オリンピックのメディア報道
2014年 02月 27日
トピックとして取り上げるには3・4日遅い感もあるが、ソチ冬季五輪が閉幕した。
今回のオリンピックは、時差の関係で、多くの競技の時間が日本では深夜の時間帯だったこと、また個人的に仕事や他に時間を割きたいことがあったため、そこまで各競技を見ることはできなかった。
ただ、今回のオリンピックほど、「メディア報道」について考えさせられた大会はなかったかもしれない。
その一番の理由は、やはり、メダル有力候補とされた浅田真央、高梨沙羅が、多大なプレッシャーに影響を受ける形で、実力を出し切れなかったことである。
ただし、「過熱するメディア報道のせいで、こうした選手たちが力を出し切れなかったんだ」と言いたいわけではない。
むしろその逆……と言うのはちょっと違うかもしれないが、「メダル確実(さらに、選手によっては「金メダル確実」)」と言われる立場となった選手は、こうした過剰なプレッシャーをくぐり抜けない限り、メダル(選手によっては金メダル)を獲ることはできないんだ、ということを改めて思い知らされた。
誤解の無いように言うと、それこそ朝起きてから寝るまで一挙手一投足、やり過ぎではないかと思えるほど、選手を追いまくるような報道が、選手のためになると思っているわけではもちろんない。
ただ、おそらく、次の2016年リオデジャネイロ・オリンピックも、さらに2018年の平昌オリンピックも、そしてもちろん2020年の東京オリンピックも、有力選手へのマスコミの過熱報道が収まることはないだろう。
オリンピックでスキージャンプが採用されることが決まり、そして高梨沙羅がメダル有望な選手であるということが分かってからの、各報道機関の先鞭付け争いは、「こうも、オリンピックの力というのは大きいのか」と感じさせられるものだった。今後は数々のジュニアの有力選手が「2020年の星」ということで紹介されていくだろう。
個人的には感じるものは少ないが、芸能人を有力選手に取材させ、ストーリー作りをするやり方も、次の大会も、その次の大会も変わらないだろう。
さらに言えば、自分は海外で生活したことは無いので実感としてはわからないが、有力選手にメディアが大きなプレッシャーをかけるという事態は、決して日本だけではないのではないか。
そういう意味では、ときに「大きなマイナス」をもたらしかねないメディア報道を、どううまくかわしながら(もしくは、どう、いい関係を保ちながら)、オリンピックに向けてピークを合わせていくか、という部分は、トップ選手(また、選手をサポートする周りのスタッフ)にとって不可避な要素なのではないか。
そう考えると、長野五輪のスピードスケート500mにおいて、相当期待の高い金メダル候補として登場し、1日目1位、そして2日目にはさらに記録を伸ばして金メダルをもぎ取った清水宏保の滑りは、16年経った今でも強烈に印象に残っている。
ただし、今回のオリンピックでは、半分は「諦め」の気持ちもあって、メディア報道に関してとみに否定的な見方をしようとは思わなかったが、それでも書いておきたいことがある。
それは、メディア内部の人間である日刊スポーツの荻島弘一氏が指摘していたこともでもあるのだが、大会を総括する際、あちこちで使われた「国外の冬季五輪 最多のメダル数」というフレーズ。
もともとは日本選手団の橋本聖子団長が口にしたことだったのかもしれないが、各メディアは「今回の日本勢は大活躍だった」というイメージを大きくしようと、ここぞとばかりにこのフレーズを使った。
しかし、今まで、国外でのメダル獲得数最多だった1992年アルベールビル五輪での種目数は57種目(メダルは7個)。
それに比して、今回のソチ五輪の種目は98と、40種目以上増えている(メダルの数は8個)。
「まやかし」とまでいうのはちょっと言い過ぎかもしれないが、マスコミが数字などを引用する際、時折見せる「ごまかし」が、最後に顔を出したように感じた。
さすがに、昔はよく見られた、「ワールドカップで1度だけ3位に入った選手を、あたかも世界ランキング3位の実力があるように伝える」ような報道は最近は減ったが、それでも、「少しでも底上げして見せよう」とするのが、メディア報道の性といっていいかもしれない。「見る人の期待を高める」ということ自体は否定はしないが、嘘(あるいはごまかし)が3割を超えるぐらいの確率で入ってくると、そのメディアの報道姿勢には疑問を感じざるを得なくなる。
なお、あまりネガティブなことばかり言っていてもつまらないので、心に残ったメディア報道のシーンも。
それは、やはり、メダルを逃したことが決定した後の高梨選手へのNHK・工藤三郎アナのインタビュー。
インタビュアーとしては非常に聞きづらい状況のなか、17歳という年齢的には経験が豊富とは言えない選手に対し、選手の気持ちをおもんばかりつつ、その「心境」を見ている人に伝えることに成功したインタビューだった。
ふと思ったのだが、例えば、こうした大きな国際大会(といっても、オリンピックということになるとは思うが)の後、スポーツメディアで活躍している人たちによる、“メディア報道の振り返り”のようなシンポジウムをやったら面白いのではないか。
まあ、司会は現時点では為末大しか思いつかない(^^)(まもなく始まるパラリンピックでは、NHKでナビゲーターを務める模様)のだが、ネット内での「意見」や「発言」への批判が無責任に飛び交うようなやりとりよりも、よっぽど実のある議論になるだろう。
最後に、今回、冬のオリンピックを見ていて、「今までのオリンピックで一番印象に残ったシーンって何かなあ」と考えてみた。
前述の清水の金メダル獲得や、鈴木大地のバサロでの金メダル獲得。もちろん、あの長野でのスキージャンプ団体の逆転劇なども思い浮かんだが、ふっと意外なシーンが脳裏に浮かんだ。
それは、出場した5種目すべてで入賞(500m・5位、1000m・5位、1500m・6位、3000m・7位、5000m・6位)。最後に出場した5000mでは、ゴールとほぼ同時に転倒してリンクに仰向けになってしまった橋本聖子の姿だった(1988年 カルガリー大会)。



























