「福岡ソフトバンク vs 横浜DeNA」。2017日本シリーズを振り返る
2017年 11月 09日
その瞬間、福岡ソフトバンクの2年ぶり、そしてこの4年間で3度目の日本一が決まり、横浜DeNAの19年ぶりとなる日本シリーズ制覇の夢は絶たれた。
昨年こそ、リーグ優勝と日本シリーズ進出を北海道日本ハムにゆずったものの、その前の2014年・2015年とパ・リーグ優勝。クライマックスシリーズも勝ち抜き、迎えた日本シリーズでは、阪神・ヤクルトに力の差を見せつけ、いずれも4勝1敗で日本一を勝ち取ったソフトバンク。
当然、今シリーズ前も、ソフトバンク優勢という声が多数を占めた。
一方、ペナントは3位に終わったものの、その後の阪神・広島とのCSを勝ち抜いた勢いを評価し、横浜DeNAを推す解説者の声もあったが、その多くは横浜OB。
2014年・2015年と同じく、ソフトバンクがセ・リーグのシリーズ進出チームを圧倒する可能性は十分にあり得た。
実際、ファンからしてみても、近年のソフトバンクとの交流戦では、力の差を見せつけられ続けていた。
今季の対戦では、クライン・平良といった、力の劣る先発の立ち上がりをソフトバンク打線が見逃すはずもなく、序盤に点を重ねられ、連敗。3戦目こそ、戸柱が千賀から値千金の逆転タイムリーを打ち3連敗を逃れた(なお、このときの勝利投手は今永)が、2戦目で、決して主力投手ではない松本裕に勝ち星を献上したところにも、両チームのこの時点での差が見て取れた。
遡って昨年は、ヤフオクドームで3戦全敗。さらに、一昨年は、初戦こそバリオスの乱調に付け込んで逆転勝ちしたものの、その後の2試合は連敗。今でも何度となく流される柳田の三浦からの電光掲示板破壊弾は、この年の交流戦での出来事である。
正直、ペナントでの順位が示すとおり、両チームの実力差はある。
ただ、ソフトバンクの先発も、CSでの登板を見る限り盤石とまではいかない。
雨による日程変更に助けられた側面はあったものの、ラミレス監督の継投、そして試合ごとに大きくなっているように見える選手たちの自信をもってすれば、ソフトバンクを倒すことも……。ファンの贔屓目かもしれないが、そんな期待感もあった。
いずれにせよ、勝負のポイントは2つ。
岩嵜(シーズン防御率1.99)・サファテ(同1.09)から点を取ることは難しい。点を重ねるチャンスがあるとするならば、なるたけ先発投手を早い回で降ろして、岩嵜・サファテにつながれる前の投手を攻略することが、一つ目のポイント(ただし、嘉弥真は初見では攻略するのは難しいと思っていたので、なるたけ嘉弥真を無効化させるような試合展開に持っていければとも思っていた)。
もう一つ、はっきりしていたのが、横浜の中継ぎの弱さ。CSでは小刻み継投がハマったが、個々の投手がある程度のイニングを抑えての勝利というわけではなかった。ソフトバンクの場合、ちょっとした綻びがあれば、そこをどんどんと攻めてくる可能性がある。山﨑康、また好調時のパットンをのぞくと、終盤のイニングを無失点で切り抜けるというのはかなり厳しい。そのためにも、厳しい要求にはなるが、打線が5得点以上取ることが求められると考えていた。
そして、いよいよ始まった日本シリーズ。
想定内のこと、そして予想だにしなかったこと含めて、色々なものが詰まった、今回のシリーズを振り返ってみる。
【第1戦】
初戦の先発は、千賀と井納。
この試合は、井納の出来が勝敗に直結した試合だった。
CS1stステージに続く、ポストシーズン初戦での先発となった井納だったが、ストレートのシュート回転が目立ち、かつ変化球の落ちも悪かった。序盤2回で早くも3失点。5回、ピンチを迎えたところでの早めの交代は致し方なかったと思う。
