尾川堅一、「殊勲」と「宿題」を手にした世界王座獲得
2017年 12月 12日
日本選手にとって、アメリカでの世界王座獲得は、実に36年ぶりのこと。
井上尚弥の”Superfly2”参戦の雲行きが怪しくなっているなか、日本人ボクサーの海外進出という意味では、久々に嬉しい出来事となりました。
22勝(17KO)1敗という戦績が示すように「強打」が武器の尾川と、技巧派と言われるファーマー(戦績:25勝(5KO)4敗)との対戦ということで、試合前のポイントは「尾川がファーマーをつかまえられるか」。
実際、試合が始まると、確かにファーマーの動きは速く、パンチスピードも思ったよりも速い。しかし、尾川のスピードも負けてはおらず、序盤は五分五分の展開。ただ、ファーマーの動きの軽やかさを取るか、尾川のプレッシャーを取るかで、ポイントのつけ方がだいぶ変わる試合になると思われました。
中盤になっても尾川のプレッシャーは変わらず。ただ、ファーマーも、ラウンドの途中途中で攻勢に転じる時間帯もあり、サウスポーからの左フックが尾川の顔面をとらえる場面も。その反面、スイッチに転じたときは、逆に尾川の右が当たるチャンスにも思えました。
敵地での試合、しかも、アウトボクシング(というより、タッチボクシング?)に有利な判定が出がちなラスベガスでの試合ということもあり、判定の場合、明確にリードしていないと、尾川の勝利は難しいのでは?
そう思っていただけに、中盤まで、なかなか尾川の右が当たらないもどかしい展開が続きます。
しかし、7R、尾川の右がようやくクリーンヒット。ただ、その後が詰め切れない。
終盤はファーマーも疲れてクリンチを多用しますが、尾川も攻撃のバリエーションが少なく、ファーマーをとらえきるところまでは至らず。10R、再び尾川がチャンスを作るも、またもファーマーに逃げられます。
自分の採点では、10Rまででイーブン。
ラスト2Rは、多くの時間、後ろに下がりながらも、時折リズムのある攻撃を見せるファーマーにポイントをつけるか、それとも尾川が時折見せる強打にポイントをつけるか、これまた悩む展開。自分は、11Rはファーマーにつけたので、12Rは「尾川、倒せー!」と思いながら見ていました。しかし、尾川が打った大きな右が空を切ったところで試合終了…。
自分の採点では、115-113でファーマー。
現在のスーパー・フェザー級の層の厚さを考えると、「日本人選手が再びこの階級でチャンピオンに挑戦できるのは、また先になってしまうのだろうか……」と半ば茫然とした気持ちで、判定を待っていました。
そして、判定。
1人目は、116-112で、ファーマー。
しかし、続く2人目は、116-112で、尾川。
そして運命の3人目。
スコアは、115-113。
王座決定戦のため、当然「『New』IBFスーパー・フェザー級チャンピオン」というコールに続いて呼ばれた名前は、「KENICHI OGAWA!」でした。
これまで、ダメージこそそこまで与えていないものの下がりながらの当てパンチで判定勝利、という光景を幾度も見てきたこと、そしてアメリカでの判定ということで、99%近く諦めていた尾川の勝利でしたが、その攻める姿勢が、わずか2ポイント差での王座獲得をたぐり寄せました。
正直、自分が採点したように、ファーマーの勝ちと見た人も多かったでしょう。
内藤律樹との二度の激戦(1戦目、2戦目)を見たいちファンからすると、右ストレートに頼るだけでなく「もっとバリエーションのある攻撃ができるはずだろう」という思いもあったし、最後の2R、ファーマーのパンチもそれほど無いと思われるなか、もう一押しの「勇気」も見たかった。
ただ、現在のスーパー・フェザー級というカテゴリー、そしてアメリカでの載冠というのは、本当に価値のあるものだと思います。
何より、間近で見たボクサーが、ラスベガスのリングで世界を獲ったということが、何より嬉しい。
残念ながら、その快挙は、ほぼWOWOWでしか見られないため、多くのスポーツファンがその試合を見ていないというのが現実ではありますが、日本ボクシング界にとって、非常に意義のある試合だったと言えるでしょう。
もちろん、試合後、本人もコメントしていたように、今後、世界の実力者と戦っていくには、まだまだ課題が見てとれます。
また、内藤戦の後の日本タイトル戦が、果たして尾川自身のスキルアップにつながったのかという点などは、日本タイトルを獲った「以降」の実力のつけ方という、日本ボクシング界全体の課題とも言えるでしょう。
それでも、内山高志、三浦隆司と、長年世界で戦ってきた王者が相次いで引退し、寂寥感を感じていたところでのこの快挙は、ボクシングファンに、一つの「ロマン」を見せてくれました。
今は、心の底から、「おめでとう。そして、ありがとう」という言葉を、尾川選手に贈らせてもらいたいと思います。
※「12.14 後楽園ホールの衝撃 - 内藤律樹 vs 尾川堅一 -」
※「12.3 後楽園ホールの現実 - 尾川堅一 vs 内藤律樹Ⅱ -」



























