人気ブログランキング | 話題のタグを見る

世界と戦う男たち

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)があったこともあり、今年に入って野球の記事が続きましたが、今回は久々にボクシングの話題を。

先月末、そして今月と、日本人がリングに上がる世界タイトルマッチが続きます。
そのうち4戦は、明日と明後日に集中しますが、3月30日、一般のスポーツニュースではあまり報道されなかったかもしれませんが、2人の日本人ボクサーが、海外にて世界戦に挑みました。


3/30 モナコ
WBA世界ミドル級(72.57kg)タイトルマッチ
王者 ゲンナディ・ゴロフキン (カザフスタン) vs 石田順裕

25戦25勝(22KO)、現在12連続KO中。アマチュアでもオリンピックで銀メダルを獲得するなど、アマ時代の成績は345勝5敗とも言われる、まさにパーフェクトな王者ゴロフキンに、37歳にしてミドル級の世界ランカーである石田が挑戦した一戦。
ゴロフキンは、昨年5月に、日本人ボクサー渕上誠の挑戦を受けていますが、圧倒的な力の差を見せつけ、3RでKO勝利しています。
ただし、今回の石田選手は、世界でも評価されているボクサーであり、昨年のWBOミドル級タイトルマッチでも、敗れたとはいえ、こちらも無敗の王者ピーログ(ロシア)に対し12R戦いきったこともあり、わずかでも可能性を見せてくれるのではと思っていました。

しかし試合は3R、ゴロフキンの強烈な右フックが石田選手の顎をとらえます。その衝撃は、石田選手の体がロープの外へ半分吹っ飛ぶほどでした。
レフェリーはカウントを数えず、そのままゴロフキンのKO勝ち(動画関連記事)。

2010年のWBA世界スーパーウェルター級王座決定戦(この時は敗れ、暫定王座から陥落)以来、メキシコ、ラスベガス、テキサス、モスクワ、そして今回のモナコと、海外のリングに上がり続け、世界へ挑む戦いを続けた石田選手ですが、キャリア35戦目にして初のKO負けという結果に終わってしまいました。

石田選手のブログを読むと「試合から1週間経って、今頃、悔し涙が出てきた」と書いてありましたが、「ここ数年で、世界で最も評価されている日本人ボクサー」と言ってもいい石田選手は、どういった選択をするのでしょうか。


さて、日付としては同じく3月30日にメキシコで行われたのが、この4月からJBC(日本ボクシングコミッション)が加盟を発表したIBFのタイトルマッチ。

3/30 メキシコ
IBF世界ミニマム級(47.61kg)タイトルマッチ
王者 マリオ・ロドリゲス(メキシコ) vs 高山勝成

2009年に、当時のWBAミニマム級王者ローマン・ゴンサレスに挑戦するも判定で敗戦。
その後、JBCが承認をしていなかったIBFなどでの世界タイトル獲得を目指し、JBCに引退届を提出。
以降、約4年にわたり、南アフリカ、フィリピン、そして今回のメキシコと世界で戦い続けた高山選手。
途中、敵地判定に泣かされタイトルを獲得できず、といったことがありながらつかんだ、ゴンザレス戦以降、3度目となる今回の世界挑戦のチャンス。

ただし、開催地は、昨年、荒川仁人が露骨すぎる敵地判定で勝利を奪われたメキシコ。
相手のキャリアが15勝(11KO)7敗と、世界王者にしては敗戦が多いことを差し引いても、かなり厳しい戦いとなると予想されました。

そして結果は…。
3Rにダウンを喫するも、フルラウンドにわたるパンチの出し合いを制し、3-0の判定勝利(動画)。
2007年、新井田豊に判定で敗れ、WBA世界ミニマム級暫定王座から陥落して以来、6年ぶりの載冠となりました。
同時に、これは、日本人ボクサーとしては、あの平仲明信がメキシコにて初回KOでWBA世界スーパーライト級王座を奪取して以来、21年ぶりとなる、海外でのタイトル奪取

高山選手は、これで、WBC(2005年に獲得)、WBAに続き、日本人として初となる3団体の王座(WBAは暫定王座)を獲得したボクサーとなりました。
JBCがこの4月にIBF・WBOを承認したように、WBC・WBAのIBF・WBOへの優位性が無いといってもいい状況のなか、高山選手のIBF王座獲得は、日本ボクシング界にとって、新たなターニングポイントになると思います。
そして、できれば、このことを、単なる「日本人ボクサーの世界王者乱立」ではなく、「本当に強いボクサーは誰か?を決める、ファンにとってワクワクするような試合の増加」という流れに、ボクシング関係者の人には持って行ってほしい。そう、切に望みます。