ただ、長谷川を想定して左の田中健をぶつけてきたDeNAに対し、前の打席で本塁打を放っていた長谷川をあっさり右の川島に変えてきたソフトバンク。これに動揺したのかはわからないが、今季、あまり結果を残せなかった田中にとって、その後のピッチングは計6得点を許すという厳しいものとなった。
千賀の方も、序盤はもう一つコントロールに苦しんでおり、この5回を踏ん張れば、DeNAにもまだチャンスがあったが、ここでの一挙7点で試合は決まった。
DeNAにとっては、この敗戦をチームの力の差ととるのか、はたまた「ただ、先発の出来が悪かったから」ととらえるのか。
敗戦のショックを引きずらないためには、後者のとらえ方がいいのではと思ったが、2~5戦の予想先発投手を考えると、続く2戦目は必ず取っておきたい試合となった。
なお、この初戦で、井納が打ち込まれたことで、6戦目までシリーズが続いた場合、井納をもう一度先発させるのかどうかという投手起用のポイントも生まれた。
○福岡ソフトバンク(1勝) 10-1 横浜DeNA(0勝)●
【第2戦】
2戦目の先発は、東浜と今永。
初戦に続き、初回、またしても、柳田出塁→今宮バント→デスパイネのタイムリーという流れで、ソフトバンクが先制した。
しかし、ここからが初戦と違った。キレのあるストレート、そして変化球とのコンビネーションも冴え、今永が奪三振を重ねていく。内容的にも、左打者・右打者問わずデスパイネ・内川をのぞく先発7人から三振を奪ったところに、投球の完成度が見てとれた。
一方の東浜。今季16勝と大きく飛躍を遂げたとはいえ、楽天とのCSでは敗戦を喫した。シリーズも初先発ということで、付け込む隙はあるかと思われたが、予想以上に、その得意球シンカーは厄介だった。5回までは1-0と、ソフトバンクが初回に挙げた1点を守る展開が続く。
DeNAからすると、じりじりするような状況を変えたのが、梶谷の一振りだった。
ライトポール際への同点ソロホームラン。続くロペスにヒットを打たれたところで、工藤監督は早くも東浜に代えて嘉弥真をマウンドに送る。迎えるバッターは筒香。
実は、「対決」という意味で、このシリーズのポイントだと思っていたのが、筒香vs嘉弥真だった。サイドスローにしたことでストレートの球威が格段に上がり、かつ西武の秋山らも手こずった角度の大きいスライダーを持つ左の中継ぎ。左打者は初見ではかなり苦労すると思われ、さらにバッティングフォーム自体を崩される恐れもあった。また、シーズン被本塁打1という数字が示すように、筒香の「ホームラン」という武器を封じられる可能性もあり、工藤監督が、筒香対策として嘉弥真を執拗にぶつけてくるようなことがあると嫌だなと思っていた。
結局、嘉弥真と筒香のシリーズ初対決は、筒香の空振り三振に終わる。
ここで工藤監督は、今度森唯斗にスイッチ。
この継投自体は間違いではないと思ったが、その思惑を宮﨑が打ち砕いた。
カウント3-2からの内角球をバックスクリーン横へ、勝ち越し2ラン。この場面、最後に内角球を選択した甲斐のリードについては、その後批判の声も多かった。
ただ、宮﨑が外角球を打つことも上手いことを考えれば、必ずしもリードミスとは言えないと思う。この場面は、打った宮﨑が素晴らしかったと考えた方がいいのではないか。このシリーズ、1戦目からシーズン中よりスイングの大きさが目立っていた宮﨑。CSでも結構大きな振りをしており、もしかしたら、ポストシーズンでは長打を打つことを、自分の役目としていたかもしれない。
続く6回裏のソフトバンクの攻撃も0点に抑えた今永。ただ若干ボールが浮く投球も見受けられ、6回で今永を代えるという継投自体は妥当だったと思う。
