人気ブログランキング | 話題のタグを見る

広島の「成長」を感じた1シーン

先週末、広島東洋カープが、25年ぶりのリーグ優勝を果たしました。

自分のように、1970年代中盤生まれぐらいの世代だと、80年代から90年代前半にかけての、広島が「強かった」時代も知っているので、総体的に広島に弱いというイメージは持っていないのですが、この20年ほどは確かに弱かった…。
雑誌「野球小僧」で、「プロ野球10強2弱時代」なんて特集が組まれたこともありました(もう1弱は、当然、わが横浜…)。

しかし、野村謙二郎監督4年目となる2013年、16年ぶりのAクラスに入り、2弱から脱却。
ただ、前田健太が残留し、さらに黒田も加入ということで、優勝も期待された昨年(2015年)は、69勝71敗と勝ち越しすらできず、最終戦でAクラスも逃しました。

今年は前田健太が抜け、昨年に比べると、さほど期待感も大きくなかった開幕前。しかし、優勝を決めた9月9日時点での成績は、82勝47敗2分け。2位の巨人に15ゲーム差をつけるという、文字通りぶっちぎりの優勝でした。

これだけ圧倒的に勝ちまくったシーズンですから、その強さの要因を探せば、たくさんあります。

個人的に一番に上げたいのは、チーム全体を通じての打撃力の底上げです。
昨年のデータと比べてみると、一目瞭然。

〔2015年〕 打率.246 105本塁打 506得点 80盗塁
〔2016年〕 打率.275 144本塁打 640得点 113盗塁 (9月10日現在)

一年で、チーム打率が3分上がるというのは、通常ではまず考えられないことです。

前回の記事でも少し触れましたが、その要因は、石井琢朗コーチの、守備走塁コーチから打撃コーチへの配置転換といっていいでしょう。
サードコーチャーとしてコーチャーボックスに立っていた昨年は、正直、本塁への突入の判断で失敗に終わるケースも結構見受けられました。そうしたなかでの、昨オフの、打撃コーチ就任。まさか、これほどの結果をもたらすとは思いませんでした。

なお、『たまっち』(中居正広が司会を務める、フジテレビの深夜に超不定期(^^)で放送されている野球番組)で、打撃コーチとして心がけたこととして、石井コーチは下記の2点を挙げていました。

1.「守備目線」で打撃を考える(おそらく「守っている側からの視点」という意)
2. 打てるボールを確実に打てる技術を身につける

1に関しては、企業秘密的なこともあるのか、オンエアではあまり詳しい話にまではなりませんでしたが、石井「らしい」と言えば「らしい」視点。
一方の2の方は、「どんなボールでも打てる」ことがバッティング技術というわけではない、まずは狙ったボールをいかに確実に仕留められるかが大事だということを話していました。
『クローズアップ現代』のカープ特集では、練習量を増やしたことや、トスバッティングで打つボールに文字を書いてそれを読ませるという練習などが取り上げられていましたが、とにかく、「打撃における確実性を高める」ことに対して、有用だと思われるアプローチを次々にしていったことが、今年の結果を生んだように思います。

また、選手ということでいうと、やはり、新井の「復活」(というより、過去最高に近い成績を挙げていることを考えると「再生」といった方がいいようにも思いますが)が大きかったと思います。
なお、新井のバッティングですが、阪神最終年の2014年時のバッティングは決して悪くなかったように思います。ただ、同じポジションを守るゴメスが加入したこともあり、出場試合は140→94と激減してしまいました。
そして8年ぶりの広島復帰を果たした昨年。シーズン前の予想に反し、4月中旬から8月まで、ほぼ四番を張り続ける活躍を見せましたが、成績自体は、打率.275・7本塁打・57打点という数字。チーム事情として四番を打つ人がいないことでの「四番」とも言えました。また、前年、大きく試合出場を減らしたこともあり、一年を通してのシーズン体力も落ちていたのではと思います。
そして、迎えた今年。40歳に手が届く年になって、打点王も獲ろうかという打ちっぷり。夏場に入ってからも印象的な活躍を見せていますし、以前は空振りするケースが多かった落ちるボールを、拾い打ちのような形で逆に長打にしてしまう場面も多く目にします。
「べテランになっても上手くなれる」という姿は、同年代としても勇気をもらえるものがあります。

