「なぜ、ボクシングを見るのか」を再認識した試合
2014年 08月 13日
試合前の期待が大きかった試合でしたが、2試合とも、その期待通りのハイレベル、かつスリリングな試合でした。
この日のカードは、4回戦2試合→8回戦2試合→セミファイナル→メインと全6試合。
3試合目から早くも8回戦という試合の並びでしたが、セミファイナル前の8回戦2試合もなかなか面白い試合でした。
竹中良(三迫)vs 小澤有毅(筑豊)〔フェザー級〕は、スピーディーな打ち合いが続くなか、徐々に優勢に試合を進めた竹中が、最後、顎を掠めるようなパンチでKO勝利。
久永志則(角海老宝石)vs 源大輝(ワタナベ)〔スーパーバンタム級〕は、キャリア的にはまだ若い源が先制攻撃をしかけるも、3Rぐらいから失速しかけたところに、久永がうまくパンチをまとめていき、判定勝利を収めました。
そして迎えた戸部 vs 石田の、日本スーパーフライ級タイトルマッチ。
〔王 者〕 戸部 洋平(三迫) 8勝(5KO)1敗1分
〔挑戦者〕 石田 匠(井岡) 16勝(9KO)無敗
試合数こそ少ないものの、河野公平、赤穂亮、江藤大喜と、国内の強豪と拳を交えてきている戸部に対し、戦績は残しているものの、その勝ち星の半分以上は、戦績の乏しいタイ人相手に挙げたものであり、その実力が未知数な石田がどんな戦いを見せるのか。
正直、試合前は予想をしづらかったのですが、いざ試合が始まると、石田の実力が本物であることがわかりました。
特にジャブ、そしてワンツーの速さ。戸部が、テクニックがある割には正面からパンチをもらいやすいボクサーであるということを差し引いても、その速さはかなりのものだと感じました。さらに、ジャブも、いろいろな角度から打ってくるため、相手としては非常に厄介。
たびたび顔面にパンチを受けた戸部は、ジャブの差し合いのような戦いでは勝てないと見たのか、かなり早い段階で、攻撃性の高いボクシングにシフトチェンジしていきます。
しかし、フットワークのレベルも高い石田。採点的には、攻撃をしかけている戸部につけたいラウンドもあったものの、内容的には石田が支配しているラウンドが続きました。
終盤、8Rあたりからは、石田のスタミナが落ちたように感じましたが、最終ラウンドは、再び、両者打ち合い。最後、ダメージのあるパンチを喰らった戸部が、倒れまいとする姿は見事でしたが、ジャッジは97-93、96-94、96-94で三者とも石田に。
勝利が決まった瞬間、全身で喜びを表現する石田の姿は、この試合が決して簡単なものではなかったことを物語っていたと思いますが、今後に向けても大きな可能性を見せた試合でした(試合後は、井岡弘樹氏もリング上にのぼって祝福)。
試合後のインタビューでは、世界獲り宣言も飛び出した石田ですが、今後の課題としては、自分が仕掛けて攻撃する割合を増やすことでしょうか。今回の試合は、展開上、戸部が攻めてそれに石田が応戦するという形になりましたが、世界で戦うには、自ら仕掛けてペースを握ることも不可欠。
今回の戸部との試合含め、日本人との対戦では7戦して全て勝っているものの、KO勝ちは1つだけというのを見ても、もう少し強引な攻撃性が求められる気がします。
一方、敗れた戸部ですが、終始、攻める姿は見せ、その戦う姿は心を打つものがありました。ただ、同じく素晴らしい試合ながら、最後はメッタ打ちを喰らってしまった対赤穂戦のように、相手のパンチを正面から受けてしまう場面が目立つのも事実(しかも、顔が跳ね上がるケースが多いので見栄えも悪い)。頭を振るボクシングスタイルへの変更など、今後、もう一段高みを目指すには、「相手のパンチを外す」術をもう少し身につけた方がいいのではと感じました。
続いて行われた、メインの東洋太平洋スーパーライト級タイトルマッチ。
〔王者〕 小原 佳太(三迫) 11勝(10KO)1敗
〔挑戦者〕 岩渕 真也(草加有沢) 23勝(19KO)4敗
