大晦日の衝撃弾
2012年 01月 11日
今年もよろしくお願いいたします。
さて、2012年一発目は野球ネタ…、ではなくボクシングで行きたいと思います。
大晦日、WBCミニマム級チャンピオンの井岡一翔と、WBAスーパー・フェザー級チャンピオンの内山高志がそれぞれ防衛戦を行いました。
結果は、井岡がわずか1R1分38秒でKO勝利。内山も、試合巧者と言われる暫定王者ホルヘ・ソリスを、11R早々に左フックで失神KO。
両者とも、その強さを強烈に印象付ける勝利で、大晦日の地上波放送という晴れ舞台を飾りました(なお、挑戦者としてWBA王者に挑ん細野悟は大差判定負け)。
井岡の場合は、対戦相手がランキング10位、キャリアも浅い(9戦目)ということで、ある程度、差をつけての勝利が予想できましたが、まさかあれほど早く決着が着くとは思いませんでした。
試合後、TBSの野暮ったい演出(スタジオからのビートたけしによる表彰)がありましたが、戸惑いつつも、それを受け入れる姿に、逆に井岡の好青年ぶりに好感をもった人も多かったのではないでしょうか。
一方、内山は、右拳負傷によるブランクにより11ヶ月ぶりの試合、しかも今までのなかでは一番の難敵と思われたソリス相手に、中盤あたりから試合を優位に進め、10Rには強烈な左ボディをヒット。そして11Rに、KO劇が多かった初期のK-1でも見なかったような痛烈なKO劇。
試合後、「ボディをフェイントにして(顔面を)狙ったパンチ」と内山がコメントしていましたが、正直、スローで見ても言われないとわからないほどのミクロ単位のフェイント(ソリスが目のいい選手だったがゆえに反応したという部分も大きかったようですが)。左一本で、三浦隆司を棄権に追い込んだ前戦に続き、改めて内山のポテンシャルの凄さを見せつけられた試合となりました。
これで、日本ジム所属の世界チャンピオンは8人のまま。この数は、過去最多です。
ただ、その数ほど、これらのチャンピオンが一般的に知られていないというのもまた事実。
その原因の一つが、ボクシング団体の乱立(WBA・WBC・IBF・WBO)、そしてその一つであるWBAによるスーパー王者、暫定王者など王者の乱発といえるでしょう。
暫定王者は、本来、チャンピオンが怪我や病気によって長期にわたって防衛戦を行うことができない場合に設けられる地位のはずなのですが、WBAの場合、ほぼすべての階級に暫定王者がいる状態。しかも暫定王者が防衛戦をやったりすることもあるので、もう何がなんだかという状態。
また、スーパー王者は、他団体の王座を獲得したチャンピオン、また相当数、防衛回数を重ねている選手に与えられる王座なのですが、その場合、またスーパー王者とは別に正規王者のチャンピオン戦が行われる(亀田興毅の王者獲得はこのケース)という摩訶不思議な状態。
ただでさえ、団体が複数あってチャンピオンの価値が下がっているのに、これだけチャンピオンが乱立しては、誰が最強かまったくわからない状態になってしまいます。
そんな状況下ではありますが、ミニマム級(47.61kg)からスーパーフェザー級(58.97kg)までの8階級・4団体のうち、8人の日本人が王座を獲得しているという状況は、日本ボクシングの歴史のなかでも隆盛期といっていいのではないでしょうか。
ちなみに、1月7日現在の、前述の階級の各団体チャンピオン(暫定王者を除く)は以下のとおりです。
※団体名の略称 A…WBA、C…WBC、F…IBF、O…WBO
※日本ボクシングコミッションは、原則WBAとWBCの王座のみを認可。
※スーパー・フェザー級の上には9階級。一番重いヘビー級は、90.72kg超。
※(休養)は休養王者(負傷によって長期離脱している王者)
【スーパー・フェザー級】 (58.97kg)
〔A〕内山高志(日本)
〔C〕粟生隆寛(日本)
〔F〕ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)
〔O〕エイドリアン・ブローナー(フィリピン)
【フェザー級】 (57.15kg)
〔A〕〈スーパー〉クリス・ジョン(インドネシア)/セレスティノ・カバジェロ(パナマ)