そして、もう一人、鈴木誠也
昨年の最終戦、CSがかかった大事な試合で五番を任されたときは、ある意味、打てないチーム状況の象徴としての「五番起用」だと感じました(将来を嘱望されている選手だったとはいえ、昨年の成績は、出場97試合、打率.275、5本塁打)。
今季も、シーズン当初は怪我で出遅れ出場できず。「一軍の主力になるには、まだ時間がかかるか」と思われましたが、6月16・17・18日のオリックス戦で、3試合連続決勝弾(うち、2本はサヨナラ弾)と、まさに「神がかってる」(←あえて、略さずに(^^))活躍。
以降、スタメンを張り続け、9月11日時点での成績は、打率.333、26本塁打、88打点。昨年、野間とポジションを争っていたのが遥か昔のように感じるほど、激変の活躍ぶりです。

昨年、広島戦の中継で解説をしていた衣笠氏に対して、実況アナが、広島打線の不振を菊池・丸の成績が上がらないことに求めたことがありました。しかし、そこで衣笠氏は「菊池・丸といった一・二番を打つ選手に打線が頼るようではダメ(昨年は6月以降、丸・菊池が一・二番を組むケースが多かった)。やはり主軸を打つ選手がしっかり決まらなければ」と指摘していました。長年主軸を打ってきた衣笠氏だからこその見方かもしれませんが、確かに、一・二番が塁に出るだけでは勝てない。それを返すバッターが一年通して活躍したということが、菊池・丸の大幅成績アップとも相まって、これだけの独走劇を生んだと言えるでしょう。

そして、忘れていけないのは、緒方監督の「2年目」の采配。
正直、監督就任1年目となった2015年は、投手継投をはじめ、選手起用に悩む姿が目につきました。その采配に疑問を呈する広島ファンも少なくなくありませんでした(野間の起用を「偏重起用」とする声なども多かった)。他球団のファンからすると「そこまで責めなくても」と思うところもありましたが、確かに、采配で落とした試合も多かったと思います(何よりストッパーの安定度が低かったという問題もありましたが)。
しかし、コーチを5年間務めてきたとはいっても、投手のことに関しては経験1年目。その采配が軌道に乗るまで時間がかかるのは仕方がなかったと思います(どちらかというと、練習量や根性、身体能力の高さといったところで選手生活を歩んできたイメージがある野球人だけに、尚更)。
今季は、次から次へ妙手を打つといったような派手な采配ではないものの、リードに一日の長のある石原のスタメン戻し、田中の一番固定、ヘーゲンズのシーズン途中での配置転換など、勝利を取るための最善策を意識した起用が目につきました。
日刊スポーツでは「根性論捨て選手目線に」といった記事が出ていましたが、今季、緒方監督が「変わった」というところも、優勝の要因の一つだといってもいいかもしれません。

さて、ここまで触れてきませんでしたが、ここでようやくタイトルで挙げた「広島の『成長』を感じた1シーン」について。
6月中旬以降、ほぼ独走状態となった広島でしたが、8月23~25日、「最後の天王山」と言ってもいい、東京ドームでの対巨人3連戦がありました。
その初戦は、両チームの先発、ジョンソン、マイコラスの好投もあり、なかなか点が入らない展開。マイコラスは7回で降板し、8回からはマシソンが登板。そのマシソンから、広島は8回・9回とチャンスを作りますが、あと1本が出ず、無得点。
迎えた9回裏。この回もマウンドに立ち続けるジョンソンが、1アウト二塁、一打サヨナラのピンチを迎えます。ここで、3番・坂本は敬遠し、一・二塁。さらに、続く阿部に、ライト前にヒットを打たれ(セカンドランナーは三塁でストップ)、一死満塁の大ピンチ。
そして迎えるバッターは村田。