日本タイトル、東洋太平洋とタイトルを獲得し、目下9連続KO中の小原に、元日本王者・岩渕が挑むという構図。
両者のKO率を考えると、早いラウンドでの決着も考えられる一方で、両者が互いのパンチ力を考え慎重な戦いをした場合は、終盤まで勝負がもつれる可能性もあると予想された一戦。
ゴングが鳴る前から、両者に対する応援合戦がホールに響き渡っていましたが、いざゴングが鳴ると、オーソドックスにガードを固める小原に対し、岩渕が変則的なスタイルで、なんとか小原に対抗しようという形に。
ときにはカンフーのようにも見える構えで、なんとか小原を攪乱しようという岩渕でしたが、もともとはそこまで変則的なボクサーではない印象があっただけに、それだけ、小原の力を警戒している表れのように感じました。
思ったよりは静かに始まった序盤戦ですが、それでも「一発当たったら…」というパンチが交差する場面が間々見られます。スーパーライト級にしては、両者スピードもあり、小原はガードで、岩渕はウイービングで、相手のパンチをかわしていきますが、そんななかでも、小原のパンチが時折、岩渕をとらえる場面も。
4R終わっての途中採点は、小原がリード。その後も、ガードを下げることなく、基本に忠実なボクシングをする小原。そのまわりをまわりながら、なんとか打開策を見つけようとする岩渕ですが、なかなか主導権は握れず。
そして迎えた8R、ついに岩渕の強打が小原を捕らえます。ラッシュをかける岩渕。それを懸命に凌ぐ小原。結局、小原がしのぎ切り、このラウンドは終了。
続く9R。まだダメージが残っているかと思われた小原ですが、7Rまでと同じく、冷静に、また基本に忠実なボクシングスタイルに徹します。一気に行くかと思われた岩渕も、前のラウンドに続けて畳み掛けるような攻撃はできず。これは、岩渕がどうこうではなく、小原が「追撃を許さなかった」と見るべき、と思いました。最終的に、このラウンドが勝負のポイントとなりました。
ポイント的には、明らかに小原優勢で迎えた12R。予想外の判定決着かと思われた開始10秒過ぎ。小原の返しの左フックが岩渕の顎に命中。
バッタリと倒れる岩渕。岩渕にかけより、ノーカウントで試合を止めるレフェリー。
まさに「轟沈」といえるKO劇で、勝負は決しました。
跳び上がって喜ぶ小原。
一方、担架も用意され、やや騒然となる青コーナー側。幸い、岩渕はしばらくして起き上がりましたが、「勝敗の明暗」という意味では、残酷なほど、くっきりとした結末に終わりました。
試合後のインタビューでは「KOは狙っていませんでした」と言っていた小原ですが、この試合では、その冷静な試合運びぶりが印象に残りました。また、最後はワンパンチKOという形になりましたが、それまでも、少なからず、そのパンチで岩渕にダメージを与えていたことが、劇的な結末につながったのではと思います。
階級的に「世界との差」があると言われるこの階級ですが、さらに「もう一段上の戦い」を見たいと思わせてくれる試合内容でした(あとは今後、陣営がどうそのキャリアアップをマネジメントしていくか)。
一方の岩渕は、3戦前の東洋太平洋で敗れたときに、一度は引退を考えたというコメントを残しているだけに、今後の去就はなんとも言えませんが、勝敗どうこうでなく、この日、岩渕の応援に集まった人の多さが、岩渕のボクサーとしての価値を示しているように思いました。
結果的に、大満足だった今回の興行。
見終えて改めて思ったのは、自分は「こういう戦いを見たくて、ボクシングを見てるんだ」ということ。
もちろん、ボクシングを語るうえでは「世界チャンピオン」という存在は欠かせないと思いますが、それ以外は価値は無いのかというと、もちろんそんなことはなくて、「俺らは『戦ってる姿』が見たいから、ボクシングを見てる」。そのことを再認識した、この日の試合でした。




























