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ドラマティックすぎる結末 -2017全豪オープンテニス-

ロジャー・フェデラー vs ラファエル・ナダル。グランドスラム優勝回数歴代1位と2位の2人の対戦は、一方で、それぞれ5年ぶり3年ぶりとなるグランドスラム優勝を賭けた戦いでもあった。

2016年、7月以降のすべての大会を欠場したフェデラーと、同じくウィンブルドンの欠場含め、たびたび戦列を離れたナダルとの間で、決勝が戦われることになるとは、ほとんどのテニスファンは思っていなかったに違いない。
フェデラー・第17シード、ナダル・第9シードというドロー表が、大会前の両者の立ち位置を物語っていた。

しかし、決勝まで勝ち上がってきた両者のテニスは、「優勝を争う」にふさわしいものだった。

1回戦では、1セット落とすなど、時折、ブランクを感じさせるプレーを垣間見せたフェデラーだったが、2回戦、3回戦は危なげなく勝利。
迎えた、第5シード錦織との4回戦。第1セットの序盤は、フェデラーらしくないミスを連発する場面もあったが、第2セットからは、錦織のリターンに入る動きを察知してから打っているのではと思うほど、サービスエースを量産。グランドスラム初優勝を狙う錦織を、「力」で退けた。続く準々決勝でも、第10シードのベルディヒを、難なく退ける。
そしてワウリンカとの準決勝。第1セット、第2セットを、ある種の「格」を見せつける形で連取。ワウリンカが故障を発生させたことで難なくとるかと思った第3セット・第4セットでは、逆にフェデラー自身のプレーも軽くなってしまったことで「あわや」という状況に追い込まれたが、第5セットでは再び持ち直し、スイス対決を制す。

一方のナダルは、4回戦で第6シードのモンフィス、そして準々決勝で第3シードのラオニッチを撃破。そして迎えた、ディミトロフとの準決勝は、試合時間5時間に迫る壮絶な戦いに。第3セットの途中から第4セット、そして第5セットも終盤まで、お互い再三のプレイクのピンチを凌ぎ切り、タイブレイクを除くと、なんとキープが26ゲーム連続で続く展開。迎えた第5セットの第8ゲーム、ダブルのブレイクのピンチを迎えたナダルだったが、ここを驚異の粘りで凌ぎ切る。押していたのは完全にディミトロフだったが、ここで4ポイントを連取したところに、ナダルの底力を見た。この勢いに押されたか、続く第9ゲームでサービスゲームを落としたディミトロフを、最後、振り切り、決勝にコマを進める。

その両者の決勝は、決して、組み合わせに恵まれて勝ち上がったのではなく、両者が実力で、ここまで勝ち上がってきたことを、改めて示す戦いとなった。
フェデラーの、恐ろしほどキレ味の鋭い片手バックハンドのクロス。センターへの正確無比なサーブ。通常では考えれないほどの超低空ライジングショット。
ナダルの、どれだけ重いのだろうというヘビートップスピン。どんなボールでも返して来るコートカバーリングの広さ。サイドラインの外からグーッと曲がってくる、ライン際へのショット。
通算の対戦成績では、23勝11敗とリードしていたナダルが有利ではないかという予想もあったが、両者が、それぞれの持ち味、そしてこれまで長きにわたって、トッププレーヤーとして君臨してきた理由を存分に見せてくれた、「至高」といってもいい戦いとなった。
両者が2セットずつ取って迎えた第5セットの第1ゲーム。ここで、フェデラーがサービスゲームを落としたときは、「やはり、相性を考えると、ナダルなのか」とも思った。第2ゲーム、第4ゲームと、フェデラーがブレイクチャンスを迎えるが、いずれもナダルがはねのけ、試合は「ナダル優勝」へのカウントダウンを進めているようにも見えた。
しかし、第6ゲーム、再三のブレイクのチャンスを逃し続けてきたフェデラーが、ついにブレイクバックを果たす。ここで、場内の盛り上がりは最高潮に。会場の空気が、完全にフェデラーを後押ししている感もあった。続く第7ゲームをラブゲームでキープすると、さらに続く第8ゲームで、再びナダルのサービスゲームをブレイクするチャンスをつかんだフェデラー。しかし、ナダルも、そう易々とはブレイクさせない。いつ終わるともしれないデュースの連続が続いたのち、このゲームを制したのはフェデラーだった。
そして、サービングフォーザマッチで迎えた第9ゲーム。サイドラインぎりぎりに打ち込まれたショットが、チャレンジの末「IN」と判定された瞬間、フェデラーの、2012年ウィンブルドン以来となるグランドスラム優勝が決まった。

試合後、フェデラーのスピーチで印象に残った一節があった。

テニスは、辛いスポーツだ。テニスには引き分けが無い

もちろん、これは多くの個人競技に共通することではあるのだが、テニスは、はっきりとした数字に基づくランキングが確立されている競技だけに、とみに、「勝ち」「負け」の差が、その選手のキャリアを如実に左右する。
そして、グランドスラムのタイトルは、5セットマッチ、そしてそれを7回勝たなければ手に入れられないものでもある。
17度目のタイトルから5年を経て、18度目のタイトルをフェデラーの心中には、どんな思いが去来したのだろうか。

2017年のテニスの幕開けは、フェデラーvsナダルという、予想もつかない、しかし、予想外の事態としては、考え得るなかでもっとも嬉しいトピックで始まった。
マレー、ジョコビッチの2強、特に、ジョコビッチに関しては、昨シーズン中盤から、時折、綻びも垣間見られる。一方で、今大会、強烈なインパクトを残した、ディミトロフのような存在もいる。
果たして、2017年のテニス界は、どのような川の流れを見ることになるのだろうか。


by momiageyokohama | 2017-01-31 01:43 | テニス | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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