しかし、DeNAにとって、シーズン中でも鬼門とも言える7回。やはり、ソフトバンクは見逃してくれなかった。
先頭の明石が、三上から2ベース。DeNAのこの試合の敗因のポイントを挙げるとするならば、この先頭打者の出塁だったと思う。
その後、変わった砂田も、柳田にタイムリーを浴び、1点差。
ここで、パットンが1イニング前倒しで登板。今宮に強い当たりをはじき返されるが、セカンド柴田が好捕。ゲッツーでピンチ脱出……と思ったが、ダブルプレーを焦ったためか、倉本が送球を完全捕球できず、さらにピンチが広がることに。
パットンはデスパイネを抑えるも、内川にフォアボールを出し満塁。そしてCSで殊勲打を連発した中村晃に逆転のタイムリー……。
この場面、セカンドランナーの生還を許したのは、梶谷のバックホームが逸れたからでもあった。倉本の落球も含め、初戦とはまた違う、細かいところでの守備の綻びが原因となっての敗戦。
3戦目以降の先発投手が果たしてソフトバンク打線に通用するのかが未知数なだけに、好投の今永で是が非でも勝ちたかったDeNA。
シリーズ4勝をめざすうえでは、非常に痛い1敗となった。
○福岡ソフトバンク(2勝) 4-3 横浜DeNA(0勝)●
【第3戦】
舞台を横浜に移しての3戦目。
先発は、ウィーランドと武田。
2戦目までの流れを見ると、初回の攻防が試合を決めるといっても過言ではなかったが、はっきりと明暗が分かれた。
1回表、またしても柳田がヒット。このヒットは、セカンドの柴田が打球の速さに対応できず、安打にしてしまった当たりでもあった。そして、すかさず柳田が盗塁成功。今宮バントのあと、今度は内川がウィーランドの浮いた変化球を逃さず2ベースを放ち、ソフトバンクが3試合連続で初回に得点。
その裏、DeNAも2四球をもらい、ランナーを出すが、桑原・梶谷がともに盗塁死。高谷のシーズン中の盗塁阻止率の悪さを突いた作戦だったとは思うが(桑原の盗塁死はランエンドヒットのサインとのこと)、試合後、梶谷が武田のフォームが全然盗めなかったといったコメントをしていたように、完全に“失敗手”となってしまった。
さらに4回表には、八番・高谷に、痛すぎる2点タイムリーを浴び、3点差。
それでも、4回裏、ロペスのソロで2点差とし、さらに、武田に対し1死満塁のチャンスを作る。
ところが、次打者が投手ということを考えると、たとえ打撃が得意なウィーランドとはいえ、得点につながる当たりを打ちたかった柴田が内野フライ。続くウィーランドも凡退し、武田を捕まえきることはできなかった。
結局、工藤監督は、4回までで被安打4・与四球4・与死球1と内容の悪かった武田を、5回途中で石川に交代。継投で逃げ切りをはかる。
しかし6回、横浜が再びチャンスを作る。
1死二・三塁で、嘉弥真に対し、前の打席、チャンスを潰した柴田。簡単に追い込まれるが、そこから粘る。結局、12球粘ったのちに四球で満塁。
ここで、ピッチャーは森に交代。
代打・乙坂が内角への変化球で三振に倒れるが、続く倉本が、これまた粘る。そして、柴田と同じ12球目、セカンドへの「執念」と言っていい内野安打で、1点差に。
迎えるのは、このシリーズ12打席ノーヒットの桑原。これまで、悉く外角へのスライダー系のボールを空振りしていた桑原だが、2球目、外角への変化球をとらえた打球はライト前へ落ちるかに見えた。
しかし、結果はライトへのライナー性のフライで3アウト。捕られた瞬間、手を膝につき下を向く桑原の姿は、この試合を象徴するシーンだった。
続く7回には、モイネロの前に、ロペス・筒香が連続三振。そして、8回・岩嵜、9回・サファテとソフトバンクが盤石のリレーで逃げ切った。
これで、ソフトバンクが3連勝。