〔C〕ジョニー・ゴンサレス(メキシコ) ※長谷川穂積にKO勝ちし王座奪取/〈休養〉エリオ・ロハス(メキシコ)
〔F〕ビリー・ディブ(オーストラリア)
〔O〕オルランド・サリド(メキシコ)
【スーパー・バンタム級】 (55.34kg)
〔A〕リコ・ラモス(メキシコ) ※昨年、当時王者だった下田昭文にKO勝ちし王座奪取
〔C〕西岡利晃(日本)
〔F〕タカラニ・ヌドロブ(南アフリカ)
〔O〕空位
【バンタム級】 (53.52kg)
〔A〕〈スーパー〉アンセルモ・モレノ(パナマ)/亀田興毅(日本)
〔C〕山中慎介(日本)
〔F〕アブネル・マレス(メキシコ)
〔O〕ホルヘ・アルセ(メキシコ)
【スーパー・フライ級】 (52.16kg)
〔A〕テーパリット・ゴーキャットジム(メキシコ)/〈休養〉清水智信(日本)
〔C〕スリヤン・ソー・ルンビサイ(タイ)
〔F〕ロドリゴ・ゲレーロ(メキシコ)
〔O〕オマール・ナルバエス(アルゼンチン)
【フライ級】 (50.80kg)
〔A〕エルナン・マルケス(メキシコ)
〔C〕ポンサクレック・ウォンジョンカム(タイ) ※内藤大助と4度対戦。一昨年、亀田興に勝利し王座返り咲き。
〔F〕モルティ・ムサレーン(南アフリカ)
〔O〕ブライアン・ビロリア(アメリカ)
【ライトフライ級】 (48.99kg)
〔A〕ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)
〔C〕コンパヤック・ポープラムック(タイ)
〔F〕ウリセス・ソリス(メキシコ)
〔O〕ドニー・ニエテス(フィリピン)
【ミニマム級】 (47.61kg)
〔A〕八重樫東(日本)
〔C〕井岡一翔(日本)
〔F〕ニコシナシ・ジョイ(南アフリカ)
〔O〕モイゼス・フエンテス(メキシコ)
上記のように、8階級34人中、日本人は8人を占めています。
このうち、試合内容から判断して、それぞれの階級のチャンピオンの中でも上位に位置するのは、内山、西岡、井岡の3人といえるでしょうか。
ただし、これらチャンピオンのなかに、ノニト・ドネア(フィリピン/バンタム級から階級変更のため、王座返上)、ユリオルキス・ガンボア(キューバ/全WBAスーパー&IBF王者。当日計量拒否などの理由で王座剥奪もキャリア無敗)といった、各階級通じても圧倒的に評価の高いボクサーが含まれていないのが、また一般の人にはわかりにくいところ。なお、ドネアは、次戦でWBOのスーパー・バンタム王座決定戦をクリアした後、西岡と対戦する可能性が報道されています。
さて、話はちょっと変わるのですが、正月、実家に帰って親と話しているなかで、今知っているボクサーを聞いたところ、亀田、そして井岡は知っていたものの、長谷川、西岡は知りませんでした。
5年間10度にわたって防衛をし続けた長谷川と、ラスベガスで日本ボクシング界に残る快挙を成し遂げた西岡。しかし、その知名度は一般的には必ずしも高くない。8人というチャンピオンの数を誇る一方で、これが今の日本のボクシングの現実なのかもしれません。
ちなみに、あの長谷川穂積も、3度目の防衛戦ぐらいまではアルバイトを続けていたと記憶しています。
自分が本格的にボクシングを見るようになったのは、辰吉・鬼塚の時代あたりからですが、身を削って一戦に懸ける(時には命も)スポーツにしては、その置かれている環境はまだまだ厳しいと言わざるを得ません。
前述の井岡の試合、そして内山の試合の視聴率は、それぞれ6.4%、4.2%でした(前後の時間帯あるいは番組全体を通しての数字)。
なお、井岡の初防衛戦の時の視聴率は16.6%(2011年8月)だったので、現在の王者のなかでは、今後、実力・人気を兼ね備えたボクサーとなっていく可能性があります。
残念ながら、亀田、内藤らの認知度は、ボクシング界全体への世間の関心にはつながらなかった感があります。今後、井岡をはじめ、その他の実力のあるボクサーたちを、ボクシング界・またメディアが協力しながら、正当な評価を受けるような、そして子どもたちや若い人の憧れになるような状況に少しでもなってほしいと、一ボクシングファンとして思った年末でもありました。



























