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プロ野球選手の「リアル」をどう捉えるか

開幕直前になって、各球団の金銭授受問題が報道されたプロ野球だったが、先週、ひとまず予定通り、開幕した。

各球団、新たな顔ぶれが目立つ、今シーズン。
どのチームもいいスタートを切りたいと思っているだけに、1プレーの重み、そして、一つの采配の重みを感じる、開幕3試合だった。

そんな開幕を目前に控えた先週初め、1冊の野球本が刊行された。

タイトルは、『永谷脩の仕事 -プロ野球ベストセレクション 珠玉の53篇-』。

一昨年6月に亡くなったスポーツライター永谷脩氏の、Numberでの膨大な記事を厳選した一冊である。
江川、江夏、清原、落合、野村監督といったビッグネームから、まだ記憶に新しい楽天優勝の裏側にあった人間模様まで。
トータル500頁超というボリューム(しかも、縦2段組み)に、ぎっしり「野球」が詰まった本である。
まだ全てを読み切ることはできていないが、「○○○の仕事」という、本人の名前を冠したその書名からも、「野球の伝え手」としての永谷氏の仕事の重みを感じることができる。

永谷氏の記事は、ファンからはなかなか見えないプロ野球の奥の姿を垣間見させてくれる、貴重な文章だった。
そして、書きぶりは冷静ではあるものの、本当の「奥」を知った人間でしか書けない、プロ野球の「裏事情」といったものを混ぜてくるのも、氏の記事の一つの特徴だったと思う。

そんな今回の本の中に、野球選手の彼女事情を取り上げた記事がある(プロ野球ではなく、高校野球の話ではあるが)。他の記事とは毛色が違うのだが、敢えてこの記事を入れたところに、今回、本の監修を務めた石田雄太氏(週刊ベースボールにて「閃球眼」を連載。永谷氏逝去後、Numberの巻末連載「SCORE CARD」も引き継ぐ)の、ある種の意図も感じた。

正直な所、前述の記事は、プロ野球選手に「爽やかなスポーツマン」を期待する人にとっては、眉をひそめる内容かもしれない。
ただ、それも野球の一部、というか、人間の一部である。

「爽やかなスポーツマン」と先に書いたが、個人的には、プロ野球選手を「爽やかな…」という存在だとは思っていない。
逆に「プロ野球選手だからこそ」野卑であったり、性格がいいとは言えない選手も数多くいるだろうと思っている。

さきの「声出し」に関する金銭授受の報道が出たときに思った一番の感想は、「ずいぶん不合理なことをしているな」だった。
野球選手が験を担ぐことはよく知られているが、それにしても、実質的に勝利につなげていくにしては随分と遠回りな慣習。チームのモチベーションを上げるんだったら、もっと他の方法はないものだろうか(金銭授受の有無はおいておいて)とも思ったが、各球団に広まっていったということは、現場の空気感からすると「それ、いいね」というやり方だったのだろう。

今回の一連の報道では、チーム内での高校野球の賭け(一部、部外者が関わっていた球団もあったが)についても明らかになった。
以前、週刊ベースボールの各球団の選手コメントで読んだが、甲子園の季節になると、プロ野球選手のなかでは決まって高校野球が一番の話題(自身や他の選手の母校のことも含め)になるという。
そのことから推し量ると、今回のようなことが行われていたとしても、何の不思議も無い。法律的には違法であるが。

TwitterやSNSなど、選手、ファンとも、情報の伝達・入手が手軽になったことで、十数年前より、プロ野球選手が身近になったような気もするが、やはりプロ野球選手のなかには、ファンからはなかなか見えない「プロ野球の空気」というものがあるだろう(チームによって違いがあったり、選手の入れ替わりによってそれが変わっていくこともあると思うが)。
個人的には、選手たちが試合のなかで「野球の魅力を見せてくれる」のが一番期待したいことであり、その裏にある「プロ野球の空気」に、そこまでの注文をつけたいとは思わない(もちろん、個人的な選手の好き嫌いはあるが)。

ただ、「野球」が誰でもが見るスポーツでなくなった現在、今後のプロ野球は「これから、ファンになる(あるいは、なる可能性のある)人」に対して、どんなイメージをもってもらうか、ということが非常に大事になってくる。
残念ながら、一連の金銭授受の報道は、ファンを減らすことはあれ、増やすことはないだろう。
その意味で、今回のチーム内の金銭のやりとり含め、慣習化しているものも多いであろう現在の「プロ野球(内部)の空気」を、ファンにも説明がつくものに変えていくことが、現場の選手、また監督・コーチ、日本野球機構、さらにはプロ野球OBも含めて、求められてくる時代になったと言える。

プロ野球の表も裏も知っていたと思われる永谷氏が、今回の一連の報道をどう感じたか知りたいところではあるが、開幕カードを見終え、永谷氏の著作で「野球の世界」に浸るなか、少し晴れない気持ちを抱えつつも、「『野球』というスポーツが、このさきも多くの人が魅力を感じるスポーツであってほしい」というのが、今の正直な気持ちである。


by momiageyokohama | 2016-03-29 01:29 | 野球(全般) | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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