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野球中継の新しい形を模索する必要性

前回、「今後の野球中継のあり方」について書いたのですが、そこで「書きそびれたな」と思ったこと、また、その後さらに思ったことについて、少し書いていきたいと思います。


1. 「二元中継」ということの意味

前回、二元以上の中継の可能性も含めて、「『その日、一番面白いと思われる試合』または『面白い場面』を提供していく形を試してみる価値はあるのでは」と書きました。
ただ、「二元中継」それ自体は、真新しい取り組みではありません。1960・70年代の野球中継は、世代的に見ていないのでわからないのですが、80・90年代は、ごくたまに、巨人戦以外のデーゲームのときに二元中継での放送はありました。また、近年の例で言えば、パ・リーグのプレーオフ導入初年度(2004年)には、テレビ朝日が巨人戦とパリーグ・プレーオフ(西武vs日本ハム)を二元中継していた記憶があります。
そうしたなか、今回の記事を書くにあたって念頭においたのは、「ゴールデンタイムで放送されるペナントの試合での複数試合(または場面)中継」ということでした(言い換えれば、巨人戦だけに頼らない中継への転換ということになるでしょうか(そうした転換をしても視聴率が取れる素地を作ることの必要性も含めて))。


2. ゴールデンタイム番組としての視聴率

昨日・今日の「巨人vs日本ハム」の2連戦、また4月下旬のフジテレビでの「ヤクルトvs巨人」など、今年は昨年までと比べると、ゴールデンタイムでの地上波中継数が増えているように思います(昨年は20試合。今年は確認できた範囲で、ここまでですでに12試合以上)。
ただし、開幕戦、そして2戦目の「巨人vs広島」の13.0%、12.6%は例外として、その後の視聴率は例年同様、10%未満の数字が続いています(例えば、4/26(金)、4/27(土)の「ヤクルトvs巨人」は、それぞれ8.0%、7.4%)。
テレビ・CM関係者の間では実際にどのライン以上が合格点なのかはわかりませんが、正直、ゴールデンで放送されるのであれば、いくらテレビ界が全体的に視聴率が落ちているといっても、10%は最低ライン、できれば12%は欲しいところでしょう(しかも、スポーツの場合、ドラマやバラエティに比べると、圧倒的に録画視聴の割合は少ないと思われるので)。
今の平均7~9%という状況は、ゴールデンとしての番組としてはかなり物足りない数字(特に、通常放送で12%以上取れる枠であれば、なおさら)なのではないかと思われます。


3. BS・CS放送がある状況下での、野球中継視聴者数

よく野球中継について語られるときに、「中継自体が、ほとんどやっていない」という言い方がされますが、ここ数年は、BS日テレが巨人の主催試合をほぼ中継していることもあり(しかも、18時~22時まで)、巨人戦に関しては、無料で少なくとも半分以上の試合(日テレ以外での中継も含めれば6割以上にはなるでしょうか)を見ることができます。
また、関東地区の場合、巨人戦以外でも、西武→BS朝日・テレ玉、ソフトバンク→TOKYO MX、ロッテ→TwellV・チバテレビ、DeNA→tvkといったように、各チームのホームゲームを相当数、無料放送でフォローできるので、これらの局で野球を見ている人もいるでしょう。
また、有料であるスカパーの「プロ野球セット」に加入すれば、ほぼ全試合をフォローすることができ、これらの視聴形態で見ている人の数は、年を追って増加しているとは思います。
ここで難しいのは、では具体的な数字として、これらの形態でどのぐらいの人が見ているのか、という部分。これに関しては視聴率が公表されておらず、また「加入者数=野球の視聴者数」というわけではないので、実数はわかりません。
なお、参考までに、一昨年のサッカーアジア杯決勝の「日本vsオーストラリア」の視聴率の地上波・衛星放送比較。このときはテレビ朝日が33.1%、一方、NHK衛星第一が6.3%。衛星の視聴率は地上波の5分の1程度でした。
引用するにはかなり無理があるデータではありますが(^^)、もしこれを野球に置き換えたとしたら、地上波で8%の視聴率があるとすると、その他のメディアで野球を見ている人は1.6%ぐらい?
BS日テレでの視聴数の実数に左右されるところはありますが、それを考えても、現時点では、野球をテレビで見ている人の数は、多く見積もって、地上波の視聴率にプラス1~2%ぐらいかなと思われます。


