ゴロフキン vs カネロ、”Superfly” 雑感
2017年 09月 22日
そのなかから、先日9月16日のGGG vs カネロ、そしてスーパーフライ級の強豪が終結した9月9日の試合を振り返ってみたいと思う。
●WBA・WBC・IBF世界ミドル級(~72.57kg)タイトルマッチマッチ
ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)vs サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
ゴロフキン、37戦37勝(33KO)。アルバレス、51戦49勝(34KO)1敗1分け。
戦績的にも、内容的にも、傑出したボクサー二人の対戦。
ここ数年のボクシング界で考え得る最高のカードが遂に実現した。
アルバレス陣営が対戦を先延ばししていた感もあったが、ファンが希望する強豪同士の対戦が実現しない、あるいは旬を過ぎてからの実現ということも多いなか、まずは、このメガファイトが実現したこと自体に大きな意味があったと思う。
試合は、序盤から双方、その攻撃力を見せつける一方で、お互いの強烈なパンチをまともには喰わない防御勘の良さも発揮する展開となる。
序盤は、ほぼ互角。しかし中盤を過ぎたあたりから、ゴロフキンの圧力にアルバレスが後退する時間帯が増える。致命的なパンチこそ喰わないものの、試合を支配しているのは明らかにゴロフキン、というラウンドが続く。
試合が終盤に入り、勝つにはもうKOしかないと思われるカネロも反撃に出るが、ゴロフキンを倒すまでの可能性は感じられず、12ラウンド終了のゴングを聞いた。
個人的な採点では、中継の解説を務めていた浜田剛史氏の解説とほぼ同じポイントの振り分けで、ゴロフキンの6ポイントリード(序盤はどちらにつけるか迷うラウンドも多かったが)。
ただ、試合終了後、観客に自分の優勢をアピールするカネロの姿を見て、一抹の不安がよぎった。
はからずも、リングアナのマイケル・バッファー氏が読み上げた、1人目の採点は、118-110でカネロ。
「また、こうしたことが繰り返されるのか…」という思いのなか、2人目の採点は、115-113でゴロフキン。これで、1対1。
そして、勝負を決める3人目の採点は、「114-114」。
まるで、最初から取り決めがしてあったかのような三者三様の採点により、この数年でボクシングファンが最も期待したカードは、「最悪の判定」での引き分けとなった。
この試合については色々な見方があるだろうが、こうした判定が出たということは、結果的に、ゴロフキンはKOで勝つ以外、勝利を得られなかったということになる。
試合後、カネロが勝利しなかった場合の再戦契約オプションがあるとの報もあった。
ボクシングファン垂涎のカードも、結局のところ、ボクシング界では既成事実化している「リマッチありきの1戦目」に成り下がってしまった。
試合自体、相当にエキサイトした内容だっただけに、この結果には失望せざるを得ない。
こうした判定は昔からあったと言うボクシングファンもいるだろう。
ただ、今回のようなことを繰り返せば、ボクシングというスポーツ自体が、「一番強いヤツを決める」ところからますます離れていく。そんなスポーツが、今後もファンの支持を受け続けることができるだろうか。
その判定が、たとえボクシング界の“慣習”だったとしても、あまりにも残念な結末だった。
●WBC世界スーパーフライ級(~52.16kg)タイトルマッチ
シーサケット・ソールンビサイ(タイ)vs ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)
●WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ
井上尚弥(日本)vs アントニオ・ニエベス(アメリカ)
●WBC世界スーパーフライ級挑戦者決定戦
ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)vs カルロス・クアドラス(メキシコ)
スーパーフライ級の王者・強豪が一同に集結し、“Superfly”と銘打たれ、アメリカ・カリフォルニアで行われた興行。
この3戦のなかで最もエキサイトな戦いとなったのは、エストラーダvsクアドラスだろう。
