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「弱かったから負けた」と考えるのが自然では?

北京オリンピックでの野球日本代表の敗北から、早いものでもう1週間が過ぎました。

オリンピックに出場していた選手の多くが出場登録され、NPBでプレーをしています。
その一方で、新井選手、川﨑選手は「骨折」との報道、残りシーズンの出場は微妙とも絶望とも言われています。

さて、その北京オリンピック。
巷では、その結果を受ける形でいろいろな報道がされていますが、自分が9試合を見ての一番感じたのは「日本の選手たちの力不足」でした。
その思いは、日本がアメリカに負けた日の夜に行われた「韓国 vs キューバ」の決勝戦を見てさらに強くなりました。
決勝に残ったから言うわけ(^^)ですが、その決勝戦の試合内容を見ても、悔しいけれど、今大会優勝を争うにふさわしいのはこの2チームだったのかなと思ってしまいました。

今回、両チームでそれぞれ印象に残ったのは、韓国の「投」キューバの「打」
韓国投手陣では、日本戦で2試合続けて先発で好投したキム・グァンヒョン投手はもちろんのこと、日本戦との1試合目で最後、G.G.佐藤選手、森野選手を斬って取ったサイドスローのチョン・デヒョン投手(決勝でもダブルプレー締め)、決勝戦であわや完投勝利かというピッチングを見せたリュ・ヒョンジン投手など、「粘り強く相手が打ちにくい所に投げられる投手が多いな」という印象を持ちました。
一方、キューバの打撃陣は、スイングの凄さに加え、その反面脆さも同居しているのかと思いきやそうではなく、2ストライクを取られると際どい球をしっかり見極める、かつ追い込まれてもストライクゾーンに来ればしっかり振り切るというその打撃に、思わず「う~ん、始末悪いなあ(^^)」と思いました(日本のバッテリーもおそらくそれを肌で感じたでしょう)。

    ◇  ◇  ◇

話を日本代表に戻します。
今回のような結果に終わると、どうしても負けた「原因探し」というよりも「戦犯探し」という感じになってしまいがちですが、準決勝で韓国に負けただけではなく、予選リーグ、さらに3位決定戦も含めると、キューバ、韓国、アメリカとの対戦で0勝5敗と一度も勝てなかったという事実を考えると、繰り返しになりますが、「実力負け」以外の何物でもない、と考えるのが自然だと思います(たとえ、予選は必ずしも勝たなくてもいいという状況があったにせよ)。

ただし、一方で今回の日本代表は、「NPBでプレーしているなかでのほぼベストのメンバー」であったとも思っています(だからこそ日本野球の力不足を感じたのですが)。
今回のメンバーは、星野監督の選出に問題があったのではという声もありますが、出場したメンバー、そして選ばれなかったメンバーを細かく見ていったときに、そんなに批判されるべきメンバーとは思いません。
ということで、具体的に選手の選出について見ていきたいと思います(なお、引用した成績は代表選出時(7/17)のものが入手できなかったので9/2現在のもの。見づらくなるので、所属球団は省略しました)。

投手・野手の数
各ポジションの選手を見ていく前に、一つ触れておきたいことがあります。
オリンピックの選手登録数は24人です。一方、五輪と比較されることの多いWBC(第1回)の選手登録数は30人。この6人の差は非常に大きいです。
今回の北京では、投手が10人、野手が14人でした。
アテネの時は、投手11人、野手13人だったので、それから野手が1人増えたことになります。これは怪我を抱えている選手が多かったため、と言われていますが、「アテネのときは岩隈と安藤がほとんど投げていなかった」という星野監督のコメント記事(デイリースポーツ)も見たことがあるので、そうした分析もあって最終的に投手1減、野手1増に踏み切ったのではと思います。

ただし、それでも野手14人というのは、実際に試合をやってみると意外と少ない数です。スタメン9人のほかに交代選手が5人。そのうち、守備固め的に考えている選手を1人、試合に出ることの少ない捕手を1人と考えると、実質残り3人しか交代要因として考えられないという状況になります。
ということは、スタメンの選手が不調(あるいは怪我)だとしても、替えられるのは3人ぐらいまで。あとの選手に関しては、下位で我慢して使うなりDHで辛抱してもらうなりして起用せざるを得ないという点で、五輪の24人というのはかなりギリギリの人数での戦いであるということが言えるでしょう(もちろん、これまでの大会も同条件。そして他国も同条件ですが)。