DeNAも、2戦目・3戦目と、僅差の試合に持ち込むことはできたものの、中継ぎ陣の差、また一番打者の出塁の差もあり、勝利を呼び込むところまでは行かない。
4戦目の先発が、決して制球がいいとは言えない濵口ということを考えると、いよいよ追い込まれた形となった。
○福岡ソフトバンク(3勝) 3-2 横浜DeNA(0勝)●
【第4戦】
ソフトバンクが一気に王手をかけて迎えた4戦目。
先発は、濵口と和田。
プロでのキャリアでいうと、天と地ほどの差がある二人のサウスポーによる投げ合いとなった。
この試合も、初回の攻防が大きなウエイトを占めることが予想された。
そして、1回表、4戦目にして初めて、DeNAバッテリーが、柳田の初回出塁を阻止することに成功する。続く打者に対しても、デスパイネには四球を出すも、内川はサードフライに打ち取り、これまた4戦目で初めての初回無失点。
一方の桑原は、初回、4試合目にして、ようやく初安打。しかし続く柴田が送れない。
その後は、両投手の投げ合いが続き、4回まで0-0。DeNAにとって、これまたじりじりするような展開のなか、風穴を開けたのは、またしても宮﨑の一発だった。さらに連打と濵口の絶妙な送りバントでチャンスを作ると、倉本が低めのボール球を拾うようなバッティングで貴重な犠牲フライ。
2点を先制しても、濵口の快投は続く。落ち方が一定でないと言われるチェンジアップ、球威のあるストレート、さらにはフォーク、スライダーに対し、イニングが進めば進むほど、ソフトバンク打線が戸惑っているように見えた。7回には女房役・髙城が、貴重な一発。
8回、鶴岡に2ベースを打たれ、惜しくもノーヒットノーランを逃したが、シリーズの流れを一気に変えるかもしれない、素晴らしいピッチングだった。
9回には、6点リードという場面ではあったが、4戦目にして、ようやく山﨑康が日本シリーズ初登板。横浜が、19年ぶりとなる日本シリーズでの勝利を挙げた。
●福岡ソフトバンク(3勝) 0-6 横浜DeNA(1勝)○
【第5戦】
先発は、石田とバンデンハーク。
前日、濵口の好投で1勝したとはいえ、CSでの投球内容はいいとは言えなかった石田が先発ということで、やはり、石田の立ち上がりがカギとなると思われた。
しかし、その注意しなければいけない初回に、またしても失点。今度は、今宮ヒット→盗塁→内川タイムリーという流れだった。
なかなか「足」を使えないDeNAに対し、このシリーズ、走り放題といってもいい、ソフトバンク。DeNAにとっては、ピッチャーのクイックも含め、今後、チームとして取り組まなければいけない課題が、日本シリーズという舞台で露呈される形となった。
初回に失点を許した石田だったが、その後は、なんとか得点を許さないピッチングを続ける。
昨年の好調時にはよく投げていた右打者の内角へのキレのあるストレートはあまり見られなかったので、「信頼に足る」というところまでは行かないものの、なんとか最少得点差で、試合をつなぐ。
一方のバンデンハークは絶好調。立ち上がりから150km超のストレートで押しまくり、DeNA打線に対し、外野に打球が飛ぶことすら許さない。
しかし4回、DeNAにとっては、打順的に数少ないチャンスであったこのイニング、クリーンアップが見事に仕事をやってのける。
まずはロペスが、ライトフェンスに当たる2ベース。
そして、続く筒香。ここまで甘い球へのミスショットもしばしばあったものの、「泰然自若」の佇まいは崩さなかった主砲が、ついに逆転2ランをスタンドに叩き込む。
「期待される場面で打つ」その言葉を地で行くその姿には、「凄い」という言葉しか出てこなかった。
だが、石田が、そのリードを守れない。デスパイネの犠牲フライで同点とされ、さらに中村晃に勝ち越し2ランをライトスタンドへ叩き込まれた。
