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「世界までの道のり」を見せる必要性

1ヶ月ほど前になりますが、ゴールデンウイークのさなかの5月4日、ボクシング東洋太平洋ダブルタイトル戦を見に行ってきました(ちょうど、東京ドームで巨人-広島戦を見終えた人たちと入れ替わるように、後楽園ホールへ)。

この日のカードは、メインが淵上誠vs柴田明雄東洋太平洋ミドル級(72.57kg)タイトルマッチ
セミが、日本ライト級(61.23kg)王座を4連続防衛中の加藤善孝と、二度の世界挑戦の経験があり世界ランカーでもあるベテラン・佐々木基樹が、日本・東洋太平洋の両タイトルを賭けての一戦。
そして、セミセミは、WBC世界ライト級1位にランクされる荒川仁人(にひと)の世界前哨戦ともいえる一戦。
当日のパンフレットでは「日本 中重量級最前線」と銘打たれていたように、ボクシングファンにとっては非常に豪華なカードが並ぶ興行でした。

10回戦以上が3試合あるということで、通常より少なめの前座カード(3試合)が終わったあと、まず出てきたのは荒川仁人

前戦では、メキシコでの世界王座挑戦者決定戦で露骨な地元判定に泣かされて敗戦を喫した荒川ですが、その後、WBCへの抗議が実り、一時下がっていたランクも1位へと返り咲き。
今回の相手は、元王者などの肩書は無いタイのボクサー(戦績は8勝2敗)で、調整試合の意味合いが強かったのですが、結果は、予想以上のあっさりさで2R29秒でのKO勝利。
相手があまりにも弱かったため、荒川が世界でどれぐらい通用するかを図る試合にはなりませんでしたが、世界を獲る大きなポイントであるディフェンスを含め、現在のボクシングの充実度は垣間見れました。
これで、戦績は24勝(16KO)2敗1分
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(上重アナのインタビューを受ける荒川選手。ニックネームは『ベビーフェイス・スナイパー』)

そして、この試合から2週間後、ついに「荒川、世界戦決定」の報道が。
7月27日に、同級3位のオマール・フィゲロア(アメリカ)と(戦績は21勝(17KO)1分)。
場所はアメリカのテキサスにて。
なお、この試合は、現時点では暫定王座決定戦として行われる予定。
ただし、現在の正規王者であるエイドリアン・ブローナー(26勝(22KO)無敗という怪物ボクサー)が6月22日に2階級上のウェルター級の王座に挑戦することが決定。もしこの試合でブローナーが王座を奪取すれば、ライト級の王座を返上することが予想され、そうなると荒川の試合は正規王者戦に格上げされる可能性があります(←ボクシングファン以外の方からすると「何のこっちゃ?」かもしれませんが)。

いずれにしても、学生でのアマ経験がないなか、プロのキャリアをスタートさせ、足掛け10年目の31歳、しかも老舗ジムではない八王子中屋ジムからの世界挑戦ということで、自然と応援したくなるボクサーでもある、荒川仁人。
敵地での世界戦となりますが、今まで積み重ねてきたボクシングスタイルで、ぜひ世界を獲ってほしいと願っています。

荒川仁人選手情報ブログ


さて、荒川に続いてのセミは、その荒川に勝ったこともある加藤善孝と、この試合でキャリア50戦となる37歳・佐々木基樹の一戦。
どちらも確固たる成績を持つ(加藤-24勝(7KO)4敗1分、日本王座防衛4度を含め7連勝中/佐々木-39勝(24KO)9敗1分、二度の世界戦以外は2007年以降負けなし)だけに、どちらが勝つか予想が立てにくい試合でしたが、試合の鍵は、ラフに来ることの多い佐々木に対して、加藤がどう対応するか。

なお、現日本王者は加藤であるものの、佐々木もボクシングファンのなかでは知名度が高いボクサーだけに応援は拮抗するかと思ったのですが、思った以上に加藤善孝の応援団の数が多かったのには驚きました。

いざ試合が始まると、予想に反し、加藤が佐々木のガードの合間から的確にパンチを当てていきます。ちょっと強面の風貌とは裏腹に、基本通りのワンツーを打ち込んでいく加藤。
戦前、加藤が「(突っ込んで来る)頭に注意したい」とコメントしていたとおり、ラフな戦いを仕掛ける佐々木ですが、加藤はそれに惑わされることなく、佐々木にパンチをヒットさせていきます。
一緒に見に行っていた、普段あまりボクシングを見ない後輩(ただしキックボクシング好き)いわく「かなり実力差ありますね。」という展開のなか、遠目からも、徐々に佐々木の顔が赤くなっているように見えました。

