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第3回WBCを見終わって感じた5つのこと

第3回WBCは、ドミニカ共和国がプエルトリコを下し初優勝!

ということで、約3週間にわたって開催されたWBCが閉幕しました。
日本代表について言えば、宮崎の合宿から数えると約1ヶ月間、代表チームとして稼働していたわけで、かなり長い期間だったように感じます。

今日の試合では、さっそくソフトバンクの内川、松田、本多がオープン戦に出場するなど、時間の速さを感じますが、いろいろなトピックがあったWBCについて感じたことを、5つほど挙げてみたいと思います。

1. 中南米チームの本気度

今回、大会全体を通じて印象に残ったのは、決勝に残ったドミニカ共和国プエルトリコの選手たちの試合での表情でした。
選手レベルで言えば、今大会一番印象に残っている表情は、ドミニカ共和国・レイエスがベース上で雄叫びを上げる姿。また、感情むきだしのプエルトリコ・パガンのプレーも印象に残りました(日本戦では、守備で2つほどミスがありましたが)。

アメリカを破り準決勝進出を決めた試合直後、手を挙げてマウンドにうずくまったロメロのまわりに駆け寄って歓喜するプエルトリコの選手たち。
一方、ドミニカ共和国の選手は、優勝会見場に、大統領からの携帯電話片手に入ってきたとのことです。

第1回、第2回と日本が連覇したということで、どちらかというと「日本がどうか」ということにのみ目を向けがちでしたが、こうして今回好成績を残した国の選手たちの喜ぶ姿を見ると、WBCが徐々に本当の世界大会に近づきつつあるようにも思います。

また、決勝を戦った2チーム以外でも、キューバを破り準決勝進出を決めた試合でのオランダチームのベンチ、また台湾がホームで戦った第1ラウンドの球場の雰囲気、そしてあまり取り上げられることはありませんでしたがメキシコ・カナダを破って第2ラウンド進出を決めたイタリアなど、アメリカを除く各国の本気度、そして実力の上昇を感じた大会でもありました。
(そういう意味では、決勝戦をテレビ朝日が、深夜の録画中継にしたのは残念でした)


2. WBCの短期決戦度の高さ

今回、日本代表は、第1ラウンドで実力差があると思われたブラジル相手に、8回を迎えてビハインド状態。さらには第2ラウンドでも、台湾相手にあと一人で敗戦というところまで追い込まれました。

一方、他グループでも、大会前の予想とは違う成績に終わった国が多い大会でした。
韓国は、初戦でオランダに0-5で負けたことが響き、その後、オーストラリアと台湾に勝つも、得失点率で第1ラウンド敗退。
昨年のMLBアリーグ三冠王のミゲル・カブレラを擁するベネズエラも、初戦でドミニカ共和国に3-9、2戦目のプエルトリコ戦でも3-6で敗戦を喫し、3戦目のスペイン戦を待たず、第1ラウンド敗退が決まりました。
辛うじて第2ラウンド進出を果たしたアメリカも、3戦目のカナダ戦で日本と同じく8回で1点ビハインドという状態まで追い込まれ、第1ラウンド敗退の可能性も十分にありました。

大会前の予想に比して、番狂わせが起こる確率が高いのはなぜか。その原因を考えたときに、サッカーのワールドカップが思い浮かびました。

WBCの第1ラウンド3試合、第2ラウンド3~4試合、決勝ラウンド2試合の計8~9試合という数は、サッカーワールドカップの7試合(グループリーグ3試合、決勝トーナメント4試合)とほぼ同じ試合数です。
ただ、単純比較することが正しいとは限りませんが、この試合数を、ペナント(リーグ戦)との対比で考えてみると…。
野球の場合、NPBが144試合、MLBが162試合。
サッカーの場合、JリーグのJ1が34試合、イングランド・プレミアリーグが38試合。
試合数にして約4倍の差があり、これをWBC、そしてワールドカップに換算すると、WBCの1試合は、ワールドカップ1試合の4倍ぐらいの重みがあるという見方もできます。