中村への勝負球は内角を狙ったストレートが真ん中へ入った結果、打たれたように見えた。石田の本来の武器は、外角低めへのコントロールされたストレート。巧打者のイメージが強い中村だが、直近のCSで本塁打を量産したことを頭に入れると、石田の球威で内角ストレートという選択が正しかったのか、疑問が残った。
この時点で、敗戦を覚悟したDeNAは少なくなかったと思う。それぐらい、ショックの残る逆転のされ方だった。
8・9回のソフトバンクの投手が盤石ということを考えると、打順の巡り的に、DeNAに残されたチャンスは、6回裏のみ。4回裏と合わせ、この試合、二度しかないであろう、得点の可能性のあるイニング。しかし、そのチャンスを二度とも生かしたのが、この日のDeNAだった。
ヒットで出た桑原が盗塁。続く柴田の当たりは、バンデンハークのノールックキャッチに阻まれたものの、ロペスが四球。
打席に筒香を迎えるところで、工藤監督は、ピッチャーをモイネロに交代した。
結果論になるが、個人的には、ここで嘉弥真を持ってこられた方が嫌だった。おそらく、続く宮﨑が右打者だったため、右打者にも強いモイネロを登板させたのだと思うが、長打封じという意味では、嘉弥真の方が有効だったように思う。
そして、筒香が、また打つ。フェンスを直撃する2ベースで、1点差。さらに、宮﨑が前進守備のショート横を抜くタイムリーで同点。
続くバッターは嶺井。フルカウントから打った打球は、中間守備のセカンド明石の前へ。明石はゲッツーを狙うも、ここで痛恨のファンブル。DeNAが再び勝ち越す。
なお、この場面、強調しておきたいのは、明石は決して守備が下手な選手ではない。むしろ巧い選手である(今季は二塁で36試合・1失策、一塁で72試合・1失策)。ただ、打球が緩かったこともあり、ゲッツーを取るには捕りながらターンして投げるという動作が求められ、そこでああしたミスが生じてしまったのではないか。
いずれにせよ、DeNAが大きな大きな勝ち越し点を奪った。
ただし、DeNA投手陣にとっては、まだまだ長い終盤の3イニング。7回は、エスコバーがランナー2人を出しながら、何とか抑えた。8回表は、シーズンどおりパットン。しかし、こちらもランナー2人を許す。
ここで、バッター柳田に対し、ラミレス監督が取った策は「8回からの山﨑康投入」。勝負はフルカウントまで持ち込まれ、最後、山﨑の完全にボールになるツーシームに柳田のバットがまわり、山﨑に軍配が上がった。
1点差では、まだ何があるかわからないことを考えると、8回裏、3番・ロペスから始まる打順で追加点を上げたかったところだが、ここは、岩嵜が得点を許さず。
続く9回も、ソフトバンクの攻撃は簡単に終わらない。今宮、そして内川がレフト前ヒット。中村を三振に打ち取り、2アウトを取った山﨑だが、松田がしぶとく内野安打でつなぎ、2死満塁という状況に。ここで、バッターは明石。心に期するものがあったであろう打席だったが、その初球、明石が打った打球はロペスへのファーストゴロとなり、試合終了。横浜が2勝目を上げた。
この試合の勝負のポイントは、前述したが、二度の打順的好機を逃さなかったDeNAクリーンアップの力。第6戦の先発は、第2戦で好投した今永が予想され、がぜん、逆転での日本シリーズ制覇の期待も抱かせる展開となってきた。
そして、舞台は再び福岡へ。
●福岡ソフトバンク(3勝) 4-5 横浜DeNA(2勝)○
【第6戦】
DeNAの先発は、予想どおり、今永。
一方、ソフトバンクの先発は、予想された千賀ではなく、東浜だった。
千賀の先発回避は、戦略的なものではなく、背中の痛みが原因とのことで、DeNAにとって追い風が吹いているように思える一方で、千賀を予想していたバッター陣に、打撃の狂いは生じないだろうかという思いも沸いた。
