統一戦のそのあと
2012年 06月 22日
ボクシングファン注目、そしてボクシング界にとって一般ファンにもボクシングの素晴らしさをアピールする大きなチャンスとなった一戦は、激闘の末、井岡が3-0の判定で勝利。翌日のスポーツ紙でも大きく取り上げられ、視聴率も関東18.2%、関西22.3%と、久々に「ボクシング」が多くの人の眼に触れる結果となりました。
今回の現役王者同士のマッチメイクというこれ以上無い一戦には、試合前、期待感を感じるとともに、実は不安も感じていました。
不安の一つは、実力的に優位と思われる井岡の一方的な試合に終わってしまわないかということ(世界初挑戦は無敗の王者にKO勝ち。初防衛ではランキング1位を大差判定で下し、2度目の防衛は1RKO。対する八重樫は、まだ防衛は一度も無しという状況)。
もう一つの不安は、ジャッジがドロー前提でのジャッジメントをしやしないかということ(正直、最近のボクシングのジャッジメントへの信頼性は著しく低い)。
しかし、実際行われた一戦は、左ジャブに代表される井岡の予想どおりの攻防の見事さ、さらには2Rで早くもまぶたを腫らしながらも予想をはるかにしのぐ八重樫の回転力と気持ちの強さによって、十分見ている人にボクシングの素晴らしさが伝わる試合となりました。
一方、ともするとその素晴らしい台無しにしかねないジャッジの方は、井岡が優勢に見えたにもかかわらず、4Rが終わった時点で三人のジャッジともドロー。この時点で、「これは、もしや…」と最悪の結末も予想しましたが、結果は1~2ポイント差で、三者とも井岡に勝ちをつけたということで、なんとか胸をなでおろしました(ちなみに、自分の判定は井岡の4ポイント勝利)。
それにしても、4Rの三者ドローに見られるように、本当にジャッジの正確さに対する疑念は深まるばかり。序盤とは逆で八重樫がかなりいいパンチを当てていたように見えた終盤のラウンドは、今度は井岡の方にポイントをつけていたジャッジが多く、それこそ「ラウンドごとのジャッジというより、全体の流れを考えて調整してるだけのジャッジじゃねえか?」と思ってしまいました。
話の角度を変えますが、今回、この一時だけを見ると成功に終わった統一戦ですが、両選手のボクサーとしての素晴らしさもさることながら、この一戦を実現にこぎつけた井岡陣営、八重樫陣営の実現力は本当に素晴らしいと思います。
ボクシングマガジンに掲載されていた、両陣営のプロモーター、大橋秀行氏(大橋ジム会長・日本プロボクシング協会長)と、井岡一法氏(井岡一翔トレーナー)のコメントを以下に紹介します。
「先頭に立ってこういう統一戦をやらなければ、協会長としてボクシング界の将来を語れるはずもないでしょう」(大橋氏)
「僕は、一人のプロモーターとして、大橋会長は日本プロボクシング協会の協会長として、ボクシング界を盛り上げたいと思ってきた。その互いの思いが一致して実現した統一戦です」(井岡一法氏)
多くの難問もあっただろうなか、この一戦を現実のものとした両陣営には、改めて感謝したいと思います。
さて、試合を終え、八重樫選手とがっちり腕を交わした後、インタビューで「ここはまだまだ通過点」と言い切った井岡。
日本人初となる「4階級制覇」という目標も掲げているようですが、うわべだけの4階級制覇は、ほとんど価値はないでしょう。もちろん、そのことは分かっているだろう井岡陣営だと思いますが、そんななか、スポーツ紙面で出てきたのが、現WBAライトフライ級(ミニマム級の1階級上)であるローマン・ゴンサレス(ニカラグア)という名前。
これまでの戦績は、32戦32勝27KOというパーフェクトなレコード。
最初に見たのは、2008年、当時WBAミニマム級王座を7度防衛していた新井田豊との試合。この試合、新井田もかなりスピード感あふれるボクシングを展開し、両者の打ち合いは肉眼では確認できないほどの速さでしたが、次第に腫れていく新井田のまぶたで、ゴンザレスのべら棒の無い速さとパンチ力を感じさせられました。
結局、試合は4R、新井田のまぶたが腫れ上がったところで、ドクターストップにより終了。ゴンザレスは自身初の世界王者を獲得しました。
その後、元世界王者でもある高山勝成を判定で下す(逆に言えば、高山はこれまでゴンザレスにKO負けしなかった数少ないボクサーとも言える)など、3度防衛を重ねたのち、階級を上げ、2010年にはライトフライ級のベルトも獲得しました。
自分のなかでは、あのリカルド・ロペス(90年代、ミニマム級(当時の呼び名はストロー級)で勝ちまくった名ボクサー、生涯戦績は52戦51勝1分37KO(つまり無敗で引退))に匹敵するのではないかというぐらい、強いボクサーです。
正直、今の実力を考えると、井岡一翔が勝つ可能性はかなり難しいのではと思ってしまう強豪。少なくとも何戦か挟んでから対戦するのがベターな選択ではないかとも思います。
ただ、これだけの強豪との試合は、また見ている人の心に訴えかける試合になることも間違いないでしょう。
それこそ、たとえ負けたっていい(もちろん、試合をやる以上は、そんなことはこれぽっちも思わないでしょうが)。世界のトップというものを肌で感じ(それはファンも含めて)、またその敗戦から立ち上がっていく姿も一つの「ボクサー」としての生き様ではないでしょうか。
それこそ、今年の大晦日に、いきなりゴンザレスとの一騎打ちなんてこともあるのでしょうか…。
さて、今回の統一戦が盛り上がりを見せて終わったことで、実現すれば、同じく同階級現役世界王者同士の対決となる内山高志vs粟生隆寛の対決(WBA・WBCスーパー・フェザー級)への「見たさ度」もかなり上がりました。
今年の最初の頃は、内山には同じく同級王者(WBO)であるエイドリアン・ブローナーあたりとアメリカのリングで戦ってほしいなあなんて思っていましたが、「どちらが勝つかわからない」という意味では、ともすると井岡vs八重樫以上の期待も膨らむ内山vs粟生の一戦。
いまだ次戦の予定が決まらない西岡利晃の動向は少し心配ですが、「次は世界戦しかやらない」と言い切っている長谷川穂積も含めて、ボクシング界にとって、慌ただしい、そしてその存在をアピールできる、今年の下半期になるかもしれません。



























