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プロ野球の「魅力」を伝える3冊

ちょっと前回の更新から時間が空いてしまいました。

交流戦が終わってリーグ戦が再開し、いわば第3ステージに突入したプロ野球。
(ちなみに、第1ステージ:開幕~交流戦前までのリーグ戦/第2ステージ:交流戦/第3ステージ:リーグ戦再開~オールスターまで/第4ステージ:7月下旬~8月/第5ステージ:9月~リーグ戦終了まで、という勝手な分類(^^))

パ・リーグは大混戦模様、セ・リーグは2強4弱の構図が崩れる気配はまだ見えず、といった状況ですが、今後さらなる“熱い試合”が数多く見られることを期待したいですね。

そんななか、昨日(6/29)のオリックス-東北楽天戦での、楽天・藤田バックトスは凄かった。
1アウト一塁の場面で、二遊間を抜けようかという糸井の打球に対し、「倒れ込みながら逆シングルで捕りつつ、セカンドベースに入った松井稼を全く見ずにバックトス」という、あまりにもプロ過ぎるプレー。
初回、立ち上がりでのプレーというところにも価値がありますし(しかも楽天の先発は安定感があるとは言えない戸村だった)、ヒット性の当たりにもかかわらずゲッツーを狙いに行っての判断(そしてそれを選択させる元となる高い技術)、さらにはその意図を組んだかのように素手でボールを獲ってファーストへ投げようとした松井稼のプレー(もしかしたら「ランナーと接触しないように投げるため」に素手で捕ったのかもしれませんが)も含め、日本で一番野球が上手い人たちの“技”が詰まったプレーでした。

さて、拙ブログでは、これまでも何度か野球に関する本で「いいな」と思った本を紹介してきましたが、久々に、最近出た本のなかから、印象に残った「野球本」を紹介したいと思います。今回は3冊。


1. 『コンバート論』 (赤坂英一・PHP研究所)

元日刊現代の記者で、現在はフリーのスポーツライターとして活動している、赤坂英一氏の最新刊。
これまで、「二軍監督」「キャッチャー」「2番打者」といった少しマニアックなテーマから、プロ野球選手の実像をあぶり出してきた赤坂氏だが、今回のテーマは「コンバート」。
ここ数作のテーマと比べると、プレーよりも若干「生き方」寄りのテーマだが、その冒頭は、現在のプロ野球界におけるコンバートの最たる成功例とも言える糸井嘉男選手の話から始まる。
本の構成は、いつものように、複数の選手にスポットを当て、ときにそれらがリンクしながら話が進んでいくが、取り上げられた選手たちは、前述の糸井のほかに、石井琢朗小谷野栄一森野将彦田中雅彦遠山奬志高田繁(選手・GM両方の立場から)、古葉竹識(高橋慶彦らをコンバートした監督として)といった面々。
話のインパクトとしては、やはり糸井の話が大きいが、個人的に一番コンバートの「重み」を感じたのは、森野の章だった。また、エピローグでちょっと触れられている程度だが、元DeNA・福山(現:楽天)についての話も印象に残った。
コンバートの内容が、選手によって違う(投手→外野手、外野手→内野手、投手→三塁手→遊撃手、投手→野手→投手etc)ので、全編を貫く柱のようなものは、過去の著作よりも細いかもしれないが、それぞれがそれぞれに「プロ野球選手としての人生を懸命に生きている」ことを思わされる一冊。


2. 『虎のスコアラーが教える「プロ」の野球観戦術』 (三宅博・祥伝社黄金文庫)

昨年刊行された『虎の007 スコアラー室から見た阪神タイガースの戦略』(角川マガジンズ)で、ベテランスコアラーによる「野球の見方」を、さらには阪神が強くなった(弱かった)事情も結構あらいざらい話してくれた、阪神スコアラー歴25年の三宅博氏(元阪神の選手でもある。スコアラーとして北京五輪にも帯同)よる第2作。
前作の存在を知ったときは、野球の新しい見方として「そういった(スコアラー目線での視点という)新しい切り口があったか」と新鮮に思ったが、さらに第二弾まで出るとは思わなかった(前作が好評だったからだろうか)。
『虎の007-』では、内容の多くが阪神についてのことだったが、今作は、プロ野球全般にわたっての話になっている。
ストライクゾーンを3×3の9マスではなく、5×5の25マス(さらにボールゾーンまで入れれば9×9の81マス)で分割するという話に始まり、逆球については「G」と表示したり、打球を打った球種によって色分けし、さらに当たりの強さによって線の太さを変える、といったスコアのつけ方など、スコアラーならではの野球の記録の仕方が随所に紹介されている(時折掲載されている、実際のスコアシートには、現場の“リアル感”がある)。
全体的な内容も、各選手についての具体的な寸評(今年の4月刊行なので、対象となるシーズンは主に2012年)が書いてあり、「スコアラーはこういった見方をしているんだ」ということが感じ取れる。「阿部と谷繁の配球の傾向」「各チームのブルペン陣の実際の評価」「ヤマ張りがバレている打者」など、現場の人でしかわかり得ないこぼれ話も含め、興味深い話が並ぶ。
ちなみに本のなかでは「投手のクセを見破ることの面白さ」についても書かれているが、自分も野球中継を見ていて、パリーグのある先発ローテ投手の牽制のクセがわかり、また一つ野球の見方が広がったように感じた(ただし、テレビ中継の画面は投手の後ろからの映像なので、実際にファーストランナーになったときには、そのクセは利用できないかもしれないが(^^))。
なお、本の章立ては「作戦の謎を解く(以下、「…の謎を解く」部分は省略)」、「巨人」「投手」「配球」「打者」「守備・走塁」「勝利チーム」「阪神タイガース」という順番。一度で、その全てを頭に入れるには、ちょっとボリュームが多いかもしれない。
内容のクロスのさせ方にもう一工夫あれば、さらに読みやすさが増したようにも感じたが、ファンの野球の見方をさらに深めてくれる一冊。


