人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日本シリーズ2016 総括 -戦いが終わり、感じたこと-

日本シリーズが終わりました。

プロ野球史上稀にみる”怪物”選手になりつつある大谷を擁する、日本ハム。そして、25年ぶりのリーグ優勝に沸き立つ広島、さらには日本シリーズで現役を終えるという引き際を見せる黒田と、トピックが多いこともあり、例年になく、シリーズ前から高揚するものがあった、今年の日本シリーズ。

いざ本番が始まっても、マツダスタジアムの赤一色の応援、そして3・4・5戦と、立て続けに痺れる試合が続いたこともあり、例年になく盛り上がった日本シリーズでした。
視聴率も、総じて15%を超え(関東地区)、第6戦は、関東で25.1%、関西で26.7%と、おそらく日頃野球中継を観ない人も関心を持ってくれたことが、野球ファンとして何よりうれしいシリーズでもありました。
ニッポン放送の中継で田尾安志氏も言っていましたが、巨人が絡んでいないシリーズで、これだけの人が観てくれたというのは、野球界にとっては明るい要素。
ただし、昨年(ソフトバンクvsヤクルト)・一昨年(ソフトバンクvs阪神)は、平均で10~12%だったことを考えると、これをイコール野球人気ととらえるのは早計でしょう。特定の選手の人気に頼らなくても注目を集めてもらえるような、”プロ野球”の広報の仕方が、野球界にとっては、今後、より大切になってくるだろうと思います(そのためにも、クライマックスシリーズの地上波中継(巨人が絡まなくても)を実現させることは必須だと思いますが)。

さて、試合自体に目を移すと、結果的には、日本ハムから見ると●●○○○○という勝敗となった、今シリーズ。
ただし、第1戦・第2戦は、広島が快勝、第3~5戦、また第6戦も、広島にも十分勝機があったので、どちらに転んでもおかしくなかったシリーズと言えると思います。
何といっても、一つ潮目が変わったのは、第3戦8回裏中田のレフト前へのライナー性の飛球を、松山があとわずかで捕れなかったプレー
ただ、前進守備ではなかったこと、また松山の足を考えると、捕れなかったのは致し方なかったか。
もし、赤松か野間に代えていれば、という意見もありますが、延長に入ったときのことを考えると、これを緒方監督の采配ミスとするのは、ちょっと酷な気もします(しかも、日本シリーズの延長は15回まである)。
それでも、このプレーが、シリーズの流れを変えたことは間違いないでしょう。

そしてもう一つ、シリーズの勝敗の命運を分けたのが、第5戦、2回を持たず、加藤が降板したところで、広島が畳みかけられなかった場面。
もちろんメンドーサの好リリーフは称えられるべき(しかも、その後、5 2/3イニングを無失点に抑えた)ですが、菊池・丸と続く打順だっただけに、そして、この試合、ジョンソンvs加藤という、広島としては、先発投手の組み合わせからして絶対負けてはいけなかった試合だっただけに、序盤で試合を決めるような展開に持っていけなかったのは、何とも痛かったところです。

裏を返せば、加藤をスパッと変えた栗山監督の采配が功を奏した(CSのソフトバンク戦でも、初回で加藤を代えていますが)とも言えるでしょう。
その加藤の代え時含め、DHが使えないマツダスタジアムでのスタメン、陽岱鋼の不調、そして、マーティンがおらず、吉川も戦力としてあまり当てにできない中での8回・9回のマネジメント、そして大谷の起用法、と栗山監督にとっては、本当に様々なところに考えをめぐらせなければならない日本シリーズだったと思います。
勝った4試合の終盤の継投は、宮西→谷元→バースバース→宮西→谷元、(メンドーサ)→谷元→バース井口→谷元→バース、とほぼ全試合、違うパターン。これだけ明らかな抑え不在で日本シリーズに臨んだチームも珍しく(2013年の楽天も、抑えが不安ということで、則本・田中がリリーフ登板をしましたが)、それでも、試合終盤、なんとか凌ぎ切ったのは、栗山監督と投手コーチ陣のマネジメント、そしてシーズンと変わらず、どんな場面での登板も厭わない谷元と、この時期に来て絶好調となったバースの奮投が大きいでしょう。

かたや、広島は、シーズン中は好調だったブルペン陣が、日本ハム打線を抑えきれず、それがシリーズの敗戦につながってしまいました。
そして、第3・5・6戦のジャクソン、第3戦の大瀬良、第5戦の中崎と、すべてフォアボールのランナーが決勝点につながったというところに、日本シリーズにおける試合終盤での「一人のランナーの大事さ」というものが見て取れます。
ただし、これは広島だけ、というわけではないですが、審判の判定が厳しかったというところも、一つの要因という気も。この傾向は、クライマックスシリーズから見て取れましたが、試合の意味合いが大きいせいか、全体的に、審判のストライクボールの判定が投手に厳しかった感はあります。

さて、一方の広島の打線ですが、シリーズ通してのチーム打率は.223と、日本ハムの.228とほとんど変わらないものの、勝負所の第3~5戦で湿ってしまった感がありました。また、初戦の大谷相手に松山を四番にしたのは、シーズンと同じ戦い方(藤浪など速球投手などに対しては、コンディションなども考えて、あえて新井を下げる方策)だったとしても、他の試合でも、あまり新井を固定して使わなかったことで、シーズン中のいい打線の流れを消してしまったようにも思います(ルナの負傷という要素もありましたが)。
その他、ヘーゲンズの存在を生かしきれなかった投手起用など、緒方監督の采配が、日本シリーズという短期決戦に対応しきれなかった感はありました。

