プレミア12 日本代表の敗因は、本当に「継投ミス」だったのか
2015年 11月 23日
その前に行われた日本vsメキシコは、日本がホームラン攻勢でコールド勝ちという結果だったが、その前々日に行われた韓国戦での大逆転負けを受けて、メディア、ファン、評論家など、各所から敗因がどこにあったかの意見が出された。
そのなかで、最も多かったのが、小久保監督の「継投ミス」。
これは監督自身も口に出して言ったことでもあり、敗戦の一番の原因ともされているが、果たしてそうだったのか。
個人的には、必ずしもそうとは思わなかった所もあり、改めて、状況を振り返ってみたいと思う。
1. 則本の続投
敗戦直後、敗因の大きな要因として挙げられたのが、「なぜ9回も則本を続投させたのか」ということだった。
ただ、実際試合を見ていた際、則本が9回もマウンドに上がったことに疑問を感じた人は実は多くはなかったのではないか。
その前の8回表は完璧な投球。抑え陣がいま一つ安定度に欠くことを考えると、則本で行くという選択肢は、そこまで不可思議なものではなかったと思う。
なお、小久保監督のコメントを聞くと、当初から則本の2イニングは決めていた模様。もちろん、大谷が早めにつかまった場合は、また状況は変わったと思うが、準決勝を大谷・則本の2人で賄うことができれば、決勝は、他のリリーフ投手を総動員できる(「調子が悪ければ、すぐに交代」ということも可能)という算段もあったかもしれない。
では、もし9回は則本でないとしたら、誰だったのか。
大会序盤の起用法を見ると、本来ならば、松井をストッパーという形にしたかったのかもしれない。
ただ、いきなり無死満塁のピンチを迎えた1次ラウンドの韓国戦をはじめ、そこまでの信頼を持てなかったのは事実。
となると、1次ラウンドの2試合は完璧なピッチングを見せた増井が次の候補だが、準々決勝のプエルトリコ戦、点差が空いていたとはいえ、最後3ランを浴びたことで、こちらも不安が残ってしまった。
その他の選択肢としては、澤村がいたが、メキシコ戦ではストッパーとして登板するも、リードを守れず。フォアボールを比較的簡単に出す投手だけに、こちらも信頼をおける状況とは言いづらく。
残るは、山﨑康、牧田になるが、山﨑は抑えてはいたものの、ここまで厳しい場面での登板は無し、牧田は緊急時での火消し役+対左打者におけるリスクということを考えると、やはり「則本続投」という選択は理解はできる。
2. 回またぎの落とし穴
ただし、前記と矛盾するが、今大会、則本は、1次ラウンドの韓国戦、アメリカ戦と、1イニング目は完璧な投球を見せるも、2イニング目はいずれもピンチを招いた(結果的にゼロには抑えたが)。
テレビ画面で見る限りは、2イニング目、明確にスピードが落ちたといった変化は見られなかったが、ここがリリーフにおける回またぎの難しさというところなのだろうか。
その意味では、「先発投手だから、スタミナ的に複数イニング以上投げること問題はないだろう」ということで、「回またぎのリスク」を見落としていた側面はあったかもしれない。
WBCのように投球制限がある大会の場合は、第一先発-第二先発-セットアッパー-ストッパーという区分けになることが多いため、二番目に投げる投手が複数イニング投げる腹積もりもできているだろうが、今大会の場合は、そこが、試合の状況によって変わる可能性があった。
また、よくセットアッパーからストッパーに転向した投手が口にする「8回と9回は全然違う」というところ(9回における相手選手の必死さ)を考えると、もう少し細かい注意を払うべきだったかのかもしれない。
3. 勝負できる変化球の数と種類
結果的に逆転負けを喰らったこの9回表。各投手の投球を見ていて感じたのは、「どうしたら打ち取れるのかのイメージが湧かない」ということだった。則本のこの回は、主にストレートとチェンジアップ(二塁打を打たれたのはフォークで、スライダーも2球ばかりは投げたが)。続く松井の持ち球は、ストレートとチェンジアップの2種類のみ。さらに、増井も、ほぼ、ストレートとフォークのみ。
継投をしたものの、松井がノーアウト満塁ということもあり、チェンジアップを投げ切れなかった(嶋が要求し切れなかった)こと。また、増井のフォークが結構見切られていたことで、見ていても、かなりの追い詰められ感があった。
ストレートとフォーク(あるいはチェンジアップ)の組み合わせでバッターを打ち取る投手の場合、ともすると、フォークを見切られる→バッターにストレートに絞られるので力む→ボールに→仕方が無いのでもう一度フォークを投げるが、ランナーが詰まっていることもあり、甘めに投げてしまう、という悪循環に陥るケースがある。
その意味では、できれば、勝負に使える変化球を2種類持っておくといいのだが、ストッパーの場合、武器として使う変化球は1種類のみという投手がほとんどである。先発の時は2種類以上の変化球を使っていた投手も、ストッパーになると1種類に限定させることが多い。それだけ、一球に対する集中度が求められる役割とも言えるのだろうか。