試合前には、自身のブログでこの一戦に進退を賭けることを明言していた佐々木の意地も見たいところでしたが、序盤は加藤の優勢のまま試合が進み、4Rを終わっての公開採点でも、加藤の4~2ポイントリード。
迎えた5R、事件が起こります。
レフェリーがブレイクをかけたかかけないかという微妙なタイミングで、加藤の左フックが佐々木の顔面にヒット。ここで、ワンポイント遅れて佐々木がダウンし、そのまま大の字に。
レフェリーはこれをブレイク後の加撃と判断し、試合を一時中断。佐々木のダメージの回復待ちという判断で、佐々木はコーナーに置かれた椅子に座って休息をとります。
佐々木の表情は虚ろではありましたが、正直そこまでのダメージがあったかどうかは何とも言えないところ。「信じるか信じないかはあなた次第(^^)」という状況で、休む佐々木に向かって会場からの罵声もありましたが、自分は「どんな手段を使っても勝つ」という佐々木のボクシング流儀ととらえました(後輩は「汚いっすね~」と憤慨していましたが)。

その後、佐々木は5分近く休み、ようやく試合再開。
再開後も、振り回すようなフック、頭から突っ込む攻撃(7回には、ついに減点1がとられる)、ラウンド開始直後での一目散の突進、相手を抱え込んでの打撃など、ありとあらゆる手段を使って試合を優勢に持っていこうとする佐々木。
しかし、加藤はそれに惑わされることなく、極力パンチをもらわずに、要所要所で佐々木にパンチをヒットさせていきます。
試合を通して感じたのは、加藤のガードの高さ。中盤、一瞬ガードが低くなった時間帯がありましたが、それ以外は終始ガードを高く上げ、佐々木のラフな攻撃にも、ほぼ完璧に対応していました。
結局、試合は12Rまでもつれ込み、最後は佐々木の渾身の一撃を加藤がかわしてゴング。
加藤が3-0の判定で、勝利を勝ち取りました。

試合後、加藤が勝者インタビューを受ける一方で、なかなかリングを降りようとしない佐々木。
トレーナーに促されるようにして、ようやくロープをまたぎ、コーナーの端に立った佐々木は、「基樹コール」をかけてくれたファン達に対し、泣きながら最後の感謝の言葉を叫んでいました(この最後の挨拶が、加藤のインタビューとかぶって、若干加藤の声が聞こえなかったところが、最後まで佐々木の“ヒールらしさ”を感じさせた)。

一方、勝った加藤は、WBC16位にランキング。試合後は「荒川(仁人)君が世界を獲ってくれて、それに挑戦できたら最高」と言っていましたが、現在28歳とボクサーとしても脂の乗ってくる年齢。
今後、さらなるステップアップ、そして世界王者奪取を期待したいところです。
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(勝利者インタビューを受ける加藤選手と、ファンに最後の挨拶をする佐々木選手)

加藤善孝選手ブログ

佐々木基樹(元)選手ブログ


そして、最後のメイン。
昨年、初の世界戦では、同階級最強王者の呼び声も高いゴロフキン(カザフスタン、戦績:26勝(23KO)無敗)に全く歯が立たず敗れたものの、その一戦を除けば10連勝中(しかも7連続KO勝利)の東洋太平洋ミドル級王者・淵上誠と、1階級下のスーパー・ウェルター級(69.85kg)の日本王者である柴田明雄の一戦。

この試合も、加藤vs佐々木以上に予想が難しい一戦でしたが、自分は、階級も上であり今まで戦ってきた相手の戦績などを考えると、淵上がやや有利と思っていました。
試合は、いつも通り、淵上がタコ足のような右で相手との間合いを探る展開で始まりますが、思いのほか柴田がスピードのある動きを見せ、淵上にパンチをヒットさせていきます。3Rには柴田が右目の上をカットしますが、4Rを終わったところでの公開採点では、二者が柴田の4ポイントリード。
その後、ポイント的には劣勢となった淵上も攻撃に転じ、ミドル級ということもあり、パンチが当たるたび「即KO」も予感させるようなスリリングな打ち合いが続きます。
ポイントでリードする柴田も、過去に2度チャーリー太田にKO負けを食らうなど、決して打たれ強いとは言えないイメージがあるだけに、全く気が抜けない展開。

7Rに入ると、淵上のパンチにぐらつく場面も出てきた柴田。
しかし、ラウンド残り30秒、柴田の右フックが淵上のアゴをとらえ、淵上がグニャリとリングにしゃがみ込みます。
なんとか立ち上がった淵上にさらに襲い掛かる柴田ですが、ラウンド終了のゴングが鳴りKOはならず。
その後も激しい打ち合いが続きますが、8Rの公開採点では、ダウンを奪ったこともあり柴田が7~3ポイントのリード。12回戦とはいえ、残りのラウンド数を考えると、淵上としては倒すしか勝てる可能性は無く、残りの4ラウンドに何とか逆転KOの望みをつなぎたいところ。

