれない。
ただ、日本・東洋太平洋王者には、それぞれ、末吉大三代大訓という、帝拳、ワタナベジムのホープがいる(ちなみに、末吉は、4回戦時代、伊藤雅雪に1-2の判定で敗れている)。
三代大訓は、仲里周磨、正木脩也という、これまた期待の若手を破って現在の位置に来ており、自身が出演したネットラジオ番組では、末吉といつか戦いたいとも言っていた。

まずは、国内の強豪と臆せず戦う。そして、そこでの経験を糧にして、さらなる実力アップを図っていく。それは、国内でだけでなく、海外での経験も含めていく形で。
(伊藤雅雪の今回の快挙達成には、アメリカでの度重なる合宿の存在があるようだし、結果的にキャリア最後の試合となってしまったが、金子大樹は、ロシアでの無敗の世界ランカーとの一戦に臨んだ)

世界への流れの幹が太ければ太いほど、それは価値のあるものになる

そのためには、当然、ボクシング界全体が、「リスクを負ってもチャレンジできる」土壌を、収入面なども含めて、作っていく必要があるだろう。

より「熱い」ボクシング界にするために。


by momiageyokohama | 2018-08-12 03:02 | ボクシング | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


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