しかも、野球の場合、先発投手の勝敗に対する比重が非常に大きいので、そういう意味では「超・短期決戦」といってもいいかもしれないと思いました。そのことが、各国の実力差よりも試合が拮抗するという要素を生み出しているとも言えるでしょう(ただし、予選参加国で比べると、サッカーW杯はWBCの約7倍ですが)。

こうしたことを考えると、本来は1対戦相手につき2試合行うといった方式の方が、真の意味での世界一を決める大会になるかもしれません。
ただ、現時点でも開催に1ヶ月かかっていることを考えると、試合間隔を詰めるなどしないと、試合数の増加は難しいでしょう。


3. 日本代表に欲しかった「一番打者」

最終的に、プエルトリコに1-3で敗れ、ベスト4止まりとなった日本代表。
敗因として、内川・井端のダブルスチール未遂が取り上げられることが多いようですが、どちらかというと、プエルトリコの先発M・サンティアゴに対し、5回途中まで2安打無得点(4回まではランナー一人のみ)に抑えられたことの方が大きかったように思いました。
昨年は韓国SKでプレー、6勝3敗、防御率3.40という実績だけみると、打てないピッチャーではないとも思えましたが、序盤はスライダー、途中から左打者相手へのチェンジアップなどでタイミングを崩され、攻略することができませんでした。
正直、日本のトップである選手たちが打てなかったわけで、相手のレベル問わず、初見のピッチャーを打つことがいかに難しいかの表れともいえます(なお、強打と言われるドミニカ共和国も、準決勝・決勝では、打ちまくっての勝利というわけではなく、少ないチャンスを生かしての勝利だった)。

ただ、この試合だけでなく、第1ラウンド、そして第2ラウンドに関しても、オランダとの2試合を除き、突破口を開く機会が少なかった日本打線。
その原因を考えたときに、「固定できなかった一番」という要素が浮かびます。
今大会、一番で先発した選手を見てみると、坂本2試合、長野2試合、鳥谷2試合、角中1試合。
成績を合計すると、29打数7安打1四球1盗塁で、打率.241、出塁率.267.
ただし、打線が爆発したオランダとの2試合を除いた5試合で見てみると、19打数3安打1四球1盗塁で、打率.157出塁率.200
最後は鳥谷が一番を務める形に収まりましたが、大会を通じて、「どんな手段でも出塁をし、さらにランナーに出てかきまわすような一番」たる選手はいませんでした。

前回のWBCでは、この役割を担う選手として、青木がいました(一番以外の打順を打ったこともありましたが)。また、第1回大会では、西岡がその役回りだったように思います。
しかし、今回は両選手とも不参加。ともに現在置かれている状況を考えると、召集自体は現実的ではなかったでしょう。

となると、他の一番タイプの選手を選出する必要があったのかもしれませんでしたが、今回選ばれたメンバーに、そうした選手はいませんでした。
長野あたりはチームでも一番を打っており、代表でも一番を務められる可能性もありましたが、自身の不振がこの時期に来てしまったこと、また生粋の一番タイプというより、「中距離打者で且つ足が速い」というタイプであるため、今回その役を務めることはできませんでした。

一方、今回、代表の選に漏れた選手を含めて考えると、大島・聖澤は、一番タイプと言えるでしょう。
ただ、大島は、実質フルシーズン活躍したのは昨年が初めて。またキャンプ前に故障を発生したということで、糸井・長野・中田で外野を占める構想を考えた場合、今回選出しなかったという決断は理解はできます。
また、盗塁数は両リーグトップの聖澤も、打率.270、そして104という三振の多さを考えると、まだレギュラーの一番を任せるには心もとないといえるでしょう。