そうなってくると、今回の準決勝の9回表の状況で言えば、松井・増井よりも、ストライクを取るボールとしても使えるツーシームを持っている山﨑康、またタイミングをずらすことで見逃し(あるいはファール)をとることのできる牧田、という選択もあったかもしれない。ただ、前述のとおり、その継投はその継投でまたリスクもあったとは思うが。
今シーズン、1年間ストッパーを務めた投手でいうと、2種類以上の変化球を使っていた日本人投手は西野(フォーク・スライダー)ぐらい(参考として、他にバーネット(カットボール・シュート))。
その西野が故障で今回のプレミア12に出られなかったのは痛かったが、今後、2種類以上の変化球で勝負できるリリーフ投手の存在というのも、一発勝負の大会を勝ち抜くには重要な意味を持ってくるかもしれない。
4. 中継ぎのスペシャリスト
今大会、小久保監督自身も口にしていたが、リリーフではなく「中継ぎ」を専門としている投手の選出は無かった。
今回、逆転されたのは9回というイニングなので、そのことが果たして敗因の一つかというと疑問を感じるところもあるが、イニング途中での登板に慣れている投手の存在というのは、確かに大事かもしれない。
ただ、今季、中継ぎで安定していた日本人投手となると、あまり多くは無い。
具体的には、森唯斗、大谷智久、五十嵐、秋吉、田島あたりか(防御率2点台を目安にすると)。
ただ、多くの投手は、最近の起用の傾向もあり、中継ぎとはいえイニング頭から登板することが多い。また、秋吉、田島あたりは、制球を考えると、まだ国際試合で投げさせるには怖い。
イニング途中での登板というと、宮西あたりが候補に上がるが、今季はあまり良くなかった。同じく、ピンチでの火消しスペシャリストというと、山口鉄もいるが、こちらもここ2年は痛打を喫する場面が増えている。
その他、右投手でピンチの場面で登板する投手となると、日本ハム・谷元、楽天・福山といったところが思い浮かぶぐらいなので、その意味では、現在、日本人投手の中継ぎ陣はかなり層が薄いといってもいいだろう。
そう考えると、現時点では、力が若干落ちる中継ぎ投手を入れるよりも、ストッパーの力量がある投手に対し、ピンチの場面での心の持ちよう・調整の仕方を投手コーチ等がアドバイスするといった方向性の方が現実的なように思う。
5. 大谷の交代
本来ならば、この話を最初に持ってくるべきだったのかもしれないが、ここまでは「継投のなかでの問題点」という話を優先した。
それは結局のところ、「所属チームに対する配慮」というものがあったならば、この交代は致し方ないと思ったから。
7回表、初ヒットを許し、高めに浮くボールも多くなってきたということでの交代という可能性もあるが、小久保監督の試合後のコメントを聞くと、「大谷は最長7回まで」と初めから決めていた節もある。
今大会では、他の試合でも、先発を4イニングで替えることも間々あった。各所属球団から、起用に当たって、条件が伝えられていたケースもあったという話もある。そのこと自体は、球団からしたら、来季ペナントへの影響も考えると、当然と言えることかもしれない。
ただ、この問題は、今後の国際試合でもついて回ることでもある。日本代表運営側、球団経営側が、いかにいい協力体制を作れるか。ファンからはなかなか見えにくいところではあるが、日本代表が最大限その力を発揮できる状況づくりという意味で、その部分の重要性は大きい。
ということで、ざっと、韓国戦での逆転負けの要因について、投手の要素の側面から書いてきたが、次回のWBCは、また今大会とは状況が大きく変わる。
今回、マイナーや独立リーグなどの選手が主だった中南米諸国のレベルは、前回のWBC同様にメジャーの選手が入るようであれば、何段階も上がる(なお、アメリカも当然そうなるはずなのだが、アメリカの場合は、まとまり的な部分に問題があるのか、必ずしもそれが強さにつながらない印象もある)。
ということで、調子の悪い投手にどう畳み掛けるか、打ちあぐねている投手をいかにして攻略するかなど、攻撃における「工夫」の重要性が、プレミア12よりも大きくなってくるだろう(今大会の日本代表は、細かい野球はあまり見られなかったが、WBCではそれだけでは勝てない可能性が高い)。
また、MLBに行く選手がいたり、調子を落とす選手、また逆に今回選ばれなかった選手のなかで2016年に躍進を遂げる選手もいると思われるので、メンバーも一定人数は入れ替わるはずである。
前回のWBC、そして、今回のプレミア12と、連続して準決勝で勝ちをものにすることが出来なかった日本代表。
次大会こそ、ハッピーエンドを勝ち取ることはできるだろうか。



