1球目、内角低めのカットボールがボールになり、1ボール。
2球目、内角低めのカットボールを村田が空振りし、1ボール1ストライク。
3球目、内角低めのストレートがボールとなり、2ボール1ストライク。
4球目、内角高めのカットボールがストライクとなり、カウントは2ボール2ストライクに。

ここまで、コースはすべて内角。
左投手のジョンソンが右打者の内角にクロスファイヤーで投げてくる角度を利用しての配球だったと思いますが、おそらく、外角に投げたボールを合わされて犠牲フライというリスクを避けたところもあるでしょう。内角4球を使って、ひとまずバッターを追い込みました。
ただし、塁が詰まっているものの、カウント的に、ボールゾーンに落ちる球を要求して、もし見送られたらフルカウントになってしまう場面。
キャッチャーの石原が要求したボールは、ストライクゾーンから1球分内角のボールゾーンに外したストレートでした(高さは真ん中)。
もし見送られたら、その次のボールで押し出しの危険性もある配球。
しかし、「その構えからおそらく追っつけに入っていると読み取れる村田は、ボール球でも確実に手を出してくる」。そう踏んでの、石原のリードだと思いました。
そして、その狙い通り、内角のボール球のストレートに手を出した村田の打球は、詰まったセカンドゴロ。4-6-3とボールがわたり、ゲッツー。見事にサヨナラのピンチを凌ぎました。

この試合は結局、次の10回裏、代わったジャクソンが脇谷にサヨナラホームランを打たれて負けてしまうのですが、この9回裏の配球に、今年の広島の強さを観た気がしました(もちろん、そこに投げ切れるジョンソンのコントロールの良さという要因も大きいのですが)。

思えば、「2弱」時代の広島は、同じく「2弱」の横浜ファンから見ても、他の球団とは違って「もしかしてミスしてくれるかも…」と思うような球団でした。目に見えるエラーなどもそうですが、他球団との違いは、キャッチャーのリードにもありました。
古田がレギュラーを張っていた時代のヤクルト、また中日に移籍後の谷繁などは、明らかに横浜のバッターの打てないコースを掴んでおり、そのとおりに配球し、そのとおりに打ち取っていきました。
一方、石原をはじめとした広島のキャッチャー陣は、相手からすると「助かった」と思えるリードをすることが間々ありました。
せっかく追い込んでいるのに、そこから、見え見えの外角ボールゾーンへのスライダーを連発し、カウントを悪くして、苦し紛れのストレートを打たれる。逆に、明らかに合っていないボールを投げずに、「それだったら打てるかも」とうボールを勝負球に選択して痛打を浴びる。そうしたシーンを見て、チームの強さの差は、キャッチャーの差だということを感じました。
しかし、この天王山の大ピンチの場面での石原のリードは、「優勝するチームにふさわしいチーム」のキャッチャーのリードでした。
(なお、さきの『クローズアップ現代』では、今季の広島は、内角投球割合が12球団一(32%)だというデータも紹介されていました)

結局、初戦こそ落とした広島ですが、2戦目は、菅野を攻略し、マジックが点灯。3戦目は、0-4の展開から、6回から8回まで1点ずつ返し、9回表に3点を奪っての逆転勝ちと、今季を象徴するような試合を見せ、優勝へと突き進んでいきます。

こうした要因を見ていくと、結果、「勝ちに、不思議の勝ち無し」とでも言うべき、今季のリーグ戦での広島の戦いだったと言えるかもしれません。


by momiageyokohama | 2016-09-13 01:37 | 広島カープ | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30