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改めて2013年の野球を振り返って

前々回の記事で、2013年のNPBで印象深かったシーンを10挙げたのですが、今年もあとわずかということで、今シーズンの野球の総括を改めて。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

先日のシーズン振り返りではNPBを中心に取り上げたため触れなかったのですが、2013年の野球を語るうえでどうしても触れておきたいシーンが2つあります。

一つは、WBCの第2ラウンド初戦の台湾戦、9回表の井端同点タイムリー
2-3と一点ビハインドの状況。2アウト二塁。2ボール2ストライクからセンター左へ放った打球は、まさに井端の“技術”と“読み”の結晶ともいえる一打でした。
特に、あの土壇場の場面で、井端の「代名詞」とも言える右打ちではなく、内角ストレートをセンターへ、しかも試合後の談話曰く、セカンドランナーがホームに返りやすいように敢えてあの場所に打った(ライトへ打つとホームまでの距離が短いため、刺される可能性がある)というところに、改めてプロの“凄さ”を感じました。
なお、その読みの“鋭さ”は、2年前のシーズン、雌雄を決するクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第5戦で、ヤクルト・館山のインコースのボールを“レフトスタンド”に叩き込む「優勝決定弾」も生み出しています(その打席での読みの内容については、『2番打者論(赤坂英一著・PHP研究所)』に詳しく書いてあります)。
そんな、一躍、野球ファンの“ヒーロー”となった井端が、WBCの9ヶ月後に巨人に入団すると、そのとき誰が思ったでしょうか。“人生はわからない”とは言いますが、プロ野球では時折、数か月前には想像もつかなかったことが起こったりします。

さて、もう一つは、2勝2敗で迎えたレッドソックスvsタイガースのア・リーグチャンピオンシップ第5戦。4-3で1点リード、8回1アウトという場面からの登板となったレッドソックス・上原のパーフェクトリリーフと、試合後の疲れ切った表情。
ワールドシリーズ制覇の道のりのなかで最もポイントとなったといってもいいこの試合で、8回からのイニングまたぎにもかかわらず、いつものように完璧なリリーフを見せた上原。
しかし試合直後のNHKのインタビューでは、まさに「精魂尽き果てた」といった顔をしており、「まだ足がガクガク震えている」とコメントするなど、外からは想像できないほどのプレッシャーの中、投げていたことがうかがえました。
得てして、ワールドシリーズ制覇の瞬間の画だけが切り取られがちな上原ですが、こうした1試合1試合の積み重ねの末、ようやくたどり着いた栄冠だということを忘れてはいけないんだと思います。
なお、今シーズンの上原のレギュラーシーズンの成績は、73試合(74 1/3イニング)で防御率1.09、四球9。ポストシーズンの成績は、計13試合(13  2/3イニング)で防御率0.66、そして四球はゼロです。

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さて、「統一球変更隠蔽」などネガティブな話もあった2013年のNPBですが、その一方、新たな動きも見られた年でもありました。

その象徴とも言えるのが、野球日本代表への小久保監督就任だと思います。
第3回WBCでは難航を極めた監督選考でしたが、その後を受けた小久保監督の就任は、ファンの立場からすると、割とあっさり決まった感があります。
いろいろな思惑や球界内バランスが絡んで右往左往した前回の監督決定と比べると、かなりスマートに決定した印象。決定までの経緯について詳しくはわかりませんが、以前と比べると、NPBが主導権を握る割合が増えているように推測されます。

その一翼を担っている荒木重雄氏(NPB特別参与)と前沢賢氏(NPB特別参与補佐)については、たびたびメディアでも紹介をされています。
これまでは、「NPB」、「読売」、あるいは「球団フロント」といったカテゴライズで議論をされることの多かったプロ野球ですが、今後は、より個々の顔が見える形(例えば「NPBの○○事業部長が○○○○といった取り組みをしている」といったような)での論議になっていってほしいと考えます。
「NPB」「フロント」といったざっくりとした括りでの議論というのは、ともすると印象批評になりやすく、生産性の無いものだったりします。しかし、本質的に問題を解決するのであれば、より具体的な人物・組織構成をふまえての議論、そして対応・解決策を講じることが必要でしょう。