4. 野球視聴者の世代間格差

拙ブログでは、これまでも野球中継の視聴率のことについて度々書いてきた(調べてみたら、8年前も、ほぼ同じようなことを書いていました…)のですが、これだけ視聴率を気にするのは、自分の実感として、身のまわりで野球が話題になることが圧倒的に少なくなってきたという危機感があるからです(もちろん、野球ファンの友達とは、熱く野球議論をすることはありますが)。
そのことを一番端的に表しているのが、野球中継の世代間格差と言えるかもしれません。
「巨人vs広島」の開幕戦の視聴率は13.0%。
しかし、世代別にみてみると、下記のようなことになっています。

KID(4~12歳(男女)) 3.1%
TEN(13~19歳(男女)) 4.1%
M1(男・20~34歳) 2.1%
M2(男・35~49歳) 5.1%
M3(男・50歳以上) 15.3%
F1(女・20~34歳) 1.3%
F2(女・35~49歳) 3.1%
F3(女・50歳以上) 8.8%

M3の15.3%という数字に対し、M1の2.1%という数字の低さが際立っています。
また、開幕戦以降の4月の試合でも、大方、M1層の視聴率は1~2%程度です。

自分はM2の前半に当たる世代で、小さい頃から「帰って、テレビで野球を見る」という習慣があった年代ではありますが、もし今後も上記の状態が続くのであれば、10~15年後、「野球をテレビで見られる環境」が、かなり厳しくなっている可能性もあると思います。


5. 視聴者がチャンネルを合わせたい、また見たいと思う中継になっているか

テレビ番組を見る際、そこにチャンネルを合わせるには「惹かれる要素」が必要だと思います。また、リピーターを作るには「その放送を見て満足感を得られたか」が大事になってくるでしょう。
それを野球放送ということで、考えてみると…。
「惹かれる要素」としては、やはり「見たい選手がどれだけいるか」、そして「見たいチームがどれだけ放送されているか」、さらに言えばその根本にある必要があるものとして「『野球そのものが面白い』と思ってくれる人をどれだけ増やせるか」が大事だと思います。
一方、「その放送を見て満足感を得られたか」については、「試合の面白さを、どれだけ引き出せる中継だったか」が大切でしょう。
そうした意味では、解説は大事な要素だと思います。先週日曜の中継で解説を務めた工藤公康氏などは、その部分、つまり「どうやって、見ている人に、野球の面白さ・奥深さを知ってもらえるか」を心がけている解説者の一人だと思います。ただ、残念ながら、そういった解説者はまだまだ少ないというのが実感です(工藤氏の他では、衣笠氏、桑田氏、立浪氏あたりが、野球の素晴らしさ・深さを感じさせてくれる解説をしてはいますが)。
解説以外の部分では、実況で細かな情報を入れたり、効果的なデータの紹介をしたりというのも、野球を面白く見せる大切な要素ですが、入れすぎると逆に見る際のストレスにもなってしまうので、なかなかさじ加減が難しいところではあります。
いずれにしても、「○○テレビが放送する野球中継は一見の価値がある」と、視聴者に意識づけされるぐらい、いい意味で「色がある」中継をしないと、これ以上の視聴者の増加はなかなか難しいでしょう(その手法の一つが、二元中継だったりするのでは、ということで、前回のような記事を書きました)。


今回も長くなってしまいましたが(^^)、これだけ地上波での野球中継のあり方にこだわるのは、自分が小さい頃、それがあることが当たり前という環境下で育ったことが、自分が野球ファンになった一番の原因だからです(あとは、フジテレビの「プロ野球ニュース」の影響も大きかったですが)。
一方で、自分の親は特段、野球ファンというわけでもなかったということを考えると、もし今の時代、自分が子どもだったら、野球ファンにならなかった可能性は大きいと思っています。

自分の場合、日頃、野球に関する掲示板系サイトはほとんど見ないのですが、ごくたまに見たときに、「野球を見たきゃ、スカパー入ればいいじゃん」といった意見を目にすることがあります。
確かにそうなのですが(^^)、今後のことを考えたときに、そうした考えだけでは、野球ファンの広がりは望めないでしょう。

昨年も一度書いたのですが、下記は、前・北海道日本ハムファイターズ社長の藤井純一氏が書いた「日本一のチームをつくる」(2011年刊)という本で印象に残った一文です。

『「とくにファンではない無数の人々」にどう受け止めてられているかは、今後のプロ野球の命運を大きく左右する。』

人によって、そのあり方については様々な考えがあるとは思いますが、「ファンでない人(もしくはファンでなくなった人)」にもアピールする可能性を持った地上波中継は、やはり今後のプロ野球に大きく影響を与えるものとして、知恵を絞って考えていかなければいけない大切なファクターだと思います。
by momiageyokohama | 2013-05-21 01:06 | スポーツ中継 | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


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