3. 『日本プロ野球改造論』 (並木裕太・ディスカバー携書)

プロ野球ビジネスに実際に携わってきたビジネスコンサルタントが、岐路に立っていると思われる日本プロ野球について、その現況や今後あるべき姿について書いた本。
もともとは日経ビジネスオンラインに連載されていたものだが、単なる「論」ではなく、北海道日本ハム、東北楽天、パ・リーグなどにおいて、実務を経験してきた著者であるため、具体例の提示も含め、説得力のある内容となっている。
本のなかには、さまざまな“懸案事項の指摘”や、“今後に向けての具体策”が書かれているが、一つ幹となる考えは、「『プロ野球全体』を、今後「リーグビジネス」として、どう発展させていくか」ということ。
日本のプロ野球についてしばしば指摘されることとして、「1990年代半ばまで、日本のプロ野球とMLBの売り上げ規模はほぼ同じだったが、その後、メジャーはその売上規模を大幅に拡大し、現在、日本との差は4倍にもなる」という事項がある。
最初の章では、そのことについて、具体的なMLBの収益内容などを提示しながら説明をしていき、続く章からは、日本プロ野球の現況について、球団の現場レベルの声も交えながら、さらなるファン拡大のために具体的にできることなどを提示している。また、後半では、五輪放映権に関する世界を含めた動きなどについても触れている。
なお、この本の持つ意味として、プロ野球経験者やスポーツジャーナリストが書いた本ではなく、ビジネスコンサルタントが書いたということが大きいと思うが、それと同じぐらい大きいのが、横浜DeNA、北海道日本ハム、東北楽天など、現場レベルでファン拡大に向けて動いている人物のインタビューが盛り込まれているところ。
具体的には、前沢賢氏(横浜DeNAベイスターズ取締役事業本部長)、成田竜太郎氏(北海道日本ハムファイターズ事業本部長)、根岸友喜氏(東北楽天イーグルス事業企画部長)といった人たちだが、これまで「球団」「フロント」と一括りで表されてきたものが、それぞれ個人の「顔」を持った形で表出してきたことは、プロ野球の改革が、一つ新しいステージに入りつつあることの表れだと捉えたい。
統一球変更の未周知により、加藤良三コミッショナーの進退問題にスポットが当たっている状況のNPBだが、大事なのは個人の話に問題を収束させるのではなく、「日本のプロ野球に多くの人に関心を持ってもらう」ようにしていくために、NPBをどのような機構にしていくべきかということ。そのためには、具体的な策と実行力を持ってできる人物がNPBのコミッショナーに就くことができるシステム作りも必要になってくると思う。
個人的には、近年の野球界での実績などから考えると、元北海道日本ハム社長(元セレッソ大阪社長でもある)・藤井純一氏などは、コミッショナー候補になると思うが。
いずれにせよ、現況の把握は大事だとして、「マイナス要因の指摘だけでも野球論議として成り立つ時代」は終わりつつあると感じる。
今後、日本プロ野球が生き残っていくには、「今までの野球界とは全く違う視点でプロ野球を考えていかなければいけない」ことを痛感させられる一冊でもある。


以上、今回は3冊を紹介しました(最後の一冊は「プロ野球の持つ可能性」という意味で入れました)。
他にも、最近は、書店の野球本コーナーに行くと、以前に比べて、内容のしっかりした本が、またマニアック度の高い本(^^)が増えているように感じます。
そんななか、また一冊、強烈な個性を持つ本を見つけてしまいました。

『4522敗の記憶 -ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史-』 (双葉社)

著者は、Number webの横浜関連記事で、ファンとしての感情とライターとしての役割を絶妙なバランスで成り立たせている村瀬秀信氏。
正直、ファンとしては読むのが怖い気も…。
この本については、読んでから、レビューを書くかどうか決めようと思います(^^)。
by momiageyokohama | 2013-07-01 02:09 | 野球本 | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


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