そうしたなか、今後の国際大会に向けて、本当の意味での「信頼できる一番」を育成できるかは、日本にとって一つの大きなポイントだと思います。


4. 国際試合同士の間隔の長さ

今回のWBCは、日本代表にとって、真剣勝負の戦いの場としては、前回2009年のWBC以来、4年ぶりとなる大会でした。

前回のWBCはその前年に、北京五輪(2008年)、さらに前年の五輪予選(2007年)がありました。
また、第1回と第2回のWBCの間隔は3年だったこともあり、2006年の第1回WBC以来、2009年まで毎年、プロが集結した日本代表が結成されていました。

しかし、今大会は、実質4年のブランクがあっての日本代表。
日米大学野球やIBAFワールドカップなどで国際試合を経験してきた選手もいますが、トップレベルでの国際試合が初という選手も多く、そうした意味で、ファンやマスコミだけでなく、当の選手・コーチ陣も、不安な面が強かったと思います。
なお、そうしたことを背景に、一部で「やはり、メジャーの選手がいなかったのが痛かった」という意見もありますが、現実的にできなかった話を論じても、あまり意味は無いでしょう(強いて言えば、そのコメントから推測するに、上原は打診されれば出場する可能性もあったようですが)。

今回、WBCに出場した選手たちが、その経験を生かして、今後、国際試合に臨むに際し、どのような形で臨んでいってくれるのか。
この問題については、そんなできるだけポジティブな視点で、見ていきたいと思います。

そうしたなか、あまり報道はされていませんが、2011年まで行われていたIBAFワールドカップを引き継ぐ形で、「IBAFプレミア12」という大会が2015年に開催される予定のようです。
参加予定チームは、今回のWBC参加チームから12ヶ国。そして開催地は日本とのこと。
大会の詳細は来月に東京で開かれるIBAF総会後に発表されるということなので、結構すぐの話です。

この大会については、本当にまだ決まっていないことが多く、参加の仕方について、また日本国内で議論が交わされることでしょう。
なかでも、監督を誰にするかについては、いろいろな意見が出てくることと思いますが、一つ言えるのは、12球団の現役監督を除いたとして、「40・50代で代表監督を務めることができそうな人が極めて少ない」ということ。
このあたりの指導者育成については、今後、日本野球の大きな課題として、対策を練る必要があるかもしれません。


5. 最後に

長くなりましたが、最後に今回一番痛感したことを。

勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい

当たり前過ぎることですが(^^)、やはりそういうことだと思いました。
日本の準決勝敗退について、これだけいろいろな人が意見を言い合っているのは、やはり「勝ち負け」への熱い思いがあるからだと思います。

今回の「侍JAPAN」は、準決勝の試合がどちらかというと静かなまま終わってしまったこと、また大会前の評価があまり高くなったこともあり、「良くやったのではないか」と思った人も少なくないかもしれません。
他の参加国のレベルアップや、勝ちへの執着度の高まり(ドミニカ共和国ですら、決勝戦の初回に送りバントをしてきた)を見て、「もはや、どの試合も簡単に勝てる大会ではない」ことも強く感じました。

ただ、やっぱり負けたら悔しいんですね。戦った選手達の多くも、かなりの悔しさを抱いたり、また後で湧き上がったりしてきたのではないでしょうか。
「IBAFプレミア12」の開催予定もあり、今後どのようなタイミングで、トップレベルの野球の国際大会が開かれるかわかりませんが、負けて悔しいという思いは、あまり何回もしたいものではありません(^^)。

「結果」と「そこに至るプロセス」を、どのように作っていくのか。
日本野球界に大きな、そして取り組みがいのある課題が、今回のWBCで生まれたように思います。
Commented at 2013-03-22 08:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by momiageyokohama at 2013-03-22 11:04
多めに選んで最後に落選させるという方式は、前回、原監督が指揮を執った第2回大会でも取られた方式ですね。個人的には「実際の調整具合を見る」という意味では一つの策であると思いますが、現場の選手や取材記者からも否定的な声が多いようなので、次回はやめた方がいいかもしれませんね。
by momiageyokohama | 2013-03-22 01:51 | WBC | Comments(2)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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