また、今回の統一球変更の隠蔽問題では、加藤良三コミッショナーが集中砲火を浴びました。ただ、「コミッショナーに全責任がある」「コミッショナー、辞めろ」と批判するのは簡単ですが、正直それだけでは何の解決にもならないと感じています。
「資質のある人がコミッショナーになれば、すべて解決するのか」「そもそも、日本のコミッショナーは権限を振える立場にあるのか」「もし、実際には一般が思っているほどの権限が無い場合、野球界にとって、どのような制度変更をしていくべきなのか」「いずれにしても、コミッショナーだけですべての変革を行うことは難しいと思われ、その補完のためにはどういう組織作りをすべきなのか」といったことが、“具体的に”議論され、改革されていかないと、単なる言葉のぶつけ合いに終わってしまいます。

今回の小久保監督誕生などを見ると、おそらく今までとは違った動きがNPB、また日本野球界に出てきているのだとは思いますが、そうした動きがよりファンにもわかるように、情報がオープンになること、またメディアもそうした具体的な動向を報道していくことで、より野球ファン内の議論も生産性があるものになっていくように思います。
サッカーでは1998年から「サッカー批評(ピッチ上のことだけでなく、フロントの取り組み・Jリーグの“組織”にスポットを当てた記事も多い)」のような雑誌がありますが、これだけ歴史が長いにもかかわらず、野球ではそれにあたる雑誌が見受けられないというのは、実は「野球議論」が未成熟だった(あるいは「読売vsそれ以外」といったような単純な図式で語られがちだった)表れとも言えます。
今後、野球界がより魅力的なものに変わっていくためにも、NPB、野球組織のことがより「具体的に」語られ、ファン間の議論も深まるような流れ(「個人攻撃の増長」という意味ではなく、より「現実的な議論の加速」という意味で)が作られていくようになればと思っています。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

最後に、横浜DeNAについて。
最終的に5位に終わったDeNAですが、それでも5年続いた最下位をひとまず脱出。
野手の補強は、バルディリスを獲得したことで厚みが増しそう(久保の人的補償で誰が放出されるかでまた変わってくるところもありますが)。
一方、懸案である投手陣については、久保、高橋尚を獲得。あとは新たに獲得する外国人投手の成否による部分もありますが、三浦三嶋高橋尚(or 藤井)・久保(or ソト)・井納(or 須田)・加賀美(or 柿田 or 加賀 or 新外国人)という先発の布陣は、例年よりはかなり期待できる?
リリーフ陣の方も心配ではありますが、ソーサが来季37歳を迎えることを考えると、山口の復活は上位進出にむけて必須の要素でしょう。
そのほかでは、ショートを最終的に誰に固定するのか、キャッチャーの使い分け方(今オフ、ドラフト3位で、評価の高い嶺井を獲得)、また首脳陣では高木豊・由一打撃コーチが抜けた影響はあるのか、久々に横浜に復帰した進藤コーチ(打撃コーチ兼作戦担当)、また川村・篠原という若い一軍投手コーチの手腕といったところが、流動的・不安要素でしょうか。

なお、今シーズンの横浜で忘れてならないのが、『4522敗の記憶』『最後のクジラ』という、2冊の横浜(大洋)関連本が刊行されたことです。
正直、ファンの数を考えると関連本が刊行されること自体が珍しく、しかも2冊とも同じ年というのは奇跡的なこと(^^)でしたが、「6年ぶりの最下位脱出」とともに、成績の割にトピックが多かった2013年でもありました。

いずれにせよ、来季は、ここ9年ぐらいのなかでは一番ファンが期待を持って迎えられるシーズンになるでしょう。
来年の今頃、横浜に関してどんなことを書いているか想像すると怖い部分はありますが(^^)、来季は、“狙って”上位をうかがえる戦いをしてくれることを、そして来シーズンで3年目となる中畑監督が、良い順位でフィニッシュすることで、横浜(大洋)にとって別当監督以来33年ぶりに監督4季目を迎えられる(cf. 第1次別当政権が1968年から1972年まで。その後、17人の監督(別当監督の二度目を含む)が3年以内に退団)ことを願っています。
by momiageyokohama | 2013-12-29 03:23 | 野球(全般) | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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