さて、4月に予定されている、日本人ボクサーが出場するタイトルマッチは以下のカードです。

4/7(日) 大阪
WBA世界バンタム級(53.52kg)タイトルマッチ
王者 亀田興毅 vs パノムルンレック・カイヤンハーダオジム (タイ)

4/8(月) 両国(以下、3戦とも)
WBC世界バンタム級(53.52kg)タイトルマッチ
王者 山中慎介 vs マルコム・ツニャカオ (フィリピン)

WBC世界フライ級(50.80kg)タイトルマッチ
王者 五十嵐俊幸 vs 八重樫東

WBC世界スーパーフェザー級(58.97kg)タイトルマッチ
王者 ガマリエル・ディアス (メキシコ) vs 三浦隆司

4/14(日) インドネシア
WBAスーパー 世界フェザー級(57.15kg)タイトルマッチ
王者 クリス・ジョン (インドネシア) vs 細野悟

明日の亀田興毅の世界戦はTBS系で19-21時、また月曜日の両国国技館の世界戦は日本テレビ系で21-23時に放送されます。

正直、亀田興毅については、ボクシング界のトピックを作ろうと頑張っている部分はあるのかもしれませんが、「パンチを出さなくとも、立っていれば勝利をもらえるボクサー」という状況が変わらない限り、王者として認めたくはないというのが、ボクシングファンとしての気持ちです。
何より、これは亀田陣営の問題というより、WBAの組織本体の問題ですが、スーパー王者がいる階級での王者は、真の王者と認めてはいけないでしょう(現WBA世界バンタム級スーパー王者はアンセルモ・モレノ(パナマ))。そういう意味では、井岡一翔の現在のWBAライトフライ級王者という肩書も、真の王者とは言えないと思います(同階級の現スーパー王者はローマン・ゴンサレス)。

一方、月曜日に放送される山中慎介の世界戦は、「人生が変わる1分間の深イイ話」の番組内で放送されるという形態のようです。
番組表を見ると、他の2戦については深夜放送に回されてしまうかもしれないのですが(ジータスでは生中継)、とにかく、山中というボクサーの素晴らしさを多くの人に見てもらえる、またとない機会だとは思っています。
ただし、対するツニャカオも、真正ジム・山下会長と、かなり山中対策を練っていると思われるところ。いずれにせよ、「これが世界戦だ」と、見る人を納得させるような試合を期待したいです。

五十嵐vs八重樫の日本人同士による世界タイトル戦は、アマチュア時代、五十嵐が4戦4勝と、過去の対戦では王者側がリード。八重樫が、2階級下のミニマム級から上がってきたこともあり、五十嵐優位の声が多いですが、こちらも「これが世界戦だ」という試合を見せてほしいところです(試合内容によっては、21-23時の放送に組み込んでほしいですが)。

三浦隆司は、2年前に内山高志戦にTKOで敗れて以来の、2度目の世界挑戦。
相手のディアスは、昨年、粟生隆寛相手に、かなり研究したボクシングをしてきた選手だけに、セコンドの作戦指示が、勝利のカギを握るように思います。

また、来週14日には、インドネシアで、細野悟が自身3度目の世界挑戦。
挑む王者は、50戦無敗のクリス・ジョン。足かけ9年半、17度の防衛を誇る王者ジョンですが、ここ5年KO勝ちは無いところが、数少ないつけ入るチャンスといえるでしょうか。
その2日後の16日(火)には、同じ大橋ジムの井上尚弥が、プロ3戦目にして、フジテレビでのゴールデンタイム生中継が決定。
井上が、いくら日本ボクシング界久々のゴールデンボーイと言える存在だとしても、その露出の差について、先輩としての意地もあるでしょう。


さて、今回も長々と書いてしまいましたが、とにかく2013年のボクシング界に期待したいのは、今年初めにも書いたように、「実力のあるボクサーの、ボクシングファンと一般の人たちの間のギャップをなるたけ縮めていくこと」。

来週月曜の山中戦の中継などは、そのための一つのモデルケースになるかもしれませんが、「いいボクサー」の存在を、より一人でも多くの人に知ってほしいですね。
by momiageyokohama | 2013-04-07 01:41 | ボクシング | Comments(0)

「読んだ方が野球をより好きになる記事」をという思いで、20年目に突入。横浜ファンですが、野球ファンの方ならどなたでも。時折、ボクシング等の記事も書きます。/お笑い・音楽関連の記事はこちら→http://agemomi2.exblog.jp/


by もみあげ魔神
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31