初回は、先頭の柳田の出塁も許さず、上々の立ち上がりを見せた今永。2回も、内川、中村をアウトにし、このまま行くかと思われたが、2アウトから松田に左中間への先制弾を浴びる。1-2と追い込まれた松田だったが、ここでバットを短く持ち換え、今永の甘く入ってきたストレートをものの見事に叩き込んだ。
一方のDeNA打線は、2回に1アウト一・三塁、4回にも1アウト一・二塁のチャンスを作るが、2回は三振ゲッツー、4回は柴田がピッチャーゴロ併殺打と、得点機を潰す。
この4回の柴田の投ゴロだが、実は東浜からセカンドベースへの送球が逸れた。しかし、これを今宮がこともなげに捕球、かつ素早い送球で楽々ゲッツー。さきの松田の2アウトからのバットの長さ変更もそうだが、こうした目立たないところでの工夫や球際の強さが、ソフトバンクの見えない強さなのだろうと感じる場面が、このシリーズでは随所にあった。
試合は4回を終わって、ソフトバンクが1-0のリード。
DeNAからすると嫌な流れに入りつつあった試合展開を変えたのは、なんと、DHとしてこのシリーズ初めて先発出場した白崎だった。東都大学時代の対戦経験をふまえての先発起用だったかどうかはわからないが、1打席目、普段であればクルクルとまわっている外角へのスライダーをライト前にもっていった打撃も含め、ラミレス監督の選手起用が見事にあたる形となった。
さらにこの回、1アウトから倉本、桑原が連打し、一・二塁。打席に梶谷、というところで、工藤監督は東浜を嘉弥真に交代。梶谷は、初球をセーフティぎみの送りバント。
バッターボックスにロペスというところで、工藤監督は今度は、嘉弥真から石川に投手交代。5球目、ホームベースの遥か手前でワンバウンドしたパワーカーブを、身を挺して止める甲斐。しかし、その投球に動揺したか、甘く入った続く変化球をロペスが見逃さず、2点勝ち越しタイムリーを放った。
その裏、今永は三者連続三振。規定打席に到達した打者のなかで2番目に三振の少ない中村晃を二打席連続三振に取っているところに、この日の今永のピッチングの素晴らしさが現れている。6回には2つのフォアボールでピンチを招くも、デスパイネをタイミングを外したカーブで打ち取る。
7回を終わって、3-1で横浜リード。
そして8回裏も、今永がマウンドに上がる。初球、全くタイミングの合わない長谷川の空振りを見て、この回も抑えられるであろうという期待値が高まる。
しかし、ソフトバンク打線はやはり、そんなに甘くなかった。続く2球目をはじき返した長谷川の当たりは、フェンス直撃の2ベース。
ここで今永は降板。
ラミレス監督とすれば、2アウト・ランナー無しというところまで抑えれば、続く柳田まで今永を行かせたかもしれない(そこで、たとえホームランを打たれても、まだ1点差)。その意味では、両チームにとって非常に大きい長谷川の2ベースだった。
今永に代わってマウンドに上がったのは井納。代打・明石をセカンドゴロに打ち取るが、ランナーは三塁へ。すると、ラミレス監督は、また動く。柳田に対し、ピッチャー砂田。
ここで、この試合の勝敗を大きく左右するプレーが起こる。
外角への変化球を引っ張った柳田の打球は、砂田へのボテボテのピッチャーゴロ。ここで、長谷川の代走である三塁ランナー城所が、三本間に止まってしまう格好に。
しかし、砂田は、ボールを一塁に投げ、その間に城所のホーム生還を許してしまう。
スローで見ると、キャッチャー嶺井は一塁を指示しており、砂田はその指示に従っただけとも言える。
ただ、砂田がボールを捕った時、城所がサードベースからもホームベースからも離れた位置にいたことを考えると、まずは、走ってサード方向に城所を追い込み、挟殺プレーにもっていくのが定石だったと思われる。