投手> 

次に、今回の投手10人を見ていきます。

 ダルビッシュ (12勝4敗 防 1.97)
 和田 (8勝4敗 防 3.48)
 杉内 (9勝5敗 防 2.56)
 涌井 (8勝8敗 防 3.25)
 成瀬 (6勝6敗 防 3.30)
 川上 (7勝5敗 防 2.54)
 田中 (6勝6敗1S 防 3.65)
 藤川 (4勝1敗32S 防 1.00)
 岩瀬 (3勝3敗29S 防 2.72)
 上原 (3勝4敗1S 防 5.08)

今大会のオリンピック、投手陣は、下記のような起用になりました。

先発)-ダルビッシュ・和田・杉内・成瀬・涌井
中継ぎ)-川上・田中
抑え)-藤川・岩瀬・上原

上では、3つの役割に分類しましたが、涌井・成瀬投手などは、中継ぎとしても登板しましたね。
今回、結果的に打たれたことで、選出に疑問が上がったのは、川上投手、岩瀬投手ということになるでしょうか。
ただし、もしそうした意見を出すのであれば、「では誰を選べばよかったのか(もちろん、それは誰をはずせばよかったのかと同義語)」も提言すべきでしょう。
ということで、今度は選ばれなかった選手たちについて見ていきたいと思います。

先発陣
現在、規定投球回に達していて、防御率3.5以下の日本人投手は下記のとおりです。

●セ・リーグ … 内海(2.21)、下柳(2.63)、岩田(2.75)、石川(2.78)、館山(2.88)、安藤(3.03)
●パ・リーグ … 岩隈(1.94)、小松(2.68)、帆足(2.74)、大隣(3.12)、山本省(3.28)

このなかで、「なぜ選ばなかったのか」の一番手に挙がるのが、岩隈投手でしょう。もし投手を11人選んだとしたら、メンバー入りしていたかもしれません。それでも落選した理由としては、あくまで推測ですが、「中継ぎとして登板させることが難しかったから」ではないでしょうか。ダルビッシュ投手、和田投手、杉内投手、涌井投手(あるいは成瀬)で先発陣はほぼ埋まっている状態。そうなると、欲しいのは中継ぎ適性のある選手。岩隈投手は防御率はいいものの、決して立ち上がりがいいピッチャーではない。また、前回のアテネでいい成績を残せなかったこともあいまって落選になったのではないでしょうか。

また、その他の上記の選手を見て、今回選ばれた10人を押しのけてでも入れてほしかった投手はいるでしょうか。
内海投手は、防御率こそ抜群の成績を残しているものの、大舞台で任すには「?」がつく印象が拭えず。岩田投手、小松投手、大隣投手は、まだ実質活躍1年目という選手たち。石川投手、館山投手も防御率ほどの安心感はなく、下柳投手は年齢的なところがネック(まあ選出しても本人が固辞するでしょうが(^^))。
このラインナップのなかでは、安藤投手あたりはは中継ぎ適性がありそうな印象(しかも前回オリンピックも経験)がありますが、「怪我がち」という部分がが少しひっかかるところではあります。
また、帆足投手、山本省投手の両左投手も、中継ぎでの登板はおそらく可能ながらも、やはり「そこまでの信頼感はなく…」といった印象です。

中継ぎ・抑え
今回、岩瀬投手が打たれたことにより、敗因のポイントとして挙げられることも多かった救援陣。
また、先発投手を中継ぎに回すのではなく、「中継ぎのスペシャリストを選ぶべきだったのでは」という意見もあります。
では、今回選ばれなかったメンバーで、選んでもおかしくなかった投手はいるでしょうか。
今シーズン、各球団の救援陣で目立った成績を挙げている選手or登板の多い選手を見ると次のとおりになります。
(S…セーブ、H…ホールド、以下の数字は防御率)

(右投手)
●セ・リーグ … 永川(28S・2.05)、久保田(31H・3.12)、押本(25S・2.73)、渡辺亮(22H・2.50)、松岡(1.63・21S)、横山竜(16H・1.50)、梅津(2.66)、
●パ・リーグ … 加藤大(2.30・29S)、MICHEAL(22S・1.93)、荻野(21S・2.31)・武田久(3.88・21H)、久米(15H・2.52)

(左投手)
●セ・リーグ … 山口鉄(19H・2.01)、江草(2.63)
●パ・リーグ … 川崎(23S・2.72)、星野智(20H・2.89)