しかし、試合は予想外の形で終わりを告げます。
9R、柴田の右目上の出血のドクターチェック後に下された判断は「試合続行不可能」。ここまでのラウンドでの採点で勝敗が決することに。
8Rまでの判定を考えると、実質このストップの時点で負けが確定した淵上は、リング上に崩れ落ち、悔しさに満ちた唸り声を上げました。

淵上としては、それが自身のボクシングスタイルとはいえ、ノーガードに近い構えのため、柴田の右を何度も浴びたのが致命傷となってしまいました。

一方、戦前の予想を上まわるスピードのある動きで、日本・東洋太平洋の変則2階級制覇を果たした柴田。試合がそのまま続けば逆転KOを喰らっていた可能性もありましたが、戦前の若干不利の予想を覆しての勝利は素晴らしかったです。
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(右目の上から流血する柴田選手に攻めかかる淵上選手)

柴田明雄選手ブログ

淵上誠選手情報ブログ


なお、このミドル級は、先日、プロ転向を表明した村田諒太と同じ階級。今後の村田の動向によっては、この日戦った柴田・淵上との対戦も十分考えられます。

その村田ですが、先日のプロテストでは、前日本ミドル級王者・佐々木左之介を3Rとはいえ、完全に圧倒する内容。
その攻撃・ディフェンスの技術を見る限り、国内には敵はいないのではないかという印象を持ちました。
国内のボクサーでいい勝負をするとしたら、ここ3年、世界を舞台に戦ってきた石田順裕ぐらい?(石田自身は、先日の世界戦で敗れてはしまいましたが、あと2戦、日本国内で戦うとの情報も)。もし、村田vs石田が実現したとしたら、世界戦ではないものの、国内の試合としては、かなりのビッグマッチになります。
ただし今日、村田がアメリカ大手のプロモーション会社トップランク社と契約したというニュースが飛び込んできたので、今後、村田が日本とアメリカどちらでの試合をメインで行っていくかは不透明な情勢(報道によると、デビュー戦は日本で行われる模様)。

いずれにせよ、現在の日本ボクシング界の一番の課題ともいえる「ボクシングの世界王者の認知度をどうしたら上げていくことができるか」を考えたときに、重要となってくるのは「『世界への道のり』を見せる」ことではないでしょうか。
結局、どんなにいいボクサーであっても、マニアなボクシングファンにしか知られないままキャリアを重ね、「さあ、いざ世界戦」となっても、昔に比べて様々なスポーツで「世界のトップで活躍している選手」が増えている現状、「ボクシングの世界戦」ということだけで多くの人を惹きつけるのは厳しいものがあります。
辰吉がなぜあれほど人気を博したか、またなぜ亀田兄弟があれだけの知名度を得たか。もちろん、本人のスター性(辰吉の場合)や、キャラが立っていたという要素もありますが、それに加え、「世界までの道のりを、多くの視聴者に見せた」ことが非常に大きかったと思います。

現在、そうしたことを意図的にやっていこうとしているのが、フジテレビがプッシュをかけている井上尚弥、そして村田諒太です(村田の場合は、フジテレビとの関係がどうなっていくか不透明なところはありますが)。
その両者の試合(村田はスパー)をゴールデンタイムで流した第一弾となった4月16日の放送は、視聴率6.9%という低い結果に終わりました。

ただ、そんな状況下、先週日曜深夜に放送された、フジのボクシング番組「EXCITING TIME PLUS」は、西岡利晃と千原ジュニアの結構本気のボクシング対談があったり(千原ジュニアは、テレビ局の仕事と直接の関係は無かった前述の5月4日の試合も見に来ていました)、また一般的にはなじみがないだろう、メイウェザー、ゴロフキン、ローマン・ゴンサレスなど、世界的にも評価の高いボクサーを紹介したりと、地上波にしてはコアな番組の作りで、フジテレビの(スポーツ班の)本気度を感じました(ローマン・ゴンサレスの存在を隠しているかのようなTBSの番組作りとは対照的)。

人々の趣味が多様化しているなか、世界王者予備軍であるボクサーのすべてがスポットライトを浴びるのは難しいかもしれませんが、それでも、村田や井上といったスター候補だけではなく、さきの荒川や加藤といったボクサーにも光が当たるような時代が来てほしい。
試合を見終わって、そんな思いをさらに強くしました。
by momiageyokohama | 2013-06-05 01:02 | ボクシング | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、21年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


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