緊張感のある場面での1球目だったこと、しかもどちらかというと想定外の打球だったこと、さらにはボテボテの当たり、且つバッターランナーが柳田ということで早い判断が求められる状況だったことなど、擁護しようと思えばできる要素もあるが、「こうしたところで最善の判断ができるようにならなければ、大舞台での勝利はつかめない」と言われているような、1プレーとなった。
続く今宮には、パットンを投入。砂田に続き、1球で打ち取り、1点リードのまま、試合は9回へ。
9回表、ソフトバンクは、ビハインドの場面であるものの、サファテが登板し、三者凡退に抑える。
そして9回裏。マウンドには当然、山﨑康。デスパイネのいやらしい当たりのショートゴロを倉本がアウトにし、まず1アウト。
ここで迎えたバッターは、内川。
このとき、中継を見ていて、「果たして内川は、ヒット狙いで来るのか、それとも思い切ってホームラン狙いでくるのか、どっちだろう」と考えていた。
ヒットで出て、中村晃、松田に後を託すという考えもある。ただ、相手のストッパーに対し、そうそう連打が出るものでもない。となると、ホームラン狙いのバッティングも……。
初球は、高めに外れたストレート。続く2球目のツーシームに対し、三塁線への緩いファール。そして3球目。内角低めへ落ちていくツーシーム、というよりシンカーをすくい上げるように打った内川の打球は、レフトのホームランテラス席へ飛び込んだ。
おそらく長打を狙っていたであろう内川。前のファールで、ある程度ツーシーム(シンカー)の軌道をイメージし、続くボールを見事にアジャストし、ホームランにしたその打撃技術は、飛んでもない高いレベルのところにある。
打たれた直後は、ツーシームの落ちの悪さが痛打を浴びた原因かと思ったが、改めて映像を見ると、内川の高い打撃技術に敗れた結果という認識に変わった。もし、この結果を防ぐとしたら、内角へのストレートを1球挟むか、シーズン中ほとんど投げないスライダーで目先を変えるぐらいしかなかったかもしれない。
それでも、その後のソフトバンクの攻撃は抑えた山﨑。
ただ、延長戦でのブルペン勝負となると、ソフトバンクが有利……かとも思われたが、実はソフトバンクも勝ちパターンの投手は使ってしまっていた。残るは、寺原と中田、そして第3戦での先発登板ではあまりよくなかった武田。
ここで、工藤監督が一つの賭けに出た。
「サファテの3イニング登板」。
2イニング目には、ノーアウト二塁のピンチを招いたサファテだったが、筒香、ロペスを連続三振。続く宮﨑を敬遠し、このシリーズ打率1割台の柴田を打ち取り、勝ち越しを許さず。
DeNAからすると、この場面で柴田に代打を出したいところだったが、その後の守備を考えたのか、ラミレス監督は代打策はとらず。内野陣のバックアップ選手の少なさを感じた瞬間でもあった。
来日初となる3イニング登板となったサファテだったが、11回表もDeNA打線をゼロに。
その裏、2イニング目となったエスコバーだったが、1アウトからストライクが全く入らず、一・二塁とサヨナラのピンチを迎える。
この間、代走で出た福田が盛んにエスコバーに揺さぶりをかけていたことを、試合後、工藤監督が評価をしていた。
ラミレス監督は、三上に投手をスイッチ。松田をサードゴロに打ち取るが、サードベースを踏んだ後、ファーストへの送球が逸れ、ゲッツー取れず。
このシリーズ、再三、ゴロに対するハンドリングの巧さを見せた宮﨑だったが、この大事な場面で痛い送球ミスをしてしまった。
そして、続く川島の当たりは、ライト前へのヒット。梶谷がバックホームをするも、送球はホームベース前の芝と土の境目で大きく跳ね、ランナー生還。
