野球賭博問題と向き合う「覚悟」
2015年 10月 06日
巨人の福田投手が、野球賭博に関与。その対象は、高校野球、メジャーリーグ、そして日本のプロ野球。そのなかには、巨人戦も含まれていたとのこと。
その野球賭博を仲介したのは、同じ巨人の笠原将生投手が紹介した人物との報道。
球界再編問題が起きてから11年。
このところはネガティブなニュースも少なく、各球団の意欲的な取り組みもあって、新たに野球ファンになる人も増えつつあるなかでの、このニュース…。
詳細は、今後、さらに明らかになってくるだろう(どれが事実で、どれが憶測による報道なのかを見分ける眼は、大事になってくるが)が、「野球人が、野球を裏切った」という意味では、「怒り」もそうだが、「悔しさ」を感じた。
実際のところ、福田投手が、どれぐらいの(軽い)気持ちで、今回の事態に手を染めたのかはわからない。
9月上旬に、「賭けを辞めよう」と仲介の人物にメールを送っていたとのことなので、当然「不味いことをしている」という認識はあったのだろう。
しかし、すでに、もう引き返せないところまで来てしまっていた…。
野球賭博については、それほど詳しいわけではないし、「黒い霧事件」もリアルタイムでは知らない。
ただ、野球賭博自体は、非常にギャンブル性が高いという話は、漏れ伝わってくる。
そして、単なる勝敗ではなく、ルールとして、ハンデが設定されているのも特徴。その意味では、勝敗に直接関係の無い、試合の趨勢が決まった後の投手・野手起用なども大きな賭けの対象となる。もし、そこに、当事者である選手らが関わってくるとなると、大多数のファンが気づかないなかで “見えない八百長” が行われる可能性もあり得る。果たして、野球賭博を行った福田投手、そして紹介者の笠原投手は、そこまでのことも考えていたのだろうか。
そして、今回のニュースを聞いて、もう一つ思ったこと。
それは、「こうした危険性は、決して、一球団に限ったことではないのではないか」ということ。
大多数の野球ファンは、選手や監督・コーチと直接のつながりを持ってはいないが、野球界には、様々な支援者、関係者、後援者がいる。もちろん、そうした人たちに支えられている部分も大きいだろうが、そこには当然、こうした「甘い誘い」も潜んでいる。
プロ野球という世界は、決して、日頃喧伝される “美談” や ”いい話”ばかりの世界ではないだろう(もちろん、そうしたことを、子どもの頃から知る必要はないと思うが)。
今回の件とリンクするかはわからないが、二軍にも、「明日の活躍を夢見ての努力」だけでなく、当然「澱み」もあると思われる。
そこに、「甘い誘い」がつけ込む要素は、十二分にある。
なお、それこそ「黒い霧事件」まで表立ったものではなくても、今より遥かにプロ野球が鷹揚だった時代、この類の話は、おそらく大なり小なりあったかもしれない。
また、現在はプロ野球界全体で「暴力団等排除宣言」がなされているが、それ以前の時代は、そうした人物たちとつながりのあった野球関係者も少なくなかっただろう。
しかし、今、「野球」が置かれている立場は、その時代とは大きく違う。
もはや、「野球があって当たり前」の時代ではない。「野球」は、様々なスポーツのなかから「選択」される立場にある。もっと言うと、スポーツ以外のカテゴリーの趣味などもひっくるめたいろいろな領域のなかから「面白い」「見る価値がある」と認識されて、初めて興味をもってもらえる立場にある(もちろん「親や知り合いが野球好きで…」というパターンも多いだろうが)。
そうしたなか、日頃、自分が真剣に見てきた試合に、“八百長” の可能性が浮上したときに、そのスポーツを果たして、今後も見ようと思うだろうか(「野球賭博→八百長」という論拠に関しては、さきの “見えない八百長”のところで書いた)。
今回の件が、今後、どのような展開になるかは、現時点ではわからない。
ただ、各プロ野球選手、そして球団、そしてプロ野球機構は、改めて、プロ野球が、 “勝敗”に関わる世界である以上、そして、様々な人が寄ってくる世界である以上、「こうしたことが起きる“危険性”というのは、常にあり得る」ということを再認識したうえで、野球ファン、さらには野球ファン以外の人たちにも、野球界としての信用たり得るものを、野球界の「覚悟」として見せる必要があるのではないか。
野球ファンとして、今回の件で、野球ファンが離れていってしまうとしたら非常に悲しいが、その要素も十分はらんでいる問題だと思う。
せっかく、野球の「面白さ」「素晴らしさ」「可能性」を、様々な人たちが伝える努力をしているなか、そうした灯を消してはいけない。