序盤は、スピードあるボクシングでラウンドを獲って行くクアドラス。しかし、中盤以降、エストラーダも徐々に攻勢を強め、息もつかせぬパンチの応酬が続く。
試合が大きく変化を見せたのは10ラウンド。エストラーダの右ストレートがクアドラスの顎を打ち抜き、クアドラス、ダウン。一気にエストラーダが行くかと思ったが、クアドラスも反撃を見せ、その後も両者の打ち合いは最終ラウンドまで続いた。
非常に判定の難しい試合となったが、勝者として読み上げられた名は、クアドラス。クアドラスのややミドルレンジからのパンチにポイントが流れたのか、と思っていたが、なんと、それから間もなく、判定に誤りがあったということで、勝者はエストラーダと真逆の結果に。
原因はリングアナのマイケル・バッファー氏の読み間違いとのことだったが、とにもかくにも、エストラーダがスーパーフライ級でのサバイバルマッチに勝利した。
続く一戦は、日本のボクシングファンが待ちに待った、そして、何より井上本人が心から待望していたであろう、井上尚弥のアメリカデビュー戦。
試合は、井上にさほどの堅さも見られず、3R以降は相手を圧倒。そして、5Rに左ボディで遂にダウンを奪う。
最終的に、6回終了時、相手陣営が棄権を申し出てのTKOという結末には物足りなさは感じたものの、まずは、アメリカデビュー戦で、拳の怪我や足の痙攣といったアクシデントもなく快勝したことで、アメリカへの本格的進出の足掛かりをつかんだと言っていいだろう。
そして、メインの、シーサケットvsロマゴン。
1R、これまでの試合であれだけ見られた、ロマゴンのパンチの回転力、そしてスピードを全く感じとることができなかった。
調子の良しあしはさておき、スーパーフライ級でのロマゴンにかつての輝きを見ることはできないという事実を受け入れざるを得なくなった4R、シーサケットの右フックがロマゴンを打ち抜く。壮絶なダウンから立ち上がったロマゴンが、その数十秒後、ほぼ同じ光景でリングに大の字になったところで試合は終わった。
シーサケットの判定勝利となったものの、ロマゴン優勢の声も多かった1戦目のリマッチとなったこの試合だったが、結果は「完全決着」。
すべてにおいて完璧と思われたロマゴンでも、4階級目ともなると、階級の壁に阻まれる形となった。
2008年、鉈と鞭の両方を併せ持ったような強烈な破壊力で、新井田豊からミニマム級の世界タイトルを獲ってから9年。
軽量級ながら、パウンド・フォー・パウンド1位まで上り詰めた“怪物”王者は、自身のボクシング人生において、どういう決断を下すのだろうか。
さて、日本のボクシングファンとすると、気になるのは、井上尚弥の次戦以降のマッチメイク。
標的としていたロマゴンとの対戦は、ロマゴンの連敗で残念ながら遠のいた。
陣営は当初、IBFの同級世界王者、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との対戦を計画していたとのことだが、アンカハスが11月に防衛戦があるとのことで、次戦での対戦は消滅。
順当に行けば次戦はシーサケットvsエストラーダとなることを考えると、スーパーフライ級での次戦のベストな対戦相手は、クアドラスではないか。
敗れはしたものの、ロマゴンとの一戦、そして今回のエストラーダ戦と、その高い実力は見せつけたクアドラス。
アメリカでのリング経験がある選手ということを考えても、もしアメリカでのクアドラス戦が実現すれば、井上の今後にとって、また一つ大きな階段を昇るチャンスにもなる(実際、Superfly第二弾として、シーサケットvsエストラーダと同興行で行う形もありだと思うが)。
陣営としては、日本での試合とアメリカでの試合を混ぜていくという計画のようだが、ロマゴン戦が実現せずに終わりそうだという前例を考えても、チャンスがあるうちに、開催場所にとらわれず、強豪との対戦を積極的に重ねていくべきだと思う。
転級が噂されるバンタム級には、現時点では、ビッグネームはおらず。
減量の厳しさはあるだろうが、できれば、スーパーフライ級で、あと2戦、強豪と拳を交える機会が欲しい。
井上が目指すのは、敗北をおそれチャレンジしないボクサー人生ではなく、敗北の可能性も覚悟して、さらなる高みをめざすボクサー人生であるはずだから。



