2017年の日本シリーズが終わった。
最後の場面だが、嶺井のポジショニングには、正直、疑問が残った。ホームの後ろにいたのは、果たして何か意図があってのことだったのか。もし、ホームの前で守っていたら、梶谷はより投げやすかったのではないか。試合終了直後、そんなことも頭に浮かんだが、そうした部分も含めて、チーム、そして個々がレベルアップしていくことが、この日本シリーズが横浜DeNAに出した、来季への宿題なのかもしれない。
○福岡ソフトバンク(4勝) 4-3 横浜DeNA(2勝)●
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
試合が終わった直後は、結構あっさりした感情だった。
しかし、日が経つにつれ、悔しさがわいてきた。
それは、日本シリーズで勝てなかった「悔しさ」というより、ペナントでの優勝、そして日本一になるには「まだ足りないものがある」という現実を突きつけられたことに対しての「悔しさ」とでも言おうか。
結局、この日本シリーズでは、あれだけの好投を見せた今永が投げた2試合で、2試合とも落としている。
今季のウイークポイントである、ブルペン陣の弱さが、最後、日本シリーズでも大きな敗因となったと言えるだろう。
キャッチャーのキャッチング、自身の右側へのゴロに対するセカンド柴田の処理など、守備面での課題を感じる場面も多かった。
シリーズ前、ラミレス監督にキーマンとして名前を挙げられた桑原は、2得点、10三振と、一番としての働きはほぼ出来ずじまいで終わった。
その一方で、その実力の高さを改めて証明したり、大舞台の戦いのなかで、その存在を印象付けた選手もいた。
打率.400、出塁率.520、2本塁打・5打点という成績を残した宮﨑は、その筆頭だろう。
また、今永・濵口の快投は、他球団のファンにも、少なからずインパクトを残したのではないか。
そして何より、このシリーズで印象に残ったのは、3連敗を喫したときも、チームに悲壮感が感じられなかったこと。もちろん、勝敗の点では追い詰められてはいたが、いつもとコメントが変わらない筒香も含め、過度の「まずい、どうしよう」といった雰囲気は感じられなかった(ただ、桑原は、かなりの責任を感じていたかもしれないが)。
それを、よい傾向ととるのか、それともあまりよくない傾向ととるのかは、人によって違うだろうが、自分は前者の見方をしている。
何より、チームをまとめるラミレス監督が、これはシーズン中もそうだが、負けが続いたときも、泰然自若としていることは、チームにとって、かなりプラスの効果をもたらしているように見える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
3月から始まり、横浜DeNAにとって、近年にない、長いシーズンが終わった。
シーズンが終わって、選手たちの胸に去来したのは、「充実感」だったのか。それとも、「悔しさ」だったのか。それとも、新たな目標を見つけることができた「嬉しさ」だったのか……。
いずれにせよ、日本シリーズで感じた「悔しさ」は、日本シリーズでしか晴らせない。
3位に終わったペナントの現状認識と、優勝に向かって足りないものを埋めていく作業も必要になってくるだろう。
シリーズが終わって間もない今は、「悔しさ」も、ある程度持続していく。ただ、その悔しさを、1年間持続させ、さらにそれを、自身の力に転化させることは、そうそう簡単なことではない。
CS終了後、「『シーズンをどのように終わらせるか』が大切」と言っていた、ラミレス監督。
2018年シーズン、横浜DeNAファンは、どのようなフィナーレを見ることができるだろうか。



