ただし、緒方監督にとっては、初采配であった今回のシリーズ。
思えば、就任1年目の昨年も、ペナントにおいて、ややワンパターンのきらいがある采配もあって、優勝も狙えるとの前評判のなか、4位に終わりました。
そこから、緒方監督自身も大きく考え方を変えて臨んだ2年目で、25年ぶりのチーム優勝
正直、緒方監督という人は、不器用な人なんだと思います(就任の記者会見の様子からも、一つ道を決めたら、まずそれを突き進むタイプのように見えました)。
失敗を許せないファンの人にとっては耐えるのが難しいかもしれませんが、失敗を重ねて学び取っていくタイプの人ではないか。去年と今季の采配を見て、そんなことを感じます。
今シリーズでは、短期決戦の難しさを誰よりも感じたであろう、緒方監督。
選手・コーチともども、今シリーズの経験を、どう来季に生かしていくのか。その思いの度合いが、来季のセ・リーグの様相に大きく影響してくると思いますし、さらには、リーグのレベルを上げられるかどうかにもつながっていくように思います。

さて、話をもう一度、日本ハムに戻します。
2006年、ヒルマン監督のもとで日本ハムが日本一になってから昨年までの9年間の日本シリーズ。実は、パ・リーグで負けているのは、日本ハムだけでした。2007年(対中日)、2009年(対巨人)、そして栗山監督就任1年目の2012年(対巨人)。
今回、10年ぶりとなる日本一を果たしたことで、栗山監督の手腕に対する評価は、さらに上がることになると思いますが、栗山監督というと、現役時代、忘れられないプレーが一つあります。

1990年、巨人vsヤクルトの開幕戦。
9回裏、篠塚が内藤から打った“疑惑”のホームランで知られるこの試合。
実はこのシーンの後、巨人は2アウト二・三塁と、サヨナラのチャンスを迎えます。
ここで登場してきた代打は、鳴り物入りで入団したドラフト1位ルーキー・大森剛。そして、その大森が捉えた打球は、ぐんぐん左中間へ。
誰もが「サヨナラだ!」と思ったそのとき、猛然とダッシュしてきた外野手がダイビング。ボールは、地面に落ちる前に、そのグローブの中に吸い込まれました。
球場のムードが、完全にサヨナラムード一色という状況下でのスーパープレー。
このプレーを見せたのが、そう、当時の栗山英樹”選手”です。

この時の栗山選手がおかれた状況は、正直、”崖っぷち”といってもいい状況でした。
前年、6年目で初の規定打席に到達したものの、この年から就任した野村監督は、それまでほとんど一軍実績のなかった柳田を、その足と守備力に目をつけ、レギュラーとして開幕戦のスタメンに抜擢。前年のレギュラーから突如押し出される格好となった栗山は、9回裏、守備固めとしてようやく出場のチャンスが巡ってきます(荒井幸雄と交代)。そこで出たのが、前述のビッグプレーでした。
栗山選手に関しては、当時、現役選手として出したも読んだのですが、いろいろな意味で絶体絶命の状況下でのスーパープレーに、「『意地』がユニフォームを着て野球をしているような選手」だと思った記憶があります。

現役を引退した後も、見かけ上の爽やかさとは裏腹に、キャスター時代、そして監督になってからも、その根底に流れる「意地」というものは変わらないのではと思います。それは、大谷の”二刀流”しかり、日本ハムというチームをさらに強いチームにしていくことについてもしかり。
ただし、その「意地」を、ただ自分の主張をやみくもに押し通すというわけではなく、どうしたら、その「意地」を、他の人に納得してもらえるような形で提示できるか。そのことに絶えず腐心している……。今日、「報道ステーション」に出演していた際のコメントなどを聞いても、そのことをひしひしと感じました(監督就任前だったか、「スポーツキャスター時代、『選手としての実績のない自分の言葉を、どうしたら、人が聞いてくれるのか』を必死に考えた」という栗山氏自身のコメントも見たことがあります)。

意地」と「腐心」。
ちょっと野球の本筋から離れてしまうかもしれませんが、戦いが終わって心に残ったのは、この2つのワードでした。


Commented by 粗忽庵 at 2016-11-01 12:11 x
今回の栗山采配を見て、自分の状況を客観的に判断出来る人という印象を持ちました。逆に緒方監督は7回今村8回ジャクソンというシーズン中の「勝ちパターン」に拘り過ぎちゃいましたね。
Commented by momiageyokohama at 2016-11-01 23:10
>粗忽庵さん
確かに、今回の継投や戦い方を見ていると、チームの現状を過信もせず、かといって悲観的過ぎもせず、という面はありますね。中西太氏に、三原監督のノートを見せてもらっているという話もありますし、監督としての心構え含め、表には見えないところで相当勉強している人なのかもしれません。
緒方監督は、頑固一徹的な性格が今シリーズでは裏目に出た感はありますが、ペナント同様、失敗したことを生かして、次回の挑戦では、また違う采配を見せてほしいところです。
by momiageyokohama | 2016-11-01 02:12 | 北海道日本ハム | Comments(2)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31