数字から言えば、永川投手、加藤大投手、MICHEAL投手、荻野投手あたりが、五輪選出メンバーに入ってもおかしくない数字を残しています。しかし、今シーズン、見事再生したとはいえ、五輪の試合の終盤を永川投手に任せるのはちょっと怖い…と感じる野球ファンは少なくないでしょう(^^)。
また、加藤大投手、MICHEAL投手、荻野投手も、ときたま炎上することを考えると、数字ほどの信頼感はまだなくといった印象(MICHEAL投手は今季序盤は不振で二軍でしたし)。

押本投手、松岡投手、横山投手、梅津投手といったところは、今季見事に変貌を遂げた(押本投手は一昨年も良かったですが)投手たちですが、五輪メンバー選出の頃は、それぞれちょっと調子を落としたり、怪我をしていたりという状態でした。
また、久保田投手、武田久投手の実績十分の両投手も、今季はマウンド上で痛打される場面が例年以上に目立ちます。
渡辺亮投手、久米投手も、今回選ばれたメンバーを押しのけてまで入り込むには、もう一つ「これ!」といった部分に欠けたような気がします(なお、久米投手は現在二軍)。

一方、左の中継ぎ陣も、数字こそ挙げてはいるものの、山口鉄投手は、まだ大舞台に上げるには怖いし、長いイニングを投げられる川崎投手も序盤は痛打を浴びる場面を少なからず目にしました。また、星野智投手は完全に左のワンポイントとなるので、10人という枠を考えると、もう少し長いイニングを投げられる投手の方がほしいところ。江草投手は、いろいろな意味で使い勝手のいい投手ですが、果たして岩瀬投手(あるいは川上投手、田中投手)を外してまで入れた方がよかったかと言われると……。

中田翔選手、由規投手の選出が話題になった第一次候補選出ですが、そうした派手なラインアップの一方で、鈴木義広投手、前述の川崎投手といったあたりも選出するなど、星野監督も決して中継ぎ専門投手の選出を考えていないわけではなかったと思います(ちなみに、鈴木選手はその後故障で長期離脱)。しかし、こう見てくると、自信を持ってあの10人の中に選出できるだけの中継ぎ投手が、今年のNPBにはあまりいなかったと言えるのではとも思います。

なお、番外編(?)として、上記には挙げませんでしたが、馬原投手(過去2年の防御率は1.65、1.47)が万全の状態であれば、選出の可能性はあったのかもしれません。ただし、今季は故障による長期離脱で、初登板はメンバー発表後の7月26日でした…。

こうして、今回選ばれなかったメンバーを見たときに、あの10人の誰かをはずして、絶対にこの選手を入れるべきだったと言える選手は残念ながらあまりいなかった、というのが自分の見方です。

中継ぎ適性(経験)がある川上ではなく、やはり今季出色の成績を残している岩隈投手を選ぶべきだった…
今シーズン、例年ほどの成績ではない岩瀬投手(または上原投手)ではなく永川投手、加藤大投手を選ぶべきだった…
さらには、前述の10人の誰か(例えば先発4・5番手の成瀬投手か涌井投手あたり)を外して、左の中継ぎ専門色として江草投手を入れるべきだった…

「各選たちの国際試合経験のことも含めると、正直そうは考えられない」というのが個人的な意見です。


  ◇  ◇  ◇

野手のことについても含め、今日一日で書くつもりが、あまりにも長くなりすぎてしまいました(^^)。
続きはまた明日以降に書きます。
Commented by しけたろう at 2008-09-03 12:07 x
分析お疲れさまです。
野手に関してもそうですけど、選手選考に関してはNPB全体として意外と層が薄いと思いますね。
あと、変則フォームで結果を出してる投手が少なくなりました・・
渡辺俊介ぐらいですかね。
左のサイドとかいないですね・・星野(西武)はそうかな

かつては社会人が金属バットをおさえるべくそういう投手を
作ってましたが最近はそこまでしなくてもいいというのが
あるんでしょうか。
Commented by momiageyokohama at 2008-09-04 22:11
>しけたろうさん
コメントありがとうございます。
具体的に各チームの選手を改めて見ていくと、投手も野手も、ファンが思っているよりはNPBの選手層は厚くないように感じました。
また、仰るように、変則フォームの投手(もちろん、それで結果を出している投手)など、初対戦だと相手がかなり面食らうかなといった投手もあまり見あたりません。
(渡辺俊投手は、今季の調子はまずまず。また五輪経験者ではありますが、WBCのキューバ戦では、結構捕まりかけたところもありましたね)

とりあえず、野手についても、グルッと見ていこうと思います(^^)。
by momiageyokohama | 2008-09-03 03:14 | 五輪野球 